企業を運営していくには、人材の確保、設備投資、仕入れ資金など、さまざまなコストがかかります。設立当初には多額の初期投資を行う必要がありますし、その後も常に運転資金を用意しなくてはなりません。
そんな資金確保に活用したいのが、国や地方自治体、公共団体の補助金や助成金です。補助金や助成金の種類は数多く、申請・受給条件もさまざまです。申請して受け取るには、知識とノウハウが必要です。
2回に分けて、補助金・助成金のことを中小企業向けに分かりやすく解説していきます。第1回は補助金について、第2回は助成金をご紹介します。
補助金と助成金は何がどう違うのか?
そもそも助成金と補助金の違いをご存じでしょうか。どちらも国や自治体などから、資金・経費の一部を支給してもらえることは変わりません。補助金と助成金の違いは、各機関の審査や受理されるための難易度にあります。
まず、助成金は該当要項を満たしてさえいれば、申請するだけで誰でもほぼ確実に受給が可能です。例えば、高齢者や障害者などを雇用する場合に受給できる「特定求職者雇用開発助成金」などが代表例です。
一方の補助金は、項目を満たすだけではなく、その事業や内容において補助金の支給を受ける必要性をアピールしなくてはなりません。例えば、2015年度には、中小企業の経営革新のために「ものづくり・商業・サービス革新補助金」の公募が行われていますが、経営革新の内容をアピールすることが必要でした。
また、補助金の場合は、支給された事業に対してきちんと使ったという証明のため、書類整備が必要になります。その後、会計検査院の検査が入ることもあります。全体的に助成金よりも補助金の受給は難易度が高いといえるでしょう。
補助金と保証金の違いをまとめると、以下のようになります。
<補助金>
・条件を満たしても受給できるとは限らない
・会計検査院の検査が入ることもある
<助成金>
・条件さえ満たせば誰でも受給できる
・会計検査院の検査は基本的にない(ただし、まれに検査が入ることがある)
それでは「補助金」を勝ち取るためにはどうしたらよいのか、そのためのテクニックを4つのステップで紹介します。
ステップ1:受け取り可能な補助金を知る…
補助金は、全体の予算上限額がその年度ごとに決められており、数多い申請者の中から順次割り振られます。そして、予算限度額に達した時点で受付終了です。補助金を求める事業者や企業は多く、全ての会社に支給することはできません。補助金を受けることでより生産性・社会貢献度が向上する企業に対して、優先的に支援を行うのです。
競争率の高い補助金を数多くの申請者の中から勝ち取るためには、創意工夫やテクニックが必要になります。その第1段階が、まずは自社が申請できる(申請の条件要項を満たしている)補助金を知ることです。補助金といっても、条件・用途・金額などが非常に細かく分岐しています。まずは受給条件を満たしている補助金をピックアップすることから始めましょう。
補助金を調べるには、インターネットで検索するのが手軽な方法です。詳細は電話などで問い合わせてもよいでしょう。調べるのが面倒ならば、中小企業団体中央会や中小企業基盤整備機構といった団体に相談するのも手です。中小企業診断士や税理士など、補助金に詳しい専門家に確認してみましょう。
ステップ2:金額の安い補助金など、受給しやすい種類を選ぶ
補助金を得るための第2段階は、実際に申請する補助金の絞り込みです。申請には手間がかかるため、受給しやすいものを選ぶというのも手段の1つです。補助金を選ぶポイントとして、給付額に注目してみましょう。給付額が大きければ競争率は高くなる上、条件や手続きが複雑になっていきます。給付額が小さい場合は、高額な補助金に比べると競争率は低く、かつ条件や手続きが緩いものが多い傾向にあります。
具体的には、人材雇用や新規事業のための補助金がこれに当たります。例としては、「小規模事業者持続化補助金」「ちいさな企業未来補助金」などです。
給付額は必要費用や状況によってさまざまですが、1件当たり平均50万~100万円前後です。このほかに創業支援補助金などもあるので、これから起業しようと思っている方は挑戦してみてください。
ステップ3:競争率の高い補助金の場合、必要書類の内容が重要
一方、給付額が大きいものが魅力的という場合もあるでしょう。例えば、新商品や新技術を開発する際の費用の補助を目的にした研究開発型の補助金は、給付額が500万~5000万円以上と高額です。
研究開発型の補助金は、手続きが複雑で書類審査以外にも面接を受ける必要があるケースがほとんどです。このタイプの補助金は倍率が10~20倍と非常に狭き門です。
研究開発型の補助金を勝ち取るためには、大前提として必要書類を完璧にそろえる必要があります。金額によっても変化しますが、研究開発向けの補助金申請は書類審査だけでも半年以上の期間がかかります。長くなれば、受給までは申請してから1年以上先になることも珍しくありません。もちろん、申請した書類に不備があれば受理もされません。
申請には必要書類と内容を確実に埋めることが大前提になります。補助金や助成金はあくまでも、企業の生産性・社会貢献の向上のために給付されるものなので、書類内容も可能な限り有益性を前面に出すようにしてください。どのような事業内容で、補助金を受けることでどのような利益が生み出されるのか、理論的かつ合理的にアピールできるよう構成しましょう。
将来的に受け取った補助金以上の利益を生み出せるような、明確なビジョンを記しておく必要があります。自社のみの利益に限らず、世界中の需要を満たせるなど、より社会貢献度が高い将来展望が理想的です。
ステップ4:窓口に何度も足を運び、担当者に顔を覚えてもらう
多額の補助金申請には大量の書類が必要です。そのどれかに不備があれば、たとえ受給条件を満たしていても受理してもらえません。そのハードルを越えるためには、申請書類の内容やシステムで不明点がある場合、相談窓口へ積極的に足を運ぶことが重要です。担当窓口は補助金の種類によって異なりますので、それぞれのWebサイトを確認してみてください。
これによって疑問点が解消されると共に、各機関に顔を覚えてもらえます。基本的に書類の受理・不受理を判断しているのは窓口の担当になります。何度も足を運んで仲良くなり熱意を示すことは、決して損にはなりません。
ある程度仲良くなっておけば、いざというとき親身になって相談に乗ってくれる可能性があります。こうした熱意で他社と差別化を図るのは非常に大切です。
まとめ:書類を確認する担当者の心理を考えて申請しよう
100万円前後の補助金であれば、条件さえ満たしておけばかなりの高確率で受給できると思われます。一方、研究開発に関する補助金など競争率の高いもので少しでも受給者に選ばれる確率を上げるには、ステップ4で指摘したように熱意を見せ、各窓口の担当者を味方につけて、より社会貢献度が高いと認識してもらうことがカギとなります。最終的に受給者を選ぶのは機械ではなく人なので、書類を確認する担当者の心理を考えて申請するようにしてください。