オフィスのペーパーレス化やテレワークなどによって、以前より複合機の紙の消費が減ったという企業もあるだろう。コピー、プリンター、スキャナー、FAXの機能を1台に統合する複合機の存在は大きく、業務に不可欠と言える。例えば、電子帳簿保存法では紙で受領・作成した書類を画像データで保存するスキャナー保存の要件が緩和された。一方、印刷などのコスト削減は企業の命題でもあり、紙の印刷に代わる情報共有のあり方を含め、複合機の賢い利用法を考えたい。
複合機の印刷枚数で課金するカウンター保守契約
まずは複合機を導入する際のコストをおさらいしてみよう。購入またはリースとなるが、オフィスで一般的なA3版対応カラー複合機の場合、印刷スピードや給紙方法などによって金額は異なるが、購入するとおおむね100~200万円、リースであれば月額数万円程度になる。
また、複合機本体の費用の他に保守契約が必要になる。メーカーによって名称は異なるが、保守契約は複合機を良好な状態に保つために必要な保守サービスの費用で、一定期間内に印刷された枚数によって算出する。印刷枚数のカウンター数に応じて従量課金することから、カウンター保守契約と呼ぶ事業者もある。カウント数は用紙サイズに関係なく、A3でもB5、はがきサイズでも1枚にカウントされる。保守サービス契約では、定期的なメンテナンス、故障時の修理といった保守サービスの技術料の他、感光体、消耗部品代などが含まれる。万一、感光体などの部品を交換するとなると高額な料金が発生することもあるが、保守サービスを契約していれば交換費用は不要で、経費の管理にも効果がある。
複合機にかかわる大きなランニングコストといえば紙の印刷代だ。一般的なカウンター料金は、モノクロ印刷で1枚当たり約2~3円、2色カラー印刷で約5~10円、フルカラーで約15~30円となっている。この他、トナー代や用紙代がかかる。用紙を節約できる両面印刷や割り付け印刷を活用するなど、コストを意識した使い方がポイントになる。
カラー印刷を減らして印刷コストを削減…
複合機の印刷コスト削減方法の第1はカラー印刷をできるだけ減らすことだ。例えば20ページの資料を30部印刷する場合、フルカラー印刷で1枚20円だとすると、単純計算で1万2000円かかる。モノクロ印刷であれば1枚2円だとすると1200円。1/10のコストで作成できる(カウンター料金のみの計算、紙代、トナー代は別途必要)。顧客・取引先に提出する資料はフルカラー印刷でも、社内はモノクロ印刷にするなど、印刷コストを抑えるにはメリハリを付ける必要がある。
コスト削減方法の第2は両面印刷や集約機能の活用だ。両面印刷は1枚の用紙の裏表に印刷する。用紙の節約にはなるが、カウンター料金は表裏の2枚分でカウントされるので注意が必要だ。また、集約機能は複数枚の資料を1枚の用紙にまとめ、1/2、1/4サイズなどに縮小して印刷する。印刷は1枚なのでカウンター料金を抑えられる。免許証などカードサイズの両面をコピー印刷する場合、表裏で2枚となり、印刷代も紙代もムダが生じる。そこで、カードの表裏をそれぞれスキャンしてから1枚の用紙に収めて印刷することにより、印刷コストを抑えられる。
コスト削減方法の第3は印刷ミスを防ぐことだ。印刷を開始してから資料の誤記に気付き、自席から複合機の設置場所まで走ったが、かなりの枚数が印刷された後だったという苦い経験を持つ人もいるのではないか。複合機まで走らずとも、印刷操作を行った自席のパソコンから印刷ジョブを取り消すことで印刷をストップできる。また、集約印刷の向きが違うといったミスを防ぐにはパソコンのプリント操作画面でプレビューを確認してから印刷することで、うっかりミスの防止にもなる。この他、複合機のトナーが少なくなって印刷がかすれ、使い物にならなかったり、給紙の紙詰まりで印刷ミスが出たりする可能性もある。ムダなコストをなくすためにも日頃からのメンテナンスが重要になる。
ペーパーレス化に役立つクラウドストレージの活用
印刷コスト削減方法の第4はペーパーレス化の推進だ。かつては紙の資料がないと会議に集中できないという人もいたようだが、今はノートパソコンを持って会議室に集まり、無線LANを介してファイルサーバーにアクセスしながら会議を行うといった光景も珍しくない。また、オンライン会議のように資料を画面で共有しながらミーティングを行うことも一般的になってきた。
ペーパーレス化を進めることで、紙の印刷コストを削減するだけでなく、事前に会議資料を作成する手間と時間の削減や、情報検索が容易に行えるなど、業務効率化にも役立つ。また、ペーパーレス化はセキュリティにも効果がある。経営会議資料など社外秘の資料を会議終了後に置き忘れたり、紛失したりするリスクを回避できる。
印刷コスト削減方法の第5となるのがクラウドストレージの活用だ。資料などの保管場所を社内のファイルサーバーからクラウドストレージに代えることで、ペーパーレス化の促進とセキュリティの強化が可能だ。クラウドストレージはインターネット環境があれば、どこからでもアクセスできる。会議資料などは社内共有のフォルダ―、自身の業務文書などは個人フォルダ―に保管する。外部の取引先や協力会社などに向けた資料は社外共有のプロジェクトフォルダに保管することで、わざわざ資料を印刷して提供する必要もない。また、プロジェクトフォルダにアクセス権を設定し、閲覧のみ、ダウンロード、アップロードの可否や有効期限を設定するなど、セキュリティの確保も可能だ。
ペーパーレス化で複合機の印刷コストを抑えつつ、クラウドストレージを活用することで本社・拠点・外出先・在宅勤務など、どこからでも安全に情報へアクセスできる環境を整備したい。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです