ビジネスコミュニケーション手法の改善(第10回)
【オフィス・店舗向け】回線速度は?サポートの手厚さは?業務用フレッツ光の選び方
公開日:2024.09.19
最近、メディアでよく取り上げられる税金の話に、「賃上げ税制」「定額減税」なるものがあります。2024年の春闘では、賃金の平均引き上げ額は労使ともに5%超だったと公表されています。この連載でも「賃上げ」「ボーナス」という言葉をよく見かけます。堅苦しい内容ではなく、「ぶっちゃけた話、他の会社の給料はどうなっているの?」という素朴な疑問を、国税庁が発表した「民間給与実態統計調査」を基に解説します。
国税庁は民間の事業所(従事員1人~5000人以上まで調査)の中から2段階で抽出した事業所に、調査票を送付しています。調査票は各年12月31日現在の状況を回答するようになっており、例年9月末から10月初旬に「令和〇年分民間給与実態統計調査の結果」として発表しています。この調査は、①租税収入の見積もり、②租税負担の検討などに活用されます。
調査票は詳細な回答を求めており、結果として、企業規模別(業種および資本金別)、給与階級別、性別、年齢階層別および勤続年数別による給与所得者の分布が分かるようになっています。調査結果の発表は、端的に「給与所得者の平均給与は458万円(前年比2.7%増)でした」などと報道されています。
この報道により、「日本の平均給与はこんなものなのか」あるいは「平均給与ってこんなにあるの?」と、人によって一喜一憂しているでしょう。これは、正社員および正社員以外の方の1年を通じた給料(給料・手当、賞与)の平均です。いまだに多くの企業が終身雇用・年功序列を採用している中、データがあるにもかかわらず一面だけを捉えたこの報道に、個人的には疑問を感じています。
興味がある方は、お手元にパソコンまたはスマートフォンがあれば「国税庁 統計情報」で検索できます。
(1)新着情報の下の「標本調査結果」の欄に、「民間給与実態統計調査」が表示されます。
(2)ここでは令和4年の「民間給与実態統計調査結果」を見ていきましょう。
(3)アイコンをクリックすると以下の画面になります。
(4)この中から「第15表 業種別及び勤続年数別の給与所得者数・給与額」(PDF)をクリックします。
(5)PDFは2ページ表示されますが、1ページ目(左上に「その1」と記載があります)を見てみましょう。
この表は、調査回答を基に勤続年数を大枠でまとめ、該当する方の給与を合算し人数で割った1人当たりの平均給与が記載されています。
1番目に建設業が掲載されています。例えば、建設業の勤続年数「1~4年」の回答のあった給与総支給額は「3,826,714百万円」を給与所得者数「953,076」で割ると、 勤続年数「1~4年」の階層の平均給与「4,015千円」が算出されるというものです。
表の下部には全業種勤続年数別の平均給与があり、右端に全業種・全年数の平均給与「4,576千円」(マスコミが報じている金額)の記載があります。ただし、気を付けていただきたいのは、勤続年数1~9年目(15,275,009+10,801,137)が給与所得者数全体(50,776,135)の過半数を占めており、平均給与を押し下げる要因となっています。
皆さまの勤め先は、勤続年数1~9年の方が過半数を占めていますか? 終身雇用制度を採用する企業と、従業員の入れ替わりの早い企業をひとくくりにした結果が「給与所得者の平均給与」となっていますので、現実的には業種別・勤続年数別のブロックを見ると同業他社の平均的な給与が分かります。
(1)用語の解説も掲載されています。
(2)今回取り上げた、「第15表 業種別及び勤続年数別の給与所得者数・給与額」以外の調査結果も、以下のように表題ごとにまとめられていますので、あわせて確認してもよいかもしれません。
第1表 給与所得者数・給与額・税額 |
第2表 給与所得者数・給与額・源泉徴収義務者数 |
第3表 給与階級別の総括表 |
第4表 事業所規模別及び給与階級別の総括表 |
第5表 事業所規模別及び給与階級別の給与所得者数・給与額 |
第6表 企業規模別及び給与階級別の総括表 |
第7表 企業規模別及び給与階級別の給与所得者数・給与額 |
第8表 業種別及び給与階級別の総括表 |
第9表 業種別及び給与階級別の給与所得者数・給与額 |
第10表 事業所規模別及び年齢階層別の給与所得者数・給与額 |
第11表 企業規模別及び年齢階層別の給与所得者数・給与額 |
第12表 業種別及び年齢階層別の給与所得者数・給与額 |
第13表 事業所規模別及び勤続年数別の給与所得者数・給与 |
第14表 企業規模別及び勤続年数別の給与所得者数・給与額 |
第15表 業種別及び勤続年数別の給与所得者数・給与額 |
第16表 給与階級別の納税者数・非納税者数 |
第17表 給与階級別の諸控除 |
第18表 給与階級別の扶養人員別表 |
第19表 給与階級別年末調整を行わなかった給与所得者数・給与額・税額 |
民間企業従業員の給与水準を「物差し」として、国家公務員の給与水準が決まります。こちらは、役職別、学歴別、各種手当や定年制度などの調査を中心に発表しているものです。2024年の人事院勧告(民間給与詳細)はこちらから確認できます。
今回は、国税庁が行う調査において、メディアも一部にしかスポットを当てないものを、「違う角度で見るとどうなのか?」について紹介しました。地域や業種、事業規模によって違いはありますが、「賃上げ税制」などにも密接に絡んでくると思いますので、紹介した内容が何らかの参考になれば幸甚です。
執筆=清水太一(しみず たいち)
東京国税局では情報管理部門に所属し、国税庁の基幹システムである国税総合管理システム(KSK)に関するSE業務をはじめ、資料調査課(料調)で公益法人調査、調査部で連結法人、大規模法人の調査に従事。その後、国際取引に関する部門で国際税務専門官として海外取引、移転価格などに関する調査、相互協議などに携わり、2024年6月辞職。同年8月税理士登録。一般社団法人租税調査研究会主任研究員。
監修・編集=宮口貴志
一般社団法人租税調査研究会専務理事・事務局長。
税務・会計・税理士をテーマに雑誌の作成やニュースサイトなど運営を手がける株式会社ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。元税金の専門紙および税理士業界紙の編集長、税理士・公認会計士などの人材紹介会社を経て、TAXジャーナリスト、会計事務所業界ウオッチャーとしても活動。
*一般社団法人租税調査研究会(ホームページ https://zeimusoudan.biz/)
専門性の高い税務知識と経験をかねそなえた国税出身税理士の研究員・主任研究員が、会員の会計事務所向けに税務判断および適切納税を実現するアドバイス、サポートを手がける。現在、在籍する研究員・主任研究員は56名。会員会計事務所は約100会計事務所。
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