ビジネスWi-Fiで会社改造(第41回)
ビジネスWi-Fiでイベントを盛り上げよう
公開日:2024.12.05
前回まで第5ステップ「事業戦略を立て直す」を説明してきました。今回から最後のステップ「データで評価する」を解説します。
生産性向上に向けて業務プロセスの改革を始めたならば、その効果を客観的に評価しなければなりません。口コミや顧客満足などの定性評価も重要ですが、同時に定量的に評価できる手法があれば、曖昧さを排除した具体的な議論ができるようになります。
まず、どのようなデータで評価するかですが、第三者によって厳密に定義がなされていて、かつどこでも使われているデータであれば、評価結果を時間や事業所、さらに会社を超えて比較可能になります。このような視点から、会計データが最も適していると考えられます。会計データはどこの現場でも取得されており、税務署や金融機関もその管理に関わっているからです。
では、会社が業務プロセス改革を進めていったとき、その結果はどのように会計データに表れるのでしょうか。そもそも、この改革が期待通り進んでいるのか、正しい方向に向かっているのかを日常的に管理しなければなりません。良かれと思った改善が、別のところで大きな無駄を生んで「改悪」になる場合があるのです。短期的なゴールを達成しても、長期的にリスクを高めている可能性もあるのです。
サービス業の生産性は「売れるサービスを無駄なく提供すること」と定義できます。この定義に沿って業務プロセス改革をモニタリングするのなら、その進捗(しんちょく)は会計データに次のように現れてきます。
第一に、生産性を上げようとしているわけですから、まず「労働生産性」が改善されなければなりません。労働生産性は会社にある損益計算書からすぐに計算できます。一般に、付加価値を投入している従業員数で割って計算しますが、付加価値は売上高から、外部から仕入れた材料費などを差し引いて計算され、サービス業では付加価値を売上高総利益、いわゆる粗利益で近似することがほとんどです。
付加価値とは、従業員一人ひとりが外から仕入れた材料などを使ってこなした業務量を金額で表した結果です。つまり労働生産性の変化とは、従業員1人当たりの業務をどれだけ無駄なく効率的にこなしているか、その推移を評価しています。
生産性を向上させる業務プロセス改革においては、この労働生産性という指標が上向かなければ意味がなく、だから最初にこれに注目するわけです。一方、労働投入量を人数でなく労働時間で計算する場合があり、これを労働生産性と区別して「人時生産性」と呼ぶことがあります。
ただし、損益計算書から労働生産性を計算すると、その結果は基本的には年1回しか出てきません。日々の業務をモニタリングするにはもっと小まめに計算する必要があります。シフトはお客さまの動きに合わせて毎日編成されていますので、できれば毎日、または毎週でも計算したいところです。付加価値をその頻度で計算するのは大変なので、売上高や客数などで近似するといいでしょう。本連載で紹介したプロット分析や業務・人員推移グラフは、この生産性を見ていたのです。
時短を実現できない理由は人手不足だとして安直に人の補充で解消すると、増やしたスタッフ数以上に付加価値を増やさなければ生産性は下がり、せっかく増やしたスタッフを生かしきれません。ただしスタッフを増やし、それによりサービスに手間暇をかけて、顧客満足や客数、客単価を高められれば、労働生産性が上がります。
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執筆=内藤 耕
工学博士。一般社団法人サービス産業革新推進機構代表理事。世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。
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審査 24-S1007
中小サービス業の“時短”科学的実現法