感染症予防のためにマスクを着用する機会が増え、マスクによる肌荒れに悩まされていませんか?「マスクの長時間着用で必要以上に顔面が蒸れたり、マスクに触れる肌が擦れたりしやすいですから、顔の肌トラブルが悪化する前に予防と対策をしましょう」。そう語るのは、野村皮膚科医院院長の野村有子先生です。まだまだ必要不可欠なマスクと上手に付き合うために、マスク肌荒れの予防と対策方法を伺いました。
マスク肌荒れの原因
野村先生によると、マスク肌荒れの主な原因は次の2つだそうです。
(1)マスクの繊維による刺激
シリコンマスクを除き、不織布マスクと布マスク、どちらも繊維を使っている製品です。何度も使い込んでケバ立つようになると、肌の刺激を引き起こしがちになります。
(2)ストレス・生活リズムの乱れ
感染症拡大による不安、自粛生活によるストレス、在宅勤務による生活リズムの乱れなども肌トラブルを招きがち。いつもは肌荒れを起こさない人でも、そうした心理的ストレスで肌荒れを起こす可能性があります。
マスク肌荒れの一般的な症状は「肌の赤み」「ヒリヒリ感」「かゆみ」そして「ニキビの悪化」が挙げられると野村先生。マスクの縁が当たる肌の部分が特に赤くなりやすく、ひどくなると、あごや鼻が横線を引いたように赤くなることがあるそうです。また、マスク内が呼気で蒸れ、肌の角質がふやけて毛穴が詰まりやすくなると、ニキビができやすくなると言います。
毛穴が詰まりやすいなど、もともと肌トラブルがある人は特に重症化する可能性があるため、いつもの夏より念入りに、かつ早めのケアが必要とのことです。
マスク肌荒れの予防と対策…
野村先生いわく、マスク肌荒れの予防・対策には次のようにマスク着用時の工夫や日々の保湿ケア、ニキビケアを忘れずに行うことが重要だといいます。
(1)肌への刺激軽減
マスク肌荒れ予防の第一歩は、肌への刺激を少しでも減らすこと。皮膚への刺激を防ぐため、マスクの内側にガーゼを1枚挟むことがオススメです。ガーゼがなければ、ハンカチや着古したTシャツを切ったものなど柔らかく肌なじみがいい綿素材などで構いません。ただし、衣類の染料によっては口周りに適さないものがあるため、手作りマスクなどでも十分注意しましょう。挟み込むガーゼや布は、必要に応じてこまめに取り換えてください。耳にかけるゴムの部分がヒリヒリする人は、柔らかい布を巻いてみましょう。
(2)保湿ケア
乾燥によって皮膚の角質層の柔軟性がなくなるとマスクによる刺激を受けやすくなること、また、皮膚の水分が少なくなるとバリア機能が低下してトラブルが起きやすくなることから、日々のスキンケアでは「保湿」が重要です。保湿ケアは、肌への刺激を軽減する効果も期待できます。出掛ける前の洗顔後に、化粧水などのベタつきにくい製品でたっぷりと保湿をしましょう。カサカサやヒリヒリが気になりだしたら、保湿クリームを多めに使うなどのスキンケアで対策をすることが重要です。
(3)ニキビケア
洗顔しているのにニキビができやすいという人は、顔を強くこすったり頻繁に洗顔したりし過ぎているからかもしれません。日本皮膚科学会の『尋常性痤創(ニキビ)治療ガイドライン2017』では1日2回の洗顔を推奨していて、ニキビができやすい人については、次のような方法で朝晩の洗顔を習慣にすることをアドバイスしています。
(A)毎日の洗顔方法
絹ごし豆腐の表面をなでるくらいの力で細かくスムーズに指を動かし、指先に力を入れ過ぎないようにやさしく洗います。洗顔後は水分不足によって毛穴が詰まりやすくなるのを防ぐため、保湿ケアを欠かさずに。
(B)ニキビができたら
殺菌や炎症を抑える成分を含むニキビ専用の保湿剤や、古い角質や余分な皮脂を除去する働きのある、ニキビ専用のスキンケアアイテムを使いましょう。
外出自粛から新しい生活様式へと感染症対策は刻々と変化していますが、しばらくはマスクの着用を継続する必要がありそうです。とはいえ、気温が高くなるこれからの季節は、熱中症にも気を配らなければいけません。
十分な他人との距離に配慮しつつ、換気のよい場所や風抜けのよい外出先では適宜マスクをはずすなどを自分で判断しましょう。息苦しさを感じる前に、水分補給のタイミングでマスクを外すことも肌のケアにはよいことです。一日中ずっと着けているとマスク内の環境が悪化しやすいので、マスク脱着のタイミングや日常のスキンケアを見直して、顔周りの肌ストレスを予防・改善しましょう。
【取材協力】
野村 有子(のむら ゆうこ)先生
1998年より横浜市に野村皮膚科医院を開業。アトピー性皮膚炎患者専用モデルルームの設置や最新の肌診断機械の導入、アレルギー対応カフェなどが評判になる。わかりやすい丁寧な指導が評判の関東屈指の人気皮膚科医。男女を問わず幅広い年代の皮膚疾患の診断、治療を行っている。