日本各地を襲う地震、台風、集中豪雨といったさまざまな自然災害。2018年7月、中国・山陽地方を襲った集中豪雨による土砂崩れや浸水の被害は、連日マスコミで報道され、記憶に新しい。
こうした自然災害に遭えば、個人の生活が深刻な影響を受けるだけではない。企業の事業継続も難しくなる。自然災害の発生自体は防げない。企業の事業継続を考えた場合、起きた際にどう対応するか、事前の備えがカギになる。
事業継続に欠かせない情報面の対策
災害などの緊急事態に遭遇しても、損害を最小限にとどめる。事業を継続できるように、準備をあらかじめ決めておく。事業継続が困難なら、早期復旧の手段を考える。こうした事業継続計画(BCP)をきちんと策定し、必要に応じて見直しながら災害時に適切に対応する。これが自社の事業を守り、顧客・取引先からの信頼を維持し、企業価値の向上へとつながる。
事業継続計画は、多様な面から考える必要がある。地震や火災に備えて、建物や設備の耐震・耐火性能を高めるだけではだめだ。そこで働く人材を守らなくては、事業は継続できない。原材料や製品の調達対象、輸送方法、ルートも検討しなくてはならない。
近年、重要視されているのが、事業に欠かせないデータの防御と、顧客や取引先との通信手段の確保だ。オフィスのICT機器が破損・故障し、顧客・取引先に関わるデータを消失する事態になれば、業務を元通りにするのは難しい。サプライチェーンに参加している場合、通信手段がなくなれば、他社にも大きな影響を与えてしまう。
事業所内ではなくクラウドに重要データをバックアップ…
災害時にデータ消失を防ぎ、事業を継続するには、日ごろから重要データをバックアップするのがポイントだ。一番に思いつく手段は、パソコンに外付けHDD(外部記憶装置)を接続する、だ。だがHDDは、地震の揺れでラックから落下したときの衝撃や突然の停電などで故障するリスクが残る。
他には社内LANにNASと呼ばれる記憶装置を接続し、データを保存する方法が考えられる。NASは耐障害性を高める設計がなされ、オフィス内の重要データを保存したり、社員同士が情報を保存・共有したりするファイルサーバーとして利用される。
ただHDDもNASも、通常のオフィス内に設置してあれば、そこが災害に遭った場合、データが消失したり、アクセスできなくなったりする可能性はぬぐえない。それを防ぐには、別の場所にデータを保管するのを検討すべきだ。例えば、クラウド上のストレージ利用だ。これらのサービスは、比較的安価に利用できるので検討したい。
重要データを保管するだけなく、通信手段の確保についても事業継続計画には組み込んでおきたい。災害で通信回線が使えなくなれば、事業に重大な支障をきたすからだ。最近は、光回線の契約によってデータ通信ネットワークを構築するのは当たり前だが、モバイル回線を含め、通信経路を二重化し万一に備えたい。
災害にあった事業所では、復旧までの期間、通常の業務は行えなくなる。複数の事業所を持つ企業なら、1つの事業所で業務が行えなくなったケースを想定して、全体の業務への影響を最小限に抑える計画を立てておきたい。もちろん、主要生産拠点が被災したケースでは、それを完全にフォローするのは難しいだろう。しかし、被災拠点の業務を他の拠点で、どう代替できるかを洗い出しておくのは可能だ。
例えば、業務連絡や問い合わせの返答などは代替可能な業務といえる。最近のIP電話は、災害で事業所の通信ができなくなった場合には、そこへの通信をあらかじめ指定しておいた他の拠点に、自動転送するサービスも出てきている。
事業継続計画の立案に際しては、建物、人材、物流といった目に見えるものに注意が集中しがちだ。データや通信にもしっかり目配りをしよう。