プロ野球に学ぶ、組織の力を伸ばした男たち(第8回)“アマ”でも通用した古葉監督の「耐えて勝つ」極意

人材活用

公開日:2018.03.27

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 2017年のプロ野球セ・リーグのペナントレースは広島東洋カープ(以下広島)が2年連続でリーグ優勝し、37年ぶり2度目となる連覇を果たした。37年前に広島を連覇に導いたのは古葉竹識(こば たけし)監督である。創立以来、万年Bクラスの弱小チームを一変させた名将だ。

 古葉氏が広島の監督に就任したのは、1975年5月というシーズン中のことだった。シーズン序盤にルーツ監督が辞任し、コーチを務めていた古葉氏が39歳の若さで後任に就いた。そして、3年連続最下位に沈んでいた広島を球団史上初のリーグ優勝に導いた。さらに1979、80年には連続日本一を達成。84年には再度日本一に輝き、85年に勇退した。

 広島での実績を買われ、1987年からは横浜大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)の監督に就任。しかし、Bクラスが続き3年で辞任した。その後20年の時が過ぎ、2008年に東京国際大学野球部監督に就任すると、2011年に東京新大学野球春季リーグ戦で初優勝を果たし、全日本大学選手権大会ではベスト4まで進んだ。

 プロ野球とアマチュア野球の両方で実績を上げた古葉氏。彼はどのように広島を強豪に育て上げ、どのように東京国際大学野球部を初優勝に導いたのだろうか。

若手には厳しい練習で成長を促す

 試合中ベンチの奥で半分身を隠しながら静かに戦況を見つめる古葉氏の姿は、テレビ中継などに映されることも多かったので、記憶に残っている人もいるだろう。古葉氏によると、あの位置に立つと一番球場全体を見渡すことができるからだという。このエピソードが示す通り、古葉監督の指導法の基本は「見る」ことだ。「選手をよく見て、その実力を見極め、選手に合った指導をする」というスタンスは、広島、横浜、東京国際大学野球部を通じて一貫している。

 まだまだ実力も経験も足りない若手選手は、練習と試合を通じてレベルアップをめざすよりほかに道はない。一方、実力も経験も備えたベテラン選手は、1年でも長く良い状態でプレーし続けるために自己管理を徹底する必要がある。

 まず、チームの土台をつくるためには若手に厳しい練習を課して鍛え上げなければならない。この指導方針のカギとなるのが、厳しい練習に耐え抜き、チームをけん引する「練習の虫」ともいえるイキのいい若手の存在だ。

 広島時代、それに該当したのが高橋慶彦選手だ。高橋氏は、高校時代は投手であったが、プロで通用しないと判断されショートにコンバートされた。さらに、これまで経験のないスイッチヒッターに転向。これが成功を収め、1979年には日本記録となる33試合連続安打を記録した。

 連続安打とともに高橋氏は足を生かして、3度の盗塁王も獲得している。しかし盗塁の成功率は高くなかった。通算盗塁数477で歴代5位だが、同時に通算盗塁死数206で歴代2位。これは、古葉氏が「アウトになってもいいから走れ」と背中を押し続けた結果である。

 また、ショートにコンバートされた頃は慣れないポジションでエラー数が多かった。それでもレギュラーになれたのは、古葉監督が耐えて使い続けたからであり、高橋氏も諦めることなく練習し続けたからであった。高橋氏は「プロ野球の恩人は古葉監督」と明言している。

 こうした若手がいるチームにはいい競争意識が生まれ活性化する。後輩である山崎隆造氏や正田耕三氏らがスイッチヒッターとして次々と力を付けたのも、高橋氏というお手本があったからである。

ベテランには、自己管理、自己責任を求める…

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執筆=峯 英一郎studio woofoo

ライター・キャリア&ITコンサルタント。IT企業から独立後、キャリア開発のセミナーやコンサルティング、さまざまな分野・ポジションで活躍するビジネス・パーソンや企業を取材・執筆するなどメディア制作を行う。IT分野のコンサルティングや執筆にも注力している。

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