ESG(環境・社会・企業統治)経営に見られるように環境保全が企業の課題になり、リユースやリサイクルなどの取り組みとともにモノを大切に使うことが重要であるのは間違いない。ただ、古いものをいつまでも使い続けるリスクもある。特に技術の進化が激しいIT機器だ。
IT機器の中でも、社内ネットワークで利用されるスイッチやルーター。通信速度が1Gbpsや10Gbps対応のLANスイッチがオフィスでは一般的になる中、故障しないからといって社内で昔の100Mbpsのスイッチを使い続けるケースもあるかもしれない。だが、端末とサーバーの通信が遅くなるなど、業務に支障を来しかねない恐れがある。WAN側で利用するルーターも同様だ。インターネットや拠点などを接続する光アクセス回線が高速になる一方、ルーターが低速ではアクセス回線のパフォーマンスを生かしきれないだけでなく、オンライン会議やクラウドサービスなどの利用にも支障を来すことになる。
社内ネットワークとインターネットとの出入り口となるゲートウェイにルーターを設置するのが一般的だ。このルーターがトラブルを起こせば、Webアクセスやメールの送受信などインターネット経由で利用するサービスの利用や、拠点間の通信が止まる恐れがある。自社のユーザーのみならず、メールをやり取りできない顧客・取引先にも影響を与えかねないといえる。
ルーターやスイッチとともにオフィスに欠かせないネットワーク機器となるのが、Wi-Fi(無線LAN)だ。Wi-Fiも古いタイプの機種を使い続けていると「ネットワークにつながりにくい」「途切れる」といったトラブルの原因となるので注意が必要だ。
Wi-Fiとひと口に言っても、ユーザー数や利用形態に応じて製品・サービスを選ぶ必要がある。Wi-Fiの利用者が比較的少ない小規模事業所や店舗、家庭などではルーター機能を備えたWi-Fiアクセスポイント(無線AP)がある。家庭向けWi-Fiルーターは光アクセス回線のユーザーに事業者が貸与するタイプのほか、家電量販店などで購入することもできる。
そして、ユーザーの多いオフィスでの利用に適しているのがビジネスWi-Fiだ。ノートパソコンやタブレット端末などのアクセスをコントロールする無線APをWi-Fiルーターと呼ぶ事業者もある。この無線APも、古い機器を使い続けていると多くの問題に直面するリスクがある。その1つが故障だ。無線APに限ったことではないが、長年利用していると経年劣化が起こり、故障しやすくなる。オフィスに複数台の無線APが設置されていれば、故障しても他の無線APを使うことが可能だが、端末数が増えるのでつながりにくくなったり、通信速度が低下したりして、業務に支障を来すことになる。
無線APの保証期間はメーカー、製品によってまたまちだが、おおむね3~5年だ。故障内容によって無償での修理・交換も可能だが、有償の場合、買い換えたほうが得策の場合もある。また、リスクとしてセキュリティの問題がある。Wi-Fiのセキュリティ対策として暗号通信があるが、暗号通信技術も進化しており、古い無線APを使い続けていると攻撃者にぜい弱な暗号通信が狙われ、通信内容が盗聴される恐れもある。
端末の同時接続台数もWi-Fi選びのポイント
そして、最大のリスクと言えるのが、古いWi-Fiを使い続けることによる業務への影響だ。故障しないまでも旧型の無線APは通信速度や端末の同時接続台数に制限がある。例えば、以前はオフィスの端末は有線LANに接続するデスクトップが中心で、無線LANを利用するノートパソコンの台数が少なく、端末の同時接続台数がそれほど問題にならなかった企業もあるはずだ。
ところが、コロナ禍を経てテレワークに移行しやすいノートパソコンに切り替えた企業も少なくない。そして、出社勤務になり、オフィスでは一気に無線APにアクセスする端末が増え、なかなかつながらないといった問題に直面することになる。
Wi-Fiがオフィスで利用され始めた1990年代後半から無線通信技術の進歩とともに通信規格も変化を遂げてきた。現在、ビジネスWi-Fiとして導入の進んでいるのがWi-Fi6(IEEE802.11ax)だ。最大通信速度は9.6Gbps(理論値)、周波数は2.4GHz/5GHz帯に対応する。さらに、6GHZz帯に対応するWi-Fi6Eもある。電波の特性上、2.4GHz帯は比較的遠くに電波が届きやすい。5GHz帯は2.4GHzに比べて利用者が少なく、干渉しにくいと言われる。6GHz帯も同様だ。
無線APをオフィスのどこに設置すれば電波が届きやすいのか、干渉を起こしにくいのかなど、設置台数の検討を含め、専門家による事前調査が望ましい。また、インターネット利用時の通信速度は、インターネット接続用回線や端末の仕様などに依存するため、事業者に聞くのも1つの手だ。Wi-Fi6の特徴である高速通信を生かしてWeb会議なども快適に利用したり、無線AP1台当たりの同時接続台数も増えるため、参加者の多い会議室などでもスムーズにアクセスしたりすることが可能だ。
ルーターの監視・運用管理を専門家に任せる
社内の無線LAN環境は、ルーターとスイッチ、無線APに端末を接続して利用することになる。万一、無線LANとインターネットが接続できなくなった場合、その原因がLAN側(スイッチ、無線AP)にあるのか、WAN側(ルーターや回線)にあるのかを切り分け、早期に復旧する必要がある。だが、ネットワークに詳しい専任のIT担当者がいない企業では障害対応の遅れが、そのまま業務の停滞につながりかねない。
ITの専門知識を持つ人材を社内で確保・育成するのはハードルが高いという企業にとって、外部のIT事業者にネットワーク機器の監視・運用管理をアウトソーシングする方法がある。専任スタッフが24時間・365日の体制で遠隔からルーターの監視を行い、万一の障害時には遠隔から対処法をアドバイスしたり、スタッフが代替機を持って訪問し、設定をサポートしたりするサービスもある。オプションでスイッチの障害にも対応するサービスもあり、社内LANの一元管理を任せることが可能だ。ネットワークのトラブルにより、業務を停滞させないためにもアウトソーシングサービスを検討したい。
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