ブラック企業の烙印(らくいん)を押されると、会社の社会的イメージが著しく低下するだけでなく、場合によっては取引停止、会社の業績悪化、果ては倒産という事態になることも考えられます。そこで、今回はブラック企業と認定されないために、経営者が行うべきポイントについて解説します。
実は、厚生労働省は「ブラック企業」について定義をしていません。しかし、一般的には、(A)労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す、(B)会社全体のコンプライアンス意識が低い(例:賃金や残業代の未払い、パワハラの横行)、(C)前述のA、Bにおける環境で、安易に労働者を解雇したり、さらに労働条件を切り下げるなどの極端な選別を行う会社を指すとされています。
ブラック企業と呼ばれる会社には、長時間労働と「サービス残業」の慣例化という分かりやすい特徴があります。
申告された労働時間が法定労働時間内であるか確認するのは当然のことですが、企業側は「申告されていない残業がないか」「あったとしたら何時間になっているのか」「行われた残業に対して適法な残業代を支払っているのか」といったことを確認しましょう。
これらの点について、法令違反が見つかった場合には、その原因を追及しなければなりません。この10月に話題となった広告代理店の過労死自殺の件から見ても分かる通り、長時間労働・サービス残業の横行は、企業の体質に起因するケースが多いようです。企業体質改善を図るためも、対策を取る前に根本の原因追及をする必要があります。
ポイント2:パワハラ体質の改善
長時間労働・サービス残業は企業体質の問題と先に述べましたが、上司が部下に対して暴言や脅すような言葉を吐き、半ば無理やりに長時間労働やサービス残業を強いる「パワハラ体質」が当たり前になっているケースもあります。
パワハラは、管理職の個人的パーソナリティーによって引き起こされることが多い問題です。しかし、その管理職の影響力が強い場合には、他の管理職にもまん延し、いつしか組織全体の体質と化すこともあります。
そうなってしまうとパワハラが当たり前になり、管理職はそれがパワハラだとは気が付きにくくなります。しかも、一般社員は相談する先もなくなり、報復を恐れて告発することもできなくなってしまいます。その結果、延々とパワハラが続き、法令違反も是正されないといった事態に陥ります。
経営者や人事担当者は、このようなパワハラが横行していないかどうかを見抜き、その兆候が確認できた場合には速やかな対応が求められます。社内のルールとして「どこからがパワハラか」を定義し、「パワハラができない職場づくり」をめざしていくことが重要です。
ポイント3:風通しの良い職場づくり
長時間労働やサービス残業、パワハラの犠牲となるのは一般社員です。これらの問題を是正していくためには、一般社員から自分たちが被っている不利益について情報提供をしてもらう必要があります。そのために、一般社員が管理職や上司にものを言える環境をつくらなければなりません。
具体的には、定期的に匿名のアンケートを実施することや、いつでも情報提供が可能な窓口を用意しておくことが必要でしょう。もちろん、誰がどのような情報を提供したか、他の社員らに漏れないように情報管理を徹底することが不可欠です。
日本では、まだまだ、労働環境の改善というと社員を甘やかすものと捉えられることが多く、業績を伸ばすことが優先されがちです。しかし、冒頭にも述べた通り、ブラック企業の烙印を押されてしまうことは、企業の存続自体に危機をもたらす致命的なトラブルです。リーダーが長時間労働やサービス残業、パワハラをなくしていくことは、労働者のためだけではなく、企業利益にとって重要なものであるという意識を持たなければならないでしょう。