電子帳簿保存法とは、紙として保存していた会計帳簿、領収書や請求書などの証憑(しょうひょう)類を電子データで保存することを認める法律ですが、今までの同法は要件が多く、中小企業経営者にとってハードルが高いものでした。
そこで今回は、導入しやすくなった2020年10月に法改正される電子帳簿保存法について解説していきます。
電子帳簿保存法の経緯
電子帳簿保存法は、1998年に制定されました。背景としては、会計税務の分野においてもITをもっと活用するべきと要望が寄せられたことから、国税関係書類についても電子データ保存を認めようというものでした。ところが、元の文書が紙で作成されたものは従来通り紙での保存が要求されるなど、活用しにくいものでした。
また、いまだに普及が進んでいない要因として、現行の電子帳簿保存法では、電子データとして受領した請求書に対して、タイムスタンプを付与する、または、不正防止のための事務処理規定を制定して運用することを要件とされていることが挙げられます。中小企業の多くはこれらに対応することが困難だったのですが、2020年10月からの改正電子帳簿保存法施行で、要件が緩和されることになりました。
2020年10月改正電子帳簿保存法のポイント
2020年10月の改正電子帳簿保存法では、ユーザーが改変できないものはデータ保存のみでよくなりました。
例えば、クレジットカードやSuicaなどの交通系ICカード、電子マネー、QRコード決済を利用し、データを自動処理できる経理システムに送るようにすれば、今までのような経理処理が不要になるのです。ここでは、それぞれの利用明細データが領収書代わりになるので、紙の領収書は要りません。経理処理が完全ペーパーレス化でき、業務の軽減になるのです。
また上述のように、ユーザーがデータを改変できないもの(クレジットカード、キャッシュレス決済の利用明細データなど)は、タイムスタンプが不要になりました。
電子帳簿保存制度の導入方法…
1.電子帳簿保存法に対応した経理システムの導入
2016年の法改正によってスマートフォンの撮影による帳簿保存が可能になりましたが、撮影した紙の領収書などにはタイムスタンプを付与する必要があります。そのためには、デジタルカメラやスマートフォンで撮影した領収書などに自動でタイムスタンプを付与し、電子帳簿保存法に準拠した形で保存できるようなシステムを導入しなければなりません。2020年10月の改正電子帳簿保存法の施行へ向け、法に準拠した新たなシステムを提供する企業も増えていくと考えられます。
以下に主な関連WEBサイトを挙げておきますので、予算に応じてシステム導入の検討をしてみてはいかがでしょうか。
タイムスタンプ認定事業者一覧
https://www.dekyo.or.jp/tb/contents/list/index.html
セイコータイムスタンプサービス
https://www.seiko-cybertime.jp/product/time_stamp/
長期署名クラウドサービス eviDaemon <エビデモン>
https://www.seiko-cybertime.jp/product/evidaemon/
SecureSeal®standard
http://www.secureseal.jp/service/index.html
2. 税務署への申請手続きを行う
電子帳簿保存法の適用を受けるためには、電子保存開始日の3カ月前までに税務署に以下の書類を提出して申請し、承認を得る必要があります。
・承認を受けようとする国税関係書類を保存する電子計算機処理システムの概要を記載した書類(および契約書)
・承認を受けようとする国税関係書類を保存する電子計算機処理に関する事務手続き概要についての書類
・申請書の記載事項を補完するために必要となる書類その他参考となるべき書類
申請書は国税庁のWEBサイトにある「申請書等様式」からダウンロードできます。
開始希望の日までに税務署から連絡がない場合は承認されたものとみなし、電子帳簿保存を開始できます。新規に事業を開始した場合は、事業開始2カ月以内に承認申請することで電子帳簿保存法を開業当初から適用できます。
今回の改正電子帳簿保存法の施行に合わせて、中小企業のペーパーレス化が進めば、効率的に業務が行えるとともに、人員をほかの業務に回すことで効率的な資源配分にもつながります。中小企業を経営されている方は、ぜひ検討してみてください。
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※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年9月2日)のものです