強い会社の着眼点(第19回)
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公開日:2022.05.26
今回は経営において、非常に大切な目標の定め方についてアドバイスしたいと思います。目標というと、より具体的に定めたほうがいいと考えて、まずは数値を掲げることを考えてしまいがちです。しかしその前に、顧客が求めていることの実現を目標にして、それから数値に落とし込んでいくべきです。
経営方針や経営計画は、どういう会社になりたいかを社内外にはっきりと示す重要なものです。新型コロナウイルス感染症拡大以前は、私の会社はお客さまを毎年冬にグアムへお連れして、経営計画策定の研修合宿を開いていました。
ドラッカーは、会社の事業を定義するときに次の3つを決める必要があると言っています。まずは「目的」。何のためにその事業をやるのかということですね。次に「自社の強み」、そして「市場」を考える、と続きます。
この目的と強みと市場は、別の言い方でも表現できます。目的は、まさにミッションやビジョンや理念という形で皆さんの会社で示されているもの。それから強みと市場に関しては、内部環境や外部環境を分析するということと同義になります。
これらをきちっと理解した上で、ドラッカーは事業の定義は「目的から考えていくべき」であると言っているのですが、ミッションやビジョンや理念というものが会社の中核となり、経営者や社員がきちっと理解していることが前提になります。そうでないと、正しい方向付けができないからです。
日々の経営においては、この目的は目標に落とし込むことになります。このとき多くの会社では、まず数値目標に落とし込もうとしているという問題がよく見られます。しかしそうではなく、マーケティングの目標、つまりお客さまが何を欲していて、自社はそれをどうやって提供するかというところから目標を考え始める必要があります。これこそが真の「お客さま第一」です。
さらに言えば、同時にイノベーションの目標も決めなければいけません。何を大きく変えていくのか。製品を変えていくのか、どう製造方法を変えていくのか、流通を変えていくのか。何でも構いません。やり方を根本的に変え、新しい価値をつくることを検討するのです。
整理すると、すべては目的の設定から始まり、それをベースにしながら自社の強みや弱み、市場を分析する。そして、お客さまが求めているものをいかに提供するかというマーケティングと、その方法をどう変えていくかというイノベーションの2つの視点から考える。十分に検討を尽くして内容が固まったら、ここでようやく数値目標に落とし込むステップに入ります。私はこれが正しい手順であると考えています。
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執筆=小宮 一慶
経営コンサルタント。株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役CEO。十数社の非常勤取締役や監査役、顧問のほか名古屋大学客員教授も務める。1957年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。米ダートマス大学タック経営大学院に留学、MBA取得。1991年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングに従事。1996年に小宮コンサルタンツを設立。
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どんなときでも稼ぐ社長の経営習慣