新年度のスタートから、早くも2カ月がたちました。4月から新しい環境になった方も、そろそろ慣れてくるころでしょうか。「人生を輝かせる山登りのススメ」の連載もおかげさまで第11回を迎えることができました。引き続き、私が登った山の話題も合わせて、さらに山に関する情報をお届けしたいと思います。
日本アルプスだけでなく、全国に50もご当地アルプスがある
今回のテーマは「ご当地アルプス」。アルプスはご存じの通りヨーロッパ中央部に位置する山脈ですが、日本の中央部にも「日本の屋根」と言われるほどの巨大山脈群、日本アルプスがあります。群を成す3つの山脈(飛騨山脈・木曽山脈・赤石山脈)の位置関係から、それぞれ「北アルプス」「中央アルプス」「南アルプス」と呼ばれています。
南アルプスの北岳(3193m・日本第2位)、間ノ岳(3190m・日本第3位)や北アルプスの奥穂高岳(3190m・日本第3位)、槍ヶ岳(3180m・日本第5位)、中央アルプスの木曽駒ヶ岳(2956m・日本第25位)など標高も高く、日本を代表する山々が肩を並べています。しかし、日本で呼称されるアルプスはこの3つだけではなく、実は各地に50前後も「アルプス」の愛称を持つ山があることをご存じでしょうか?
飯豊連峰、朝日連峰、出羽三山を合わせた「東北アルプス」、「日光アルプス」(日光連山)、「東アルプス」(奥秩父)、「頸城アルプス」(頸城山塊)、「甲州アルプス」(小金沢連嶺)、「沼津アルプス」(静浦山地)、「鈴鹿アルプス」(鈴鹿山脈)、「六甲アルプス」(六甲山)、「兵庫アルプス」(氷ノ山一帯)、「四国アルプス」(石鎚山系)、「九州アルプス」(くじゅう連山)など、挙げれば切りがありません。
いろいろなご当地アルプス…
私もアルプスという名に引かれて、自宅近くの「ご当地アルプス」に登っています。よく行くのは神奈川の「鎌倉アルプス」。鎌倉市街地の北側に連なり、最高峰は大平山で標高はわずか159m。日本アルプスに比べれば、なんともかわいらしい山です。JR線の北鎌倉駅や鎌倉駅からスタートできるので行きやすく、思い立ったときにふらりと出掛けられるのが魅力です。
コースは丘陵歩きといった感じで、樹林に覆われた起伏の少ない道が続いています。岩場もほとんどなく、いわゆるアルプスのイメージからはほど遠いのですが、登山道の雰囲気がよく、下山後に鎌倉のオシャレなショップめぐりができるのが楽しく何度も通ってしまう山です。
最近は埼玉・秩父にある「皆野アルプス」を歩いてきました。破風山(627m)という山があり、5時間程度で歩ける山です。しかし、こちらはロープや鎖がかかった岩場、足幅の狭い尾根道もあり、なかなか険しいコース。アルプスの名が付くのも納得できる山でした。ちょうど、鮮やかなピンク色のミツバツツジや、オレンジのヤマツツジが見ごろで、それらの花を前景とした山頂からの眺めが素晴らしかったです。
私の出身地、静岡には本場、南アルプスのほかに沼津アルプス、奥沼津アルプス、湖西アルプスがあります。また、岡山の和気(わけ)アルプスは、アルペンムードに溢れる山だと聞き、気になっている場所。まだいずれも行ったことがなく、これらはいずれ登りたいと思っている山々です。きっと、あなたの家の近くにも魅力的なご当地アルプスがあると思います。
アルプスに登ろう
そもそもアルプスとは、岩山を表す「アルプ」を語源とし、その連なりの複数形でアルプスという説があります。
日本の山にアルプスという名が付いたのは、明治時代のこと。イギリスから来た登山好きの鉱山技師、ウイリアム・ゴーランドが飛騨山脈の山に登り、その美しさに感動。本場ヨーロッパのアルプスの山々に匹敵することから、「Japanese Alps」と著書に書いたことがはじまりです。その後、同じイギリスの宣教師、ウォルター・ウエストンが著書『日本アルプスの登山と探検』でその魅力を書き、日本に広く伝わりました。
一方、ご当地アルプスは、アルプスに憧れる各地の登山愛好家が、愛する地元の山につけた呼称。ご当地アルプスを歩いてみると、地元山岳会などが手作りの案内板を立てていたりして、その土地の人たちに愛されていることを実感します。最近では、自治体が積極的にご当地アルプスを宣伝して、観光に一役買っているところも見られます。
今年の5月初めには、北アルプスの穂高岳(涸沢)へ行ってきました。その時点で場所によっては数メートルの深い雪に覆われて、山頂に立つのは、登山上級者でも危険が伴います。5月の連休中、日本アルプスに関連した遭難事故が相次いだのは、みなさんの記憶にも新しいことと思います。一方のご当地アルプスには、手軽に登れる山がたくさんあります。この夏に本格アルプスの山をめざしている方も、近くの「ご当地アルプス」で気分を盛り上げ、少し足慣らししておくのもよいかもしれません。