春、といえばサクラの季節です。サクラは日本人にとって古くから親しんできた花。平安時代の頃には貴族の間で、サクラの花見が催されていたそうです。もちろん、家の近所のお花見も楽しいものですが、山歩きでもサクラの花を愛でることができます。寒い冬から暖かくなりつつあるタイミングで、お花見登山はいかがでしょうか。
日本人が昔から大事にしていたサクラ
サクラの語源をご存じですか? 大きく分けて2つの説があります。1つは日本神話に登場する神さまの木花開耶姫(このはなさくやひめ)に由来するという説。木花開耶姫は富士山を信仰する、浅間神社の祭神である美しい女神で、その名の開耶(さくや)がサクラになったといわれています。
もう1つは農耕の神「サ神」と「クラ」を合わせた言葉であるという説です。「クラ」は「嵓」「蔵」「座」とも書かれ、神が宿る場所を表す言葉です。春、農作業を開始する頃、まるで神が宿ったように花を咲かせることからついた名前なのかもしれません。いずれにしても神が名前の由来であるようで、日本人が昔から大事にしていた木であることが分かりますね。
さて、サクラといってもいろいろな種類があります。町でよく目にするのはソメイヨシノですが、実は交配により人為的に作り出された園芸品種です。色は薄ピンク、葉が出る前に花が開くのが特徴で、公園や街路樹など生活に身近な所に植えられていて、目を楽しませてくれます。
山で目にするサクラの種は?…
一方、山で多く目にするのはヤマザクラです。日本の野生種で、こちらは花と同時に葉が展開します。葉芽が小さいうちは赤いので、遠くから見るとソメイヨシノより木全体が赤っぽく見えます。関東では高尾山、奥多摩湖など、関西では吉野山はぜひ行ってみたい場所です。
野山で見られるサクラの中でエドヒガンはソメイヨシノより少し早く咲き始めます。こちらも野生種で、サクラの中では寿命が長いことで知られています。樹齢2000年ともいわれる山梨県北杜市の神代桜、樹齢1500年以上の岐阜県本巣市の薄墨桜、兵庫県養父市の樽見の大桜など、長寿のサクラはエドヒガンがほとんどです。兵庫県川西市の黒川にある「桜の森」はエドヒガンザクラが群生しています。木によって咲く時期が違い、濃いピンクから白までさまざまな色のサクラがみごとな景観を織り成します。
少し標高の高い山では、ほかのサクラより少し小ぶりの花をつけるタカネザクラ(ミネザクラ)を見ることができます。花期は遅く、5月初旬〜中旬。アルプス山麓などさらに標高の高い場所では6月に咲くこともあります。
町に植えられたソメイヨシノは一斉に咲いて、あっという間に散ってしまいますが、山では長く、いろいろな種類のサクラが楽しめます。
お花見山行を盛り上げるお菓子
さて、せっかくお花見登山をするなら、気分を盛り上げるためにちょっとしたものを用意するとよいでしょう。
私がよく持って行くのが和菓子(生菓子)です。季節を表すデザインで、見た目も美しいのが和菓子の良さ。普段はなかなか食べる機会がないので、女子はもちろん、甘党の男子にも喜ばれます。和菓子専門店のほか、デパ地下でも買え、最近は形が崩れないように個包装してくれるお店も多いので、山へも持って行きやすくて便利です。
和菓子と相性のいいドリンクは、やっぱりお茶です。煎茶もいいですが、抹茶ならさらに気分が盛り上がります。そこでお薦めなのは、モンベルが作っている野点セット(品番#1124422)。登山用品メーカーの商品だけに茶碗は樹脂製で軽く、割れにくい素材で作られています。茶筅(ちゃせん)、茶杓(ちゃしゃく)も通常の道具より小さめで、収納がしやすいように工夫されているのもポイント。オンラインショップでも購入ができます。
山で仲間とサクラを見ながら野点をするのはこの季節ならではの楽しみです。実際にたてたお茶を口にしてみると、煎茶より味が濃く、香りもいいので、ほっと気持ちが和みます。
山での抹茶、ぜひ試してみてもらいたいですが、そこまで道具を用意できないという人は、桜茶はいかがでしょうか? 桜茶は八重桜の花のお茶。塩と梅酢で漬けた「桜漬け」を軽く塩抜きし、ポットに用意したお湯を注ぐだけです。茶碗やカップの中でサクラが開き、可憐で華やかさもあります。薄い塩味は、甘みをさっぱりさせ、和菓子とも相性抜群です。手間がかからないので、男性でもはまるのではないでしょうか。