MIT×デロイトに学ぶ DX経営戦略(第2回)DXで肝心なのは人間だ

業務課題 経営全般 デジタル化

公開日:2021.08.10

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 企業がデジタルディスラプションに直面しても迅速に行動しない理由は、企業幹部の大半は、組織が直面する重大な課題を正しく理解していないからだ。デジタルディスラプションに取り組むとき、テクノロジーのイノベーションの急速なスピードを、組織が直面する主な問題だと見なす人が多い。確かに、次第に速まるテクノロジーのイノベーションのスピードは、企業が直面する課題の重要な部分ではあるが、そこに問題があるのではないし、それ自体が問題ではない。

 企業が直面しているデジタルディスラプションの真の課題は、人なのである――具体的に言えば、人、組織、政策がテクノロジーの進歩に対応するときの、それぞれ異なるペースのことだ(図2-1)。テクノロジーは、個人がそれを取り入れるよりも速く変化する((1)導入のギャップ)。個人は、企業がその変化に適応するよりも速く変化に適応する((2)適応のギャップ)。さらに組織は、法制度・社会制度が調整するよりも速く調整する((3)同化のギャップ)。こうしたギャップは、それぞれ異なる課題を企業にもたらす。

 ここで重要になるのは、テクノロジーと比べて、また個人がテクノロジーを取り入れて利用する場合と比べて、組織は変化に適応する速度が遅いので、異なるペースで変化が起きるという点だ。よって、テクノロジーの利用がもたらすギャップは、広がる一方である。

(1)導入(Adoption)のギャップ

 「導入」とは、テクノロジーの変化の速度と、個人がその変化を日常生活の一部に取り込む速度とのギャップを表している。大きな影響を与えたエベレット・ロジャーズの著書『イノベーションの普及』(翔泳社)では、イノベーションの導入者を異なる速度と段階に基づき、イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードに分類した。その結果現れたのが、アーリーマジョリティとレイトマジョリティが導入するようになったときにイノベーションが急速に起きることを示す、導入の累積関数である。

 異なる程度で起きるとはいえ、後れを取った個人がかなりの部分を占めるので、導入は、多くのマネジャーが直面するデジタルディスラプションの最大の問題ではない。一般的に個人は、組織が適応するよりも速いスピードでテクノロジーを取り入れる。現在、個人は消費者対応のしっかりしたテクノロジー製品を簡単に入手できるので(かつて高価だったこうしたデバイスとサービスを、個人はその雇用主に頼っていた頃と比べて)、新しいテクノロジーにすぐに精通する。

 このような状況になったのは比較的最近のことである。10年から15年前には、企業は個人よりも速くテクノロジーに順応した。その理由は単に経済性の問題だった。今世紀に入る前は、ほとんどの人は職場でしかテクノロジーを利用できなかったし、いわゆる企業が利用するレベルのテクノロジーは、消費者向けテクノロジーよりもはるかに先進的だった。情報技術のコストが下がるにつれて、消費者向けの強力なオンラインプラットホームが広範に利用できるようになり、強力なモバイル機器が普及するようになった。

 グーグルやフェイスブック、アマゾンのような消費者向けプラットホームの急速な台頭は、個人がいかにすばやく変化に適応したかということの証拠である。プラットホームとデバイスが、向上するユーザーインタラクションからデータをどんどん収集するにしたがい、導入曲線がスピードを増すように進化している。組織しか利用できない高価なテクノロジーを用いる企業にとって、導入は今後も依然として問題になるだろう。だが、ほとんどのテクノロジーにとって問題は別のところにある。多くの組織は導入をさらに促す必要はなく、個人がこうしたツールですでに築いた利便性に適応する必要がある。

(2)同化(Assimilation)のギャップ…

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訳者=庭田 よう子

翻訳家。慶應義塾大学文学部卒業。おもな訳書に『目に見えない傷』(みすず書房)、『ウェルス・マネジャー 富裕層の金庫番』(みすず書房)など。

【T】

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