売り上げアップのためには、マーケティングに力を入れなくてはならない。マーケティングというと、途端に専門的に聞こえるかもしれないが、いわば自社商品・サービスの「売れる仕組み」をつくることだ。具体的には、顧客ニーズをくみ取り、自社商品・サービスをアピールして購入を促す。これら一連のプロセスである。
これまで、自社商品・サービスを広告・宣伝する際、テレビなどのマスメディアはコストの問題などで大企業でなくては使えなかった。中小企業はチラシやダイレクトメール(DM)といった小規模な手段に頼っていた。
それでも、このような紙を使った広告・宣伝は、配布のたびにかなりのコストがかかる。配布直後は効果が見込めても、効果がそれほど長続きしない。配布地域や配布対象も限られる。DMはともかく、チラシはターゲットを絞って配布しにくく、非効率でもあった。
こうした中小企業の広告・宣伝のやり方を大きく変えているのが、ICTを利用するデジタルマーケティングだ。インターネットやソーシャルメディア(以下SNS。Facebook、Twitter、インスタグラム、LINEなど)といった身近なデジタル媒体を通して、商品・サービスの「売れる仕組みづくり」を手軽に行える環境が整ってきた。
総務省が2018年7月に発表した、「平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、10~20歳代では、インターネットの利用時間が平日、休日共にテレビ視聴時間を上回る。30代でも並びつつある。1日のうちネットを利用する時間は全年代で一貫して増え続け、平日の平均利用時間は100分を突破した。20歳代に至っては、1日に161.4分も利用し、そのうちSNSの読み書きに61.4分も費やす。
チラシやDMに変えてSNSで情報を発信…
こうしたデータで明らかなように、インターネットやSNSは、テレビなどのマスメディアに頼れない中小企業のマーケティングの舞台として大きな可能性を持っている。現在、多くの消費者がパソコンに加えて、手元のスマホを使って常に情報を収集、発信するのがライフスタイルの一部になっているからだ。
中小企業のマーケティングとして、まず手軽に始められるのはSNSの活用だ。消費者がスマホアプリのインスタグラムを使い、お気に入りの店や商品の写真を撮影し、ネット上にアップする「インスタ映え」は流行語にもなった。その商品を見た人が、店を訪れて商品を購入する。SNSによる情報発信は、売り上げへの影響が大きい。
企業自身もSNSで情報を発信する。ただ、会社の宣伝では読んでもらえないので工夫する必要がある。例えば住宅会社の場合、単に住宅の紹介ではなく、住宅の手入れや掃除などの周辺情報を載せ、一般の人が読んで得した気分になるようなコンテンツ(内容)にする。読者(消費者)に気に入ってもらえれば、その情報を他の人に勧めてもらうことも期待できる。
SNSをマーケティング活動に利用するメリットは、チラシやDMと違ってそれほどコストがかからないところだ。商品・サービスの「お買い得情報」などをスマホとSNSでタイムリーに発信し、消費者の反響を見てみる。あまり反響がなければ、コンテンツを変えるといった対応も容易だ。
ホームページを閲覧してもらう工夫
SNSで頻繁に情報を発信して顧客との接点を増やせば、“ロイヤルカスタマー”化が進む。次はSNSで商品・サービスに関心を持った消費者を、自社のホームページに誘導し、より詳しい情報を提供して購買につなげていけばいい。最近は、簡単にホームページを作成できるツールやサービスもたくさんある。それらを利用すれば、それほど手間や費用をかけなくてもホームページが開設できる。
ただ、ホームページの開設に当たっては、「読んでもらうための工夫」が欠かせない。現状、ホームページを開設しているものの、効果的な情報を掲載できていない中小企業は少なくない。それらは、単に商品・サービス情報や企業情報が並んでいるだけだったり、コンテンツが更新されずに古い情報のままだったりする。これでは読んではもらえず、購買につながらない。
商品やサービスの単なる紹介だけでなく、その背後にある開発過程の苦労話や、込められたこだわり、他社製品との違いなどを紹介する。ホームページを閲覧しに来た消費者を飽きさせず、なおかつ更新頻度をできるだけ高めて、頻繁にアクセスしてもらえるようにするのがポイントだ。
このようなコンテンツの充実以前の問題として、操作性や閲覧性に配慮したホームページ作りは必須だろう。近年は消費者がホームページを閲覧する際、パソコンよりもスマホの利用が増えている。総務省の「情報通信白書」(平成29年版)によれば、インターネットに接続する端末はパソコンが59%、スマホが58%(インターネット利用者に限ったスマホ利用割合を算出すると71%)だ。特に、若い世代向けの商品・サービスをアピールするなら、スマホで閲覧しやすいようにするべきだ。
こうしたホームページを作れれば、次は電子商取引(EC)に乗り出すことも視野に入ってくる。そうすれば“海外進出”も絵空事ではなくなる。SNSやホームページをうまく使えば、お金をかけてマスメディアに頼らなくても、効果的なマーケティングが可能な時代になったのだ。うちは小さな店舗だからと、あきらめてはいけない。知恵を絞り、工夫を重ねて、新しいメディア活用に挑戦しよう。