厚生労働省発表の「平成26年度都道府県労働局雇用均等室での法施行状況」によると、2014年度の「配置・昇進・降格・教育訓練など」に関する相談は、全体の2.3%でした。12年度は2.3%、13年度は2.6%でしたので、毎年一定の数の相談が労働局雇用均等室に寄せられていることが分かります。
また、14年度の「間接差別」に関する相談は、全体の1.9%でした。12年度は0.2%、13年度は1.5%でしたので、毎年微増していることがうかがえます。
「配置・昇進・降格・教育訓練など」に関するトラブルと「間接差別」に関するトラブルについて見ていきましょう。
事例1 【3交代制の職場で、女性は希望する者のみとした】
A社には3交代制の深夜業務があり、男性社員は全員がその3交代制の対象となっています。一方、女性社員については、希望する者だけを対象としているのですが、一部の女性社員から、この制度は男女雇用機会均等法に違反するのではないかとクレームを受けました。
男女雇用機会均等法第6条は、「配置・昇進・降格・教育訓練など」について、男女間で差別をすることを禁止しています(図表1、図表2参照)。
この事例のように「一定の職務への配置に当たっての条件を男女で異なるものとすること」は男女雇用機会均等法第6条に違反することとなります。
ただし、個々の労働者の健康や家庭責任の状況を理由として、他の労働者と異なる取り扱いをすることは男女雇用機会均等法に違反するものではありません。しかし、この場合においても、一方の性の労働者に対してのみ個々の労働者の状況などを勘案することは違反となります。
配置に関する違反事例…
この他、労働者の配置に関して均等法違反となる事例については、図表3のようなものが挙げられます。
事例2 【女性が昇格するためには上司の推薦を必要とする】
B社では、女性社員が昇進する場合には上司の推薦を必要とします。一方、男性社員が昇進する際には、推薦は必要としません。一部女性社員の間から、これは男女差別ではないのかと不満の声が上がっています。
このように、一定の役職に昇進するための試験について、女性労働者についてのみ上司の推薦を受けることを受験の条件とすることは、男女雇用機会均等法に違反します。男性も女性も、昇進に関する条件は平等なものにしなければなりません。
この他、昇進に関して均等法違反となるのは、図表4のようなものが挙げられます。
事例3 【女性社員を優先的に降格させた】
C社は経営上の都合から、課長補佐という役職を廃止することにしました。これに関して、家庭があり世帯主が多い男性管理職については課長に昇格、家庭がなく世帯主でない女性管理職については係長に降格させることにしました。結果、降格させられた女性社員たちは不満を爆発させ、労働相談センターに相談に向かいました。
降格というと、これを受ける者にとってみれば、それだけでも不快なものです。特に、このように、何の根拠もないのに、女性を優先的に降格させるのですからトラブルになることは必至です。
本来、降格のような社員の処遇を悪くする措置を行う場合は、念には念を入れる必要があります。もちろん、女性を優先的に降格することは、男女雇用均等法違反となります(図表5参照)。
事例4 【海外研修の対象を男性正社員のみとした】
D社は語学研修のため、10人の社員をアメリカ研修に行かせることにしました。これに当たり、希望者の募集を行ったのですが、せっかく海外にまで行かせたのにすぐに会社を辞められたらたまらないと、対象者を「男性のみ」としました。
会社が行う教育訓練についても、男性社員、女性社員に均等な機会を与えなければなりません。この場合も、当然、男女平等に海外研修の機会を与えなければならず、男性のみを海外研修の対象として募集することは、男女雇用機会均等法違反となります(図表6参照)。
事例5 【社員を募集する際に「身長170㎝以上の者」とした】
E社は、営業の中途社員を募集するに当たり、「身長170㎝以上の者」を条件に入れ、求人雑誌に掲載しました。ところが、これを見た女性から「これは男女雇用機会均等法に違反しているのではないのか」というクレームを受けました。
男女雇用機会均等法第7条は「性別以外の事由を要件とする措置」として、間接差別を禁止しています(図表7参照)。
社員を募集するに当たり、「身長170㎝以上の者」とすることは、直接的に女性を排除する措置ではありません。しかし「身長170㎝以上の者」として社員を募集すると、その対象となるのは、女性よりも男性が多くなることは明白です。
均等法は、このような男女間の間接的な差別を禁じています。間接差別の対象となるのは、具体的には図表8に関する事項であり、これら事項については、合理的な理由がない場合は、男女雇用機会均等法違反となります。