税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ(第85回)ここがポイント!財産分割

経営全般 資金・経費

公開日:2023.07.04

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 筆者は国税当局勤務時代、主に資産課税部門で相続税調査に従事しておりました。このほかに、毎年7月に国税庁から公表される「路線価図・倍率表」を作成する部署(評価担当)にも従事した経験があります。こうした相続に関する総合的な経験を生かし、現在は税理士として、納税者の方からの相続税の相談や申告に対応しており、今回は、後に問題となる相続財産の分割、特に不動産の分割についてお話ししたいと思います。

「基礎控除額」と「相続財産の評価額」

 相続税は誰にでも課税されるものではありません。相続税には「基礎控除額」があり、基礎控除の金額以下の相続財産であれば相続税は課税されず、税務署への申告も必要ありません。そこで問題となるのが「相続税の基礎控除額」と「相続財産の評価額」です。

 まず「相続税の基礎控除額」についてですが、基礎控除額は一律の金額(3000万円)に相続人の人数で加算される金額(1人600万円)で計算されます。例えば父親(被相続人)が亡くなり、相続人が母親(配偶者)と子ども2人(長男次男)の場合、相続人数は3人で3000万円+(600万円×3人)=4800万円となります。

 次に「相続財産の評価額」です。この「相続財産の評価額」とは、国税庁が定めた「財産評価基本通達」に財産の種類ごとの具体的な評価方法などに基づいて計算した、評価額の合計額のことです。

 例えば、この一家が居住していた居宅とその敷地の相続税の評価額は、「売ったらいくらになるか」ではなく、建物価額は「固定資産税の評価額」となりますが、土地は「固定資産税の評価額」ではなく、各国税局で公表されている「路線価図」や「評価倍率表」を基に個々の評価額を算出します。税理士として仕事をしていますと、この評価額の計算が一番多い相談項目です。

 相続手続きを進めていき、この基礎控除額と相続財産の合計額が判明した後は、相続税の申告の有無にかかわらず、相続人全員による相続財産の分割を行う必要があります。この分割内容を証明するものとして「遺産分割協議書」を作成し、金融機関で被相続人名義の預貯金の名義変更手続きなどを行ったり、法務局に不動産の相続登記を申請したりできます。

 しかし、最近は“相続”を“争続”と表記して、相続人間の遺産の分割に関わる問題について警告する場合も増えています。古くは、長男が一家のすべての財産を相続する「家督相続」が法律で決められていましたが、現在はご存じのとおり、民法では法定相続分(上記の場合、配偶者:1/2、長男:1/2×1/2=1/4、次男:1/2×1/2=1/4)が規定されています。たとえ長男であっても、相続分は次男と同じく1/4となります。ただし相続人全員の同意があれば、同意した分割方法や割合で自由に相続できます。その同意内容を証するために各相続人の実印を押印した「遺産分割協議書」を作成する必要があるわけで、その「遺産分割協議書」の作り直しなどは、原則認められません。分割協議後の相続人間の財産や持分の変更は贈与税の対象となってしまいますので注意が必要です。

「遺産分割協議書」の作成に注意…

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