事業再構築補助金とは、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の社会情勢や経済状況の変化に対応するために、中小企業や個人事業主などの事業再構築を補助する制度です。
対象となる事業者にはさまざまな条件があり、補助金を受給するためには事業計画書を作成して補助の必要性を示す必要があります。この記事では、事業再構築補助金の申請方法や事業計画書の作り方、公募スケジュールなどについて解説します。
※本記事では第7回公募の内容を元に作成しています
目次
・事業再構築補助金とは
・事業再構築補助金の申請方法
・事業再構築補助金の必要書類 ~「事業計画書」の作り方~
・事業再構築補助金の補助額と補助率
・今後の事業再構築補助金の公募スケジュール
・事業再構築補助金以外に申請できる補助金
・まとめ
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の流行を受け、2021年からスタートした補助金制度です。コロナ禍が長期化し、需要や売り上げの回復が難しい中小企業が、社会の変化に対応するために、新分野の展開や業態・業種転換、事業再編など、思い切った事業再構築に挑戦することを支援する制度となります。
事業再構築補助金の対象
日本国内に本社を有する中小企業、中堅企業、個人事業主、企業組合などが対象です。
事業再構築の対象となる取り組み
本事業で支援の対象となる「事業再構築」とは、下記の5つです。どれも従来事業を継続するのではなく、市場・事業・業種などを大きく変更することを前提としています。
(1) 新分野展開
主たる業種や事業を変更することなく、新たな製品の製造、商品・サービスを提供することで新たな市場に進出する。
(2) 事業転換
新たな製品の製造、商品・サービスを提供することで、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更する。
(3) 業種転換
新たな製品の製造、商品・サービスを提供することで、主たる業種を変更する。
(4) 業態転換
製品の製造方法、商品・サービスの提供方法を大きく変更する。
(5) 事業再編
会社法上の組織再編行為などを行い、新たな事業形態のもとに新分野展開や事業転換、業種転換、業態転換などを行う。
申請要件
事業再構築補助金の主要申請要件は、次の3つです。
(1) 売り上げが減っている
2020年4月以降の連続する6カ月間のうち、任意の3カ月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3カ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。
(2) 事業再構築に取り組む
新分野展開や業態転換など、前述の「事業再構築の対象」に取り組まなければなりません。
(3) 認定経営革新等支援期間と事業計画を策定する
事業再構築の事業計画を、後述する「認定経営革新等支援企画」と策定する必要があります。補助金額3000万円を超える場合は、金融機関も策定に参加する必要があります。
枠ごとの補助額
事業再構築補助金の補助金の額は、5つの枠によって異なります。それぞれの概要は以下の通りです。
(1) 通常枠
新分野展開や業態転換、事業・業種転換、事業再編などの取り組みを通じて事業の再構築をめざす企業が対象で、前述の3要件を満たす必要があります。従業員規模に応じて2000万円、4000万円、6000万円、8000万円の補助上限枠が設定されています。
(2) 大規模賃金引上枠
継続的な賃金引き上げに取り組むとともに、従業員を増やして生産性を向上させる企業を対象とした枠で、補助金の上限は1億円です。
(3) 回復・再生応援枠
業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者を対象とした枠です。この枠では、事業再構築指針の要件における「主要な設備の変更」を求めません。補助金の上限は従業員規模に応じて500万円、1000万円、1500万円です。
(4) 最低賃金枠
最低賃金引き上げの影響を受けて、その原資の確保が困難な企業を対象とした枠です。「最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること」などの要件が加わります。補助金の上限は従業員規模に応じて500万円、1000万円、1500万円です。
(5) グリーン成長枠
グリーン分野での事業再構築を通じて成長をめざす企業を対象とした枠です。補助上限は1.5億円です。この枠では「売上高10%以上減少」の要件を満たす必要はありません。
(6) 緊急対策枠
コロナ猧における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」に基づき、原油価格・物価高騰の影響を受けている企業が対象です。補助金の上限は従業員規模に応じて1000万円、2000万円、3000万円、4000万円です。
回復・再生応援枠は「売上高30%以上減少」が要件に含まれたり、最低賃金枠は加点措置が行われて採択率が優遇されたりするなど、それぞれの枠によって要件が細かく異なります。申請を検討する場合は、自社がどの枠に当てはまるのか確認しておきましょう。
事業再構築補助金の申請方法…
事業再構築補助金の申請は所定の手続きに従って進める必要があるため、申請の流れや申請方法を把握しておくことが大切です。
申請の流れ
ここでは、申請準備から申請、補助金の請求までの一連の流れを解説します。事業再構築補助金の申請はすべて電子申請となります。
(1) 申請準備
