たとえ従業員が1人でも、企業は至急マイナンバー制度への対策を講じる必要がある。急を要するため、「まずは社員向けに資料を作成し……」などと悠長なことは言っていられない。社内の人間がマイナンバー制度について勉強し、それを体系的に理解した上で資料化するにはそれ相応の時間と稼働がかかるからだ。
そこで必要なメンバーに必要な情報を、効率よく教育する手段として注目されているのがeラーニングだ。大手IT系列企業などが、さまざまなeラーニングサービスを提供している。ただ、そうした大手IT系列企業と日ごろ付き合いがない企業にとっては、そうしたサービスの活用は、なじみがないと感じるかもしれない。
そんなときは、ほとんどの企業が日ごろ取引している通信事業者が頼りになる。NTTグループのNTTラーニングシステムズが「eラーニングプラン」でマイナンバーに関するeラーニングを提供している。料金は受講者1人当たり、数千円程度と費用負担もそれほど大きくはない。
では実際こうしたeラーニングで、どの程度マイナンバー教育が社員に行きわたるのだろうか。これまで、eラーニングを活用した経験がない企業の場合、内容面もピンとこないかもしれない。そこでこの「eラーニングプラン」を例に、概要を見てみよう。
このeラーニングは、マイナンバーを取り扱う担当者だけでなく全社員を対象にしたもので、企業に求められる「安全管理措置」についての具体的な理解を目的としている。項目としては、「第1章 マイナンバー制度って何?」で、マイナンバー制度の目的と範囲、制度スケジュールと活用メリット、マイナンバー利用の具体例、マイナンバー制度の安全管理措置、法人番号について――といった基礎を解説する。
「第2章 マイナンバー制度で企業が対応すべきこと」では、一歩踏み込んだ実際の対応について学習できる。企業のマイナンバー対応として、マイナンバー利用の禁止事項、マイナンバー制度で変わる業務フロー、行政機関への提出書類の時期と具体例――といった内容が解説される。そして、「第3章 企業に求められる安全管理措置」で、企業に求められる安全措置、委託・再委託の安全管理措置――というセキュリティの考え方が網羅される。
解説本との違いは?…
こう列挙するとマイナンバーの解説本と同じように見えるが、eラーニングの場合、理解を助けるために動画を多く採用し、視覚的に分かりやすく説明している点がポイントとなる。マイナンバーを含む特定個人情報の保護には、難解な用語や概念がつきまとう。そこで、動画を使ったコンテンツで親しみやすくして理解を助けている。より詳しい情報を必要とする受講者には、PDFファイルなどで資料をダウンロードする機能もある。
実はこのeラーニング、もともとNTTグループが社内教育に使っていたシステムに、マイナンバー対策用のコンテンツを組み合わせてできたという経緯がある。商品化以前にNTTグループ内で活用してブラッシュアップを繰り返したシステムなので、使い勝手や分かりやすさへの配慮が行き届いているのだ。eラーニングは1つの画面で紹介するコンテンツの量や、文字の大きさなどの細かいノウハウが学習のしやすさに直結するものだが、それが徹底的に磨かれている。
eラーニングを導入する際に大切なのは、「やりっ放しにさせない」ということ。eラーニングを利用した場合、契約・導入して社員に受講を促しただけで、社員教育自体が済んだ気になってしまいがちだ。これは社員教育における最大の落とし穴といえる。eラーニングの導入で得られる大きなメリットは、受講状況や理解度のチェックができる点にある。理解度が本当に高まっているかどうかをしっかりと管理し、そうでなければ次の手をどう打つかを考えなくてはならない。
もちろん、NTTラーニングシステムズのeラーニングプランにも各章の終わりに理解度テストが設けられている。コンテンツを見て終わりではなく、テストを実施することで理解度の自己チェックが可能になる。合格するまで、何度も繰り返し教材のコンテンツを見て理解を深めていく仕組みだ。
eラーニングの理解度テストでは、100点満点で80点が取れれば合格としているケースが多い。しかし、そこでとどまることなく、全員が100点を取るまで繰り返すような運用なども考えられる。簡単に100点は取れないので、多くの社員が何度も受講することになる。対象者から「面倒くさい」といった不満が出てくる可能性もあるが、嫌々ながらでも繰り返し何度も受講すれば理解は深まっていく。例えばこうした運用のカスタマイズによって、既成のeラーニングを自社社員の理解度にフィットした社員教育ツールに変えていけるだろう。
管理者にとってeラーニングの魅力とは、従業員の学習状況と内容の理解度を容易に把握できる点だ。NTTラーニングシステムズのeラーニングでは、管理者アカウントでログインするだけで管理画面が表示でき、社員の学習の進捗状況やテスト結果が分かる。具体的には、個人ごとの進捗状況・テスト結果、教材ごとの利用状況、講座ごとの進捗分布など。進捗が100%未満のユーザーには催促メールを送信したり、アンケート未実施ユーザーに催促メールを送付したりできる。「やりっ放しにさせない」ことが社員の理解を促すのだ。
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