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人材活用

公開日:2017.08.16

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 過去の日本において常態化していた「性差に関する差別意識」が、現代日本で徐々に様変わりしてきているのはこれまで説明してきた通りです。前回はその変化を「仕事そのものに対する意識」に求めましたが、今回は「生き方に対する意識」に焦点を当てて説明します。

 一昔前のジャパニーズ・ビジネス・パーソン(主に男性)の生活・人生に関する意識といえば、「仕事ありき。仕事を人生の中心に捉えた生き方の模索」がほとんどでした。ビジネス界では「会社に必要とされる人間になるためにはどう立ち振る舞えばいいのか?」「自己実現を可能にする会社・仕事選びとは?」「管理職のためのメンタルヘルス」というようなトピックが目まぐるしく飛び回り、その都度ビジネス・パーソンの考え方や行動様式に影響を与えてきました。

 社会が成熟し、グローバルビジネスやITツールが浸透・常識化するという変化の中にあって、「これまでと同じ考え・働き方をしているだけではその速い流れに振り落とされてしまう」という強迫観念にも似た自己改革・自己啓発意識を持つようになった彼らは、必死に自分磨きの術を模索しました。

 そういった生存競争・ふるい落としを乗り越えてきたビジネス・パーソンがいたからこそ、日本はバブル崩壊後の壊滅的な不況下にあってもなお世界に対峙できる経済大国としての立場を守り抜けたともいえます。

 しかし一方で、その努力や認識が「サービス残業」「名ばかり管理職」「過労死」といった社会的な大問題を生み出しました。最近ではそれらの問題や違法行為を「社畜」や「ブラック企業」といった言葉に置き換え、必死に働くビジネス・パーソンを使い捨てる企業を問題視する風潮が定着しつつあります。

 これまでにも、日本は海外から「エコノミック・アニマル」「ワーカホリック」「働きアリ・働き蜂」と皮肉られていましたが、昨今の風潮はその当時のものとは若干性質が異なります。

 というのも、エコノミック・アニマルの頃は、労働者本人はもちろん、国民全体が働くことに意味や価値を見いだし、個人的な大小はあれど、それぞれが使命感や美徳意識を持って仕事に向き合っていました。当時日本人をエコノミック・アニマルと呼んでいたのは、海外のビジネス・パーソンがほとんどでした。

 ところが、現在彼らを「社畜」と皮肉っているのは海外のビジネス・パーソンではなく、その大部分が「(自らはそれほど)働いていない日本人」に変化しました。それが「不景気で正社員になれなかった人」なのか、それとも「就業はしているけれど、適切な仕事ができていない人」なのか、あるいは逆に「余裕を持って仕事をしている人」なのかは定かではありません。

 どちらにせよ「日本のビジネス・パーソンを積極的に皮肉っているのは日本人である」という点に、エコノミック・アニマル当時との違いが見られるようになりました。

 これらの変化が超長期的に世界を襲っている不景気が生み出したひずみであることは想像に難くありません。これを個人的なネタミや国民性としての卑屈根性という視点を除いて考察すると、「これらの変化は、労働者の働き方に関する意識が従来の仕事ありきの精神から脱却しつつあることの裏返し」だと捉えることができるのではないでしょうか。

 こう言い切るのはやや乱暴かもしれませんが、少なくとも戦後70年の間に、国民の中に「人生は仕事だけじゃない。自分の人生や生活を豊かにするために、もっと余裕のある働き方を選んでもいいのではないか」という意識が芽生えたのは確かでしょう。また、その考えが、ある一定の市民権を持ちつつあるということも肌で感じられるようになりました。

心身ともに余裕と豊かさを保つ…

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執筆=坂本 和弘

1975年栃木県生まれ。経営コンサルタント、経済ジャーナリスト。「社員の世代間ギャップ」「女性社員活用」「ゆとり教育世代教育」等、ジェネレーション&ジェンダー問題を中心に企業の人事・労務問題に取り組む。現場および経営レベル双方の視点での柔軟なコンサルティングを得意とする。

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