企業環境が大きく変化する中、新しい価値創造のカギとしてデータ活用に期待が寄せられている。日々の業務遂行でも、人手不足などを背景に生産性向上や業務効率アップが企業の重要な関心事となりつつあり、その実現のポイントは「いかに効率的にデータを管理・保管・活用するか」にある。こうした課題解決に力を発揮するのが、クラウド上のデータ格納スペース「クラウドストレージ(オンラインストレージ)」の利活用だ。その実態について、日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社保有の調査モニター2986人を対象に調査を実施した。
大企業の約8割がクラウドストレージを導入済み
社内におけるクラウドストレージの導入状況を聞いたところ、55.4%の企業が「導入済み」と回答。導入率を従業員規模別で見ると、99人以下の企業では31.7%。最も導入率が高い1万人以上の企業の82.8%と比べて51.1ポイント差となった。導入率トップの1万人以上の企業では、8割が導入済みとなり、1000~9999人規模の企業でも71.1%となるなど、従業員規模が大きい企業ほど導入率が高い傾向がうかがえる(図1)。
【図1 クラウドストレージ導入状況(従業員数別)】
「OneDrive」「Google Drive」「box」がビジネス利用で高いシェア
導入サービスについて聞いたところ、前回と同様に最も多く選択されたのが、「OneDrive for Business」(38.7%)で、2位が「Google Drive」の21.5%となった。その他、3位に「box」(21.6%)が続く結果となった(図2)。
【図2 クラウドストレージの種類】
社内・社外を問わず「大容量データの共有」に高い需要…
クラウドストレージを使用するうえで「よく使う機能・便利な機能」について聞いたところ、全体の8割近くが「大容量データの社内共有」と回答(79.6%)。同項目が最も多い項目となり、前回比で4.1ポイント増となった。2位には、「ファイルバックアップ・復元機能」が45.5%(全体)、3位には、前回4位の「デバイス連携機能」26.2%(全体)が浮上する形となった(図3)。マルチデバイスの活用の他、社内外のさまざまなデータとの連携などが需要増の背景として考えられる。
【図3 クラウドストレージでよく使う機能等(従業員数別)】※上位5項目
「大容量データの保存・共有」とセキュリティに高いニーズ
クラウドストレージを導入してよかった点について尋ねた。全体として最多は、「大容量データを保存できる」(58.0%)、次いで「大容量データの共有がスムーズに行える」(49.1%)となった。3位には「セキュリティが充実しており安心して利用できる」(31.1%)がランクイン。4位には「ファイルバックアップがあり削除したファイルを復元できる」(27.2%)が続いた(図4)。項目別に見ても、これらの項目は企業規模を問わずに選択され、高いニーズと満足度のキーファクターになっていることが伺える。
【図4 クラウドストレージを導入してよかった点】
注目すべきは「セキュリティ」「データ容量」「検索機能」
最後に、クラウドストレージで必要、または強化してほしい機能についても聞いた。1位は「セキュリティ機能」(35.7%)がランクイン。2位には「データ容量の最大値」(25.2%)、3位には「検索機能」(25.0%)が続く形となった(図5)。エンドポイントを狙った、サイバー攻撃の巧妙化・多様化などを背景にクラウドストレージに対しては、根強いセキュリティ需要が伺える。また、「データドリブン経営」という言葉が注目されるように、企業内で蓄積し続けるデータの活用・利便性を高めるために、クラウドストレージの検索性が求められていることが浮かび上がる。
【図5 クラウドストレージで強化して欲しい機能】※上位5項目
働き方の多様化はもちろん、人手不足などを背景に多くの企業にとって、生産性向上や業務効率アップが大きな課題となっている。そのカギを握るのがデータの効率的な利活用だ。クラウドストレージを有効に活用することで社内外のデータ連携の幅は飛躍的に高まるが、同時に多様化するサイバー攻撃に備えたセキュリティ機能・体制も準備しておきたいところだ。日々の取引の中で蓄積される膨大なデータを柔軟に活用し、自社の競争力を高めるためにもクラウドストレージの“上手な使い方”が今求められている。
<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社モニター2986人を対象に2024年8月に調査