ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2021.04.08
新型コロナウイルス感染拡大の影響で売り上げが減少し、会社の存続や従業員の雇用維持のため、やむなく役員給与を減額し、従業員の雇用を守ったという企業も少なくないと伺っています。
しかしながら、今、問題となっているのが、「一度下げた役員給与をどうやって戻そうか」ということです。この根本的な問題は、役員給与についての法人税の取り扱いにあります。
そこで今回は、役員給与の取り扱いと新型コロナウイルスの影響による「定期同額給与」の変更について解説したいと思います。
平成29年度税制改正により、社長などの役員給与については、職務執行前にあらかじめ支給時期・支給額が定められていることを前提として、
(1) 定期同額給与
(2) 事前確定届出給与
(3) 業績連動給与
の3つの役員給与以外は、原則として、会社の経費にならないとされています。
(注)
・「定期同額給与」とは、役員に対して、毎月同じ金額を支払う給与をいいます。
・「事前確定届出給与」とは、事前に所定の届出書を、定められた期限までに税務署に届け出をして、その届け出どおりの日時・金額で支給される給与をいいます。
・「業績連動給与」とは、有価証券報告書に記載されている「利益に関する指標」に基づいて支払われる給与をいいます。
この3つの給与のうち、新型コロナウイルスの影響による役員給与の減額・増額で問題になっているのが、多くの中小企業で採用されている「定期同額給与」です。
なぜなら、定期同額給与は、事業年度開始の日から3カ月以内に役員報酬の金額を決定する必要があり、株式会社であれば、「株主総会議事録」または「取締役会議事録」を作成・保管し、当事業年度中は毎月同額の給与を「定期同額給与」として支給し続ける必要があるからです(事業年度開始の日から3カ月以内にされた定期給与の改定を、以下「通常改定」といいます)。
それ以外の時期・方法で給与の額を増減させた場合は、特別な事由がある場合を除き、損金算入される定期同額給与の要件を満たさなくなるからです。
この特別な事由として認められているのが、
(1) 臨時改定事由(役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更等の場合(減額、増額))
(2) 業績悪化改定事由(経営の状況が著しく悪化したこと等の場合(減額))
の2パターンなのです。
コロナ禍の影響による役員報酬の減額については、国税庁も「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」の「業績が悪化した場合に行う役員給与の減額〔令和2年4月13日追加〕」および「業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額〔令和2年4月13日追加〕」の2事例で回答しており、業績が悪化した場合だけでなく、売り上げなどの数値的指標が著しく悪化していないとしても、新型コロナウイルス感染症の影響による経済環境により、業績悪化が認められる場合も業務悪化改定事由による改定に該当するとの取り扱いがなされています。
こうした取り扱いもあって、新型コロナウイルスの影響で売り上げが激減などした会社においては、事業存続や従業員の雇用維持を考え、役員の給与を減額した会社が少なくありません。
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執筆=寺澤 則夫
税理士
(一社)租税調査研究会主任研究員。国税職員時代は税務大学校教授、黒石税務署長、東京国税局調査第四部統括国税調査官、佐原税務署長、浅草税務署長などを歴任。
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