能力がないわけではないのに、自信がない、何から何までお伺いを立ててから行動するのが「何でも相談、不安」タイプです。このタイプの問題は「自分で考えないこと」です。自分で答えを出すことから逃げているともいえるでしょう。自分で答えを出して、その結果を背負うのを怖がっているのです。
このタイプに対して最も避けるべきは「答えを出してあげること」です。しかし、能力の高いプロジェクトリーダーほど、答えを出してしまいがちです。「リーダーが答えを出してくれるなら、多少叱られたとしても答えを出してもらうほうがラクだ」と、このタイプは考えます。リーダーも「あいつは自分で考えない」と言いながら答えを与え、考える機会を奪っていることに気付きません。
何でも相談タイプに足りないものは「コミットメント(責任感を持った約束)」と「自信」です。このタイプには答えを与えないようにします。「どうしたらいいですか」と聞かれれば、「自分はどうしたいのか」「どのような方法が考えられるのか」を問い掛けます。そして、出した答えが大きく外れていないのであれば、やらせてみます。自分で出した答えにコミットさせることが大切です。
致命的な間違いは、そう多くありません。であるならば、自分で答えを出して実行させ、結果を背負ってもらうほうがいいでしょう。結果を踏まえて「より良くするにはどうすればいいだろうか」「こういう手も考えられるね」とアドバイスすればいいのです。
ベテランなのにどこか抜けている。経験も豊富で、ほとんどの場合は問題ないのだけれど、肝心な場面でミスをする――。これが、どこか抜けているベテランタイプです。このタイプは人がよく、マイペースで、ガツガツとしていません。安定していますが、どこか安心して任せられないところがあります。
このタイプの特徴は、仕事の仕方が感覚的かつ習慣的ということです。物事を深く考えず、流れに乗って仕事をします。ほとんどの仕事はそれでいいのですが、トラブル対応やイレギュラー対応では、頼りになりません。それは物事を深く考えてから実行する修練を積んでいないからです。
このタイプは器用な人が多く、大抵のことはそつなくこなします。さらにパフォーマンスを発揮してもらうには、考える習慣を付けてもらう必要があります。
例えば、進捗会議などで「このように進めようと思います」というところに、たとえ問題がなくても「なぜ、そのようにするのですか」「他に方法はないですか」「その根拠は何ですか」と問い掛けます。問い掛けられれば、答えなければなりませんから、考える習慣が付きます。
(7)ヨチヨチひよこタイプ
まだ一人前には遠く、誰かに面倒を見てもらってやっと仕事が成立するのが「ヨチヨチひよこ」タイプです。このタイプは常に状況を把握する必要があります。
このタイプの人は、新人や経験の浅い人ばかりではありません。経験年数からいえば中堅やベテランといえるような人もいます。10 年の経験があっても、1 年の繰り返しを10回やっただけで経験値が上がっていない場合があるからです。つまり、仕事の仕方や考え方を教わっていない人たちといえます。
特徴は、答えが出ないのに1人で悩み続けることです。同じことを繰り返して、時間だけがムダに過ぎていく。気が付いたら「1日同じ仕事をしていて何も進んでいない」ということになっています。
このタイプには、仕事をかみ砕いて、ステップを1つずつ踏ませる必要があります。何を、いつまでに、どう進めるのかを、事細かに説明し、1つの作業が終わったら報告するように指示しなければなりません。
しかし、いつまでも細かく指示するわけにもいきません。指示しながらも仕事の仕方を教えたり、問い掛けたりしながら、プロセスや考え方を身に付けさせる必要があります。
チームに必要な役割
メンバー一人ひとりのタイプを見て、それぞれが最もパフォーマンスを発揮する距離をつかめれば、次に、それぞれにあった役割を与えることを考えます。
ソフトウエア開発マネジメントの辞書ともいえる「ラピッドデベロップメント」(アスキー)の著者で知られるスティーブ・マコネル氏は、同書の中で「効率的開発では技術的なリーダーと同じぐらい、人間関係のリーダーが必要となる」として、メレディス・ベルビン氏が提唱したリーダーの役割について触れています。ただしマコネル氏は、ベルビン氏が付けた役割名ではなく、書籍「Constantineon Peopleware」(Larry L. Constantine/Prentice Hall Ptr)にある役割名を使っています。その役割を以下で紹介します(図1)。
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図1:機能するチームに必要な8つの役割[/caption]
①ドライバー(操縦役)
戦略レベルでチームの方向性を示す人を指します。物事を定義して、チームの議論や活動を推し進める役割を担う人です。ドライバーの役割を果たすには、チームのゴールやビジョンを明確に示し、メンバーを引っ張っていく必要があります。多くの場合、プロジェクトリーダー、チームリーダーがこの役割を担います。
②コーディネーター(調整役)
メンバーの長所と短所、強みと弱みを把握し、リソースを最大限活用して問題解決を推進する人です。コミュニケーションが得意で、全体観を持っています。全体観を持っているが故に、人の感情や少数派の意見を軽視する傾向があるので注意も必要です。
③オリジネーター(創作役)
創造力に富み、アイデアの分野でリーダーシップを発揮する人です。少し変わったところがあるかもしれませんが、それを面白がってあげると力を発揮します。オリジネーターに力を発揮させるには「すごいね」と認めることが重要です。
④モニター(監視役)
創造力豊かなオリジネーターに対し、現実派がモニターです。バランス感覚に優れ、問題や状況を冷静に分析し、淡々と解決していきます。細部にこだわり過ぎるところがあるので、全体観を持つコーディネーターと補い合うと、より高い生産性を発揮できます。
⑤インプリメンター(実施役)
決まったことを、決まった通りに実行する人がインプリメンターです。ドライバーやオリジネーターが示すビジョンやアイデアを、計画やプロセスに落とし込んで、愚直に実行します。インプリメンターは変化を嫌い、柔軟性に欠けるところがあります。だからこそ、地味な作業をもくもくとこなせるのです。
⑥サポーター(補佐役)
チームメンバーの強みを引き出し、足りないところを補ってくれるのがサポーターです。メンバー間のコミュニケーションの架け橋となってチームワークを醸成します。衝突を避ける傾向があり、議論すべきときに「まぁ、まぁ」と曖昧にすることもあります。
⑦インベスティゲーター(調査役)
外部のアイデアや最新情報を調べるスキルにたけ、チームで情報共有するのがインベスティゲーターの役割です。プロジェクトは「やったことがないこと」に取り組むものなので、インベスティゲーターがもたらす情報はチームにとって極めて重要です。注意すべきは、調査のための調査になってしまい、時間を使い過ぎてしまう傾向がある点です。
⑧フィニッシャー(仕上げ役)
多くのメンバーが「できた!」と油断してしまうタイミングでも、仕事がきちんと完了したかどうかを細部まで確認するのがフィニッシャーです。大まかでよいときでも、細部にこだわってしまうので、バランスを取ることが必要です。
リーダーに必要なのは、メンバーの特性を見抜き、特性に合う役割を与えること。そして、足りない役割を自らが補うことです。そのためには、メンバーに興味を持ち、観察するところから始めます。根底には、人を生かすことが役割というリーダー観が必要となります。
まとめ
●タイプが異なるメンバーには、それぞれ適した接し方、扱い方がある。
●タイプを見極め、パフォーマンスを発揮できる距離感を考える。
●タイプに合った役割を与える。