売り上げの拡大を図りたい企業にとって販路開拓は大きな課題だ。いくら長年安定した取引先を抱えていたとしても、そこに安住していればいずれ衰退の一途をたどる。いまや新規の顧客開拓は必須だ。人材不足に悩む規模の小さい企業の場合、経営者が自らそれに取り組まざるを得ないケースも多い。
従来、販路開拓といえば直接訪問はもちろん、電話やメールなど、あらゆる方法を使って新規顧客へ積極的にアプローチして糸口をつかむスタイルが基本だった。そのため、営業に熱心な中小企業経営者は、朝出社してミーティングをしたら、そのまま夕方まで外回り……などということも多い。そうした販路開拓に限界を感じている企業が、関心を示すべきなのがホームページ(Webサイト)の活用だ。
信金中央金庫 地域・中小企業研究所が2016年6月に実施した調査では、対象とした約1万5000社の中小企業のうち、「自社でホームページを開設している」と答えた企業は49.2%で、およそ半数の企業がホームページを保有するとの結果がある。
ホームページは販路拡大に有効
2015年の中小企業白書に掲載された調査データによると、中小企業がホームページを開設する最大の目的は「広報(自社紹介)による信用力の向上」(43.2%)だった。「販売促進」(17.0%)や「新規受注先の拡大」(14.0%)を大きく上回る。
また、中小企業庁の委託調査「ITの活用に関するアンケート調査」の結果では、自社ホームページを開設している小規模事業者は、販売先数が「大幅に増加した」と「やや増加した」を合わせると37.8%にもなるのに対して、開設していない小規模事業者は、8.5%にとどまっている。これはホームページ開設が販路拡大における有効なツールとなっていることを物語る。
今はホームページで“信用度チェック”をされる…
実は、多くの会社が目的とする“ホームページによる広報”も、販路開拓に貢献するという指摘がある。訪問や電話などで新規の商談があった際には、その企業の情報をチェックするのは当たり前の話だ。従来は電話帳で調べたり、ある程度の手間やコストをかけて信用調査会社などに依頼したりする必要があった。
それが昨今では、まずインターネットで検索し、その会社のホームページをチェックするようになった。業歴、既存の取引先、取引金融機関などを調べる“一次審査”が実施されるわけだ。それが通らなければ、その後の接触は断られる。ホームページがあれば取引ができるとは限らないが、なければ話すら聞いてもらえなくなってしまう。こうした意味で、販路開拓に自社ホームページはもはや不可欠といえる。
半面、いまだ開設に踏み切れない企業も相当数存在する。また、開設しても、有効だと考える企業は半数程度にとどまる。
その大きな理由として挙げられるのが、ホームページを運用する人材の不足だ。経営者が自ら営業に飛び回っているような会社では、ホームページを適切に運用する人材が見当たらない。作成はしたもののほとんど更新がなく、古い情報が表示され続ける。ホームページを訪問する側から見ると、「この会社は大丈夫なのだろうか?」といった疑念を与える可能性もある。
社内に人材がいなければ、ホームページの運用を外部の業者に委託するといったことを考える必要がある。その場合、ある程度のコストが発生するが、それは販路開拓の経費として考えるべきだ。せっかく手間をかけてホームページを立ち上げるのだから、経営のプラスになるものにしなくてはならない。
最近は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の発展によって、ホームページ活用の可能性は大きく広がった。Facebook、Twitterなどとの連携で、双方向のコミュニケーションが容易になり、顧客との接点として有効性が増している。
もちろん自社ホームページを開設するだけで、信用が増し、顧客との接点が増えて、新しい販路が開拓できるといった甘い話ではない。ただきちんと取り組めば、そうした効果が見込める有望な手段なのは間違いない。最近は、ホームページの制作や運営に関して多様なサービスが提供され、自社がかけられるコストや手間に応じて選べるようになっている。まだ自社ホームページを持っていない企業は、一刻も早く取り組むべきだ。すでに開設していながら“休眠状態”で、有効に活用できてない企業も、目的をはっきりさせてぜひ再生に取り組もう。