「唐薬種」と聞くと、真っ先に思い浮かべるのは漢方薬ですが、当時の中国「清」から輸入していた薬種の中には、「醤(じゃん)」や「胡椒(こしょう)」といった香辛料も含まれていたようです。中華料理と道修町には、少なからぬ縁があるといえそうです。
東西に走る道修町通の沿道の様子は、大阪を南北に貫くメーンストリート・御堂筋を境に表情が大きく変わります。京阪電車の淀屋橋駅、北浜駅がある東側には、いくつかの大手製薬会社が本社を構え、どこか取り澄ました雰囲気が感じられます。一方、西側は至って庶民ムード。「ガスビル」の愛称を持つ大阪ガス本社の裏手から西横堀川を埋め立てて走る阪神高速環状線にかけての道修町4丁目には、食料品店や酒屋、飲食店などが昔ながらの店構えを見せています。
「幸福飯店(ハッピーハンテン) Roast」が看板を掲げるのは西側。道修町通の最西端、大阪弁でいう“ドンツキ”にあります。「ドンツキ」とは「行き止まり」「終点」という意味合いで使います。関西で道案内を受けるとよく聞かれる表現ですから、覚えておくと便利かもしれません。
大阪では珍しい「ロースト中華」
「幸福飯店 Roast」は、大阪市内に数店舗を構える「幸福飯店」「幸福粥店(ハッピーコンジー)」の系列店です。上海の下町屋台料理で人気の「幸福飯店」、中華粥の専門店として有名な「幸福粥店」とは異なり、中華バルの「幸福飯店 Roast」は、香港式ロースト(焼き物中華)に力を入れる新業態になります。
案内に従い、間口からは想像しにくい「ウナギの寝床」式になっているフロアの奥へ。すると、通りのにぎわいがウソのような落ち着いたムードに驚かされます。
オープンしたのは2014年。香港の下町にある店がよく店先にぶら下げて提供しているチキンや豚などのロースト(焼き物)料理を、現地で買い付けた「かも釜」で調理しています。中華バルなので、大小2種類のサイズがある皿のうち、おひとり様向けの小サイズ一皿あたりの値段は400円~600円台が中心です。
「夕方のオープン時には、出来上がったロースト料理をカウンター前につり下げてお披露目します。好みのローストを小サイズの皿で少しずつ味わっていただければ」とスタッフの稲見圭史さん。おすすめは、丸ごとローストした鶏一羽を切り分けて提供する『丸鶏』=500円。『叉焼(チャーシュー)』=550円(ロース、バラ)、『スペアリブ』=400円など。数人で食べるなら『ロースト盛り合わせ』(3種盛り)=1200円もあります。
カウンター席できびきびと立ち働くスタッフの姿を眺めながら、本場・香港よろしく屋台感覚でのサッと飲みも楽しめます。「ひとり飲みなら、スタッフとの会話も楽しめるカウンター席がおすすめです」と稲見さん。おひとり様にはうれしい配慮です。
ランチタイムには、夜とはまた異なる「大阪らしさ」を見せます。近隣オフィスに勤める男女のビジネスパーソンが先を競うように押し寄せ、ひとしきりにぎわいます。
人気のランチメニューは、香港式ロースト飯や系列店の中華粥などをメーンにした『ランチセット』=850円~です。前菜や点心、またはスープ、プチデザートが付きます。
「暑さが盛りを迎えるこれからの季節には『豚しゃぶサラダ冷麺』(850円)もぜひ」と稲見さん。夜と昼で2つの顔を持つ「大阪・道修町の香港」は、今日も活気にあふれています。
幸福飯店 Roast(ハッピーハンテン ロースト)
https://goo.gl/PKEboi
大阪市中央区道修町4-7-11 D-HB 1階
地下鉄御堂筋線「淀屋橋」13番出口または四つ橋線「肥後橋」6番出口から徒歩5分
06-6208-3399