ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2021.05.13
今から35年近く前、「ラブホテル」を脱税の舞台とした伊丹十三脚本・監督、宮本信子主演の「マルサの女」という映画が大ヒットしました。当時は現金決済の時代です。ラブホテルで領収証を受け取る客などいないので、売上金を除外しようと思えば、いとも簡単に除外できました。
また、仮名預金や無記名割引債券といったツールもあり、銀行の支店長を問い詰め、仮名預金の真正な預金者を管理した「手控え」を出させるシーンや、庭木の下や人形の中から印鑑を発見するシーンもありました。
「マルサの女」は、国税庁の全面協力の下で映画化されており、描かれたシーンの大半は実話で構成された、いわばノンフィクション作品でした。
突然ですが、皆さんが事業でお使いの普通預金通帳を見てください。入金額は右側(貸方)、出金額は左側(借方)に記帳されていますね。
例えば、飲食店を営む甲さんが、毎日の売上金から10万円を除外して長男乙名義の普通預金口座に入金していたとします。1カ月が過ぎたところで、残高全部を引き出して乙名義の定期預金に預け替えしました。このとき乙名義の普通預金通帳は、右側に10万円が並んで、残高が300万円になったところで左側に出金額が記帳されます。まさに、マルサ好みの「逆L字型」になるわけです。
もし、皆さんのお手元の通帳が逆L字型で、「現金を抜いて申告してしまった」ということがあれば、すぐに顧問の税理士先生に依頼して修正申告されることをお勧めします。
皆さんが提出(e-Tax送信)した法人税、消費税、所得税、相続税、贈与税などの申告書、財産債務調書、源泉徴収票や支払調書などの法定調書はもちろん、各種新聞・週刊誌・インターネット情報、タレコミ(密告)、調査で収集した預金や株式取引など、ありとあらゆる情報が国税専用のコンピューターシステムに蓄積されています。
さらに3年前からは、私たちが銀行で新たに預金口座を開設する際に、「居住地国を記載した届出書」が必要になりました。これは、共通報告基準(CRS)といって、海外の金融機関を利用した国際的な租税回避を防止するために、経済協力開発機構(OECD)が策定した金融口座情報を自動交換する制度に基づくものです。現在、日本を含む100以上の国・地域がCRSに参加しています。例えば、日本人が韓国の銀行で口座を開設して預け入れを行うと、その口座情報が韓国の税務当局を通じて日本の国税当局に報告されるのです。
国内で収集した情報のみならず、海外の金融口座情報まで、国税は蓄積しているのです。
国税局査察部には、内偵から立件までを担当する情報部門とガサ入れから検察官への告発までを担当する実施部門があります。
情報部門の査察官は、日々、蓄積情報の分析・検討と新たな情報収集に明け暮れています。
簡単な事例で説明しましょう。
例えば、A社(12月決算)の法人税申告書添付の「売掛金内訳書」の中にB社に対する売掛金として6000万円が記載されていたとします。ところが、たまたま12月決算のB社の法人税申告書には、A社に対する買掛金として1000万円しか計上されていませんでした。
\ かんたん入力で登録完了 /
執筆=白田 敦
税理士
国税現職時代は、長年にわたり国税庁及び東京国税局の査察(実施)部門で活躍。国税不服審判所の審判官としても腕を振るう。東京国税局査察部査察審理課長、査察総括第二課長、調査第四部次長などを歴任し、豊島税務署長を最後に2018年定年退職。現在、一般社団法人租税調査研究会主任研究員。
【T】
税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