強い会社の着眼点(第19回)
古いルーターはリスクフル!買い替えポイントは?
公開日:2024.03.22
デジタルツールを使って楽しみ、情報に接し、コミュニケーションを図る――。そうした暮らしが当たり前になった「デジタルネーティブ世代」が、続々と社会に飛び出してきている。物心ついたころにはスマートフォンを扱い、友だちとの連絡から写真の撮影、動画を楽しむことまで、すべてがスマートデバイスで完結してきた世代だ。商品購入も交通機関の利用も、さまざまな決済も、身の回りのことはスマートデバイスがあれば事足りる世界に住んでいる。
教育の現場でもデジタル化は進んでいる。文部科学省の推進で「GIGAスクール構想」で児童・生徒1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備する取り組みが始まっているが、それ以前から教育現場ではタブレットなどを使った学習が多く採り入れられてきた。大学では履修登録はもちろん、リポート提出もスマートフォンやパソコンから行う。コロナ禍の影響もあり、オンライン授業も当たり前になった。「調べ、考え、内容をまとめて発表する」といった一連の思考の流れも、パソコンやスマートフォンが支えている。デジタルネーティブ世代にとって紙が介在する余地は少ないのだ。
これからの社会を支える未来世代にとって、このようにデジタルは生活を支える「ライフライン」だ。一方、社会に出た先の「会社」では、未来世代にとってライフラインとも言えるほど当たり前のデジタルが活用できていないケースもある。シニア世代にとって当たり前のビジネス慣習は、未来世代にとってあたかも“歴史上の出来事”のように感じることがあるかもしれない、と念頭に置きたい。
「長年のビジネス慣習はそう簡単に変えられないよ」という方もいるはずだ。しかし、リアルタイムのコミュニケーションはチャットが中心で、音声通話やビデオ通話をするときは事前にチャットで予約する世代からすると、いきなり誰からかもわからず鳴り出す電話は使いたくないツールだ。
一度に送る文章が長々としたビジネスメールを送られても、対処に困るデジタルネーティブも多いという。この点、すでに企業でも使えるチャット形式のコミュニケーションツールは多く提供されている。中高年の世代もプライベートではLINEなどを活用することがあると考えられるため、社内コミュニケーションの円滑化に向けてチャット形式のツールを導入することで、未来世代とのやり取りがスムーズにできる可能性は高まる。
業務そのものも、デジタル化を進めることが、未来世代とのギャップを埋める方策になる。例えば、社内を見渡した際、伝票や帳票は紙のままではないだろうか。各種の用紙をファイリングして、必要があれば手でめくって探す作業は、デジタル情報に慣れた未来世代にとって非効率に映るケースもある。AIを生かして手書き文字も正確に読み取れる「AI OCR」を使えば、手書きの書類をスムーズにデジタルのデータに変換できる。デジタルデータならば、検索も修正も思いのままだ。書類内容を業務システムに入力する手間も、デジタルデータになっていれば効率化が可能だ。パソコン上の処理を自動化できるRPAなどを活用して、デジタルデータのままでソフトウエアロボットに処理させられるためだ。
もちろん、継続性のある業務は、何から何までデジタルやスマートフォンの活用というわけにはいかない。それでも、業務の在り方を少し見直して、ICTツールを介在させることによって効率化できる点を探してみることは大切な発想だ。せっかく採用した未来世代の若い力が、社員同士のコミュニケーションロスや非効率な業務によって短期離職してしまうことは本当にもったいない。事業継続や継承を考えても、ICTやデジタル化による変革を柔軟に採り入れていくことは助けになるだろう。
デジタルネーティブ世代については、ネット上などでも先輩世代とのさまざまな差異が話題になっている。とは言っても、現在のいわゆる「アラカン世代」はバブル期に「新人類」として昭和のオヤジさんたちから煙たがられてきた経験をした方もいるだろう。時代が変化すれば、その時の使うツールも変わり、コミュニケーションや仕事の仕方も変わる。さまざまな差異を受け止め、楽しみつつ、相互に理解を進められる会社ならば、世代間の断絶を防ぐことができそうだ。
相互理解のベースには、「多様な価値観」を育みつつ、未来社会を展望できる社風醸成も必要だ。年齢や性別、属性などによって、コミュニケーションが阻害されることのない心理的安全性の高い職場ならば、多様な背景の人材が気持ちよく仕事ができる。開かれたコミュニケーションを社内に浸透させるためには、情報のデジタル化が基本になる。またその上で平易なコミュニケーションをいつでもどこからでもできるような環境も必要となるだろう。ICT環境を整備することは、単に書類をデジタル化して目の前の業務を効率化させるだけではなく、未来世代に次世代を託すための準備をしていることにつながる。
執筆=岩元 直久
【MT】
デジタル化に向けた次の一手