補助金の審査に必要な事業計画書を、「認定経営革新等支援機関」と共に作成します。認定経営革新等支援機関とは、中小企業を支援できる機関として経済産業大臣が認定した機関で、現在全国で約38,000の税理士や中小企業診断士、公認会計士、行政書士、弁護士などの事務所や経営コンサルティング会社が認定されています。補助金の申請にあたっては、認定経営革新等支援機関と事業計画を作成することが必須条件となっています。認定経営革新等支援機関についての情報は、中小企業庁のWebサイトから検索できます。
(2) GビズID取得
申請にはGビズIDプライムアカウントが必要です。GビズIDは、法人・個人事業主向け共通認証システムです。IDを取得すると、1つのID・パスワードでさまざまな行政サービスにログインできます。こちらからアカウント作成が行えます。
(3) 専用サイトから申請
GビズIDプライムアカウントで電子申請システムにログインし、必要事項を記入、必要書類を添付して申請を行います。
(4) 交付申請
審査結果はメールで送信されます。審査を通過して採択が決定し、補助金が交付されることになったら、事業者向けサイト「jGrants」にログインし、交付申請を行います。
(5) 補助事業期間
採択決定日から14カ月以内、交付決定日から12カ月以内に補助事業を実施します。
(6) 補助金の請求
補助事業の実績報告を行い、確定検査を受けます。補助額が確定したら、精算払請求を行います。なお、事業計画は補助事業期間終了後も5年間、年次報告が必要になります。
事業再構築補助金の必要書類 ~「事業計画書」の作り方~
事業再構築補助金の申請時に必要となる書類は対象となる枠で異なりますが、主に下記のような書類が必要になります。
(1) 事業計画書
(2) 認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書
(3) コロナ以前に比べて売上高や付加価値額が減少したことを示す書類
(4) 決算書など
(5) 補助金申請支援サイト「ミラサポplus」の電子申請サポートにより作成した事業財務情報
(6) 労働者名簿
(7) 審査における加点を希望する場合に必要な追加書類
これらの書類の中で、事業再構築補助金の採択可否を大きく左右するのが「事業計画書」です。事業計画書に規定フォーマットはありませんが、サイズやファイル形式、ページ数の上限など様式は決まっています。
内容に関しては、具体的な事業概要や事業再構築の必要性を伝えることが大切です。意義を感じさせるだけでなく、客観的な根拠のある数値やデータを記載することも重要です。いくらビジョンや思いが強くても、実現の可能性が感じられない事業計画書では審査を通過することは難しくなります。専門用語を多用すると事業内容が分かりにくくなるので、できるだけ分かりやすい表現にすることを心がけましょう。
事業計画書に記載する内容の項目例はこちらです。
(1) 経営者のプロフィール
(2) 事業概要
(3) 事業のビジョン・理念
(4) 市場および競合の状況
(5) 事業の見通し・戦略
(6) 商品・サービスの強み
(7) 収支計画
(8) 体制および人件費
(9) 資金計画
事業再構築補助金の補助額と補助率
事業再構築補助金で補助対象となる経費には決まりがあり、本事業の対象として明確に区分できるものである必要があります。
対象経費の区分は以下の通りです。
(1) 建物費
(2) 機械装置・システム構築費
(3) 技術導入費
(4) 専門家経費
(5) 運搬費
(6) クラウドサービス利用費
(7) 外注費
(8) 知的財産権など関連経費
(9) 広告宣伝・販売促進費
(10) 研修費
人件費や家賃、光熱水費、通信費、不動産購入費などは補助対象になりません。
今後の事業再構築補助金の公募スケジュール
事業再構築補助金は2022年9月現在7回公募が行われています(7回目の応募締切は2022年9月30日)。事業再構築補助金は今後2回実施されることが決まっています。最新情報は専用サイトをご確認ください。
事業再構築補助金以外に申請できる補助金
事業再構築補助金のほかも、主に中小企業を対象に国や地方自治体が実施している補助金があります。ここでは代表的な補助金をいくつか紹介します。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金とは、革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資などを支援する補助金です。
IT導入補助金
IT導入補助金は、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を支援し、業務効率化・売り上げアップをサポートする補助金です。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が働き方改革や賃上げ、インボイス制度の導入などの制度変更に対応するために、販路拡大や生産性向上に取り組む際の経費の一部を補助する給付金です。地域の雇用や産業を支える小規模事業者の生産性向上と持続的発展を図ることを目的としています。
詳しくは「補助金と助成金は何が違う?中小企業が申請しやすい補助金も紹介」もご参照ください。
まとめ
世の中が大きく変化するウィズコロナ・アフターコロナ時代に向けて、新しい事業にチャレンジしたいと考えている企業にとって事業再構築補助金はとても強力な支援制度です。
ただし、提出期限を1日でも遅れてしまったり、申請手続きに不備があったりすると採択を受けられません。また、予算総額に限りがある場合は、申請の受付が早期に終了となる可能性もあります。事業再構築補助金の申請を検討している方は、早めに手続きを行うことをおすすめします。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです