税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ(第80回)令和5年度税制改正で注目の“1億円の壁”

経営全般 資金・経費

公開日:2023.01.13

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 2022年12月13日の新聞各紙に「政府・与党は、年間の所得が30億円を超えるような超富裕層を対象に課税を強化する検討に入った。所得格差を解消するため、富裕層ほど所得税の負担率が下がる『1億円の壁』の是正を目指す(毎日新聞)」といった文面が掲載されました。

 これは令和5年度税制改正大綱に係る報道です。超富裕層といわれる全国で200人から300人の「超」のつく富裕層には2025年度の所得税から課税強化が図られる予定です。

 ここでいう「1億円の壁」とは、所得税などの負担率が所得1億円を超えると急激に下がってくることをいいます。税制調査会でも問題視され、その原因は富裕層ほど株式譲渡益など分離課税(税率が20.315%(住民税、復興特別税含む)に固定されている)となる金融所得の割合が多くなるため全体の所得に対する税の負担率が低下するという問題です。

 所得税などは所得が高くなるほど税率が高くなる累進課税を採用しており、住民税などを含めると最高税率は55%になります。

 しかし上場株式の譲渡益などについては申告分離課税という制度が利用できるため、この制度を利用すると前述のように「金融所得×20.315%」の納税だけで課税が完了するわけです。

出典:内閣府 「第19回税制調査会 財務省説明資料(個人所得課税)」

 

 超富裕層に対する課税強化の内容は、「株式譲渡益のみならず、土地・建物の譲渡所得や給与・事業所得などを合算した所得金額(基準所得金額)から特別控除額(3.3億円)を控除した金額に、22.5%を乗じた金額が納めるべき所得税の金額を超過した場合に、その超過した差額を追加的に申告納税することとする」としています。

【本来の所得税額に追加する税額】
(基準所得金額(※1)-3.3億円)×22.5%-基準所得税額(※2)=追加納付する税額

(※1)基準所得金額:その年の所得税について総合課税および分離課税の所得を合計した所得金額

(※2)基準所得税額:基準所得金額に係る所得税の合計税額

(※3)上記計算にはNISA制度などの非課税所得は対象から除かれています

 特別控除額が3.3億円でよいのかは今後の判断に任せることになりますが、申告分離課税制度によって超富裕層の所得税などの負担率が低下する問題も、一応の解決策を示している点で一定の評価はできるものと思われます。

富裕層に対する調査…

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