せっかくスマホを5G対応の最新機種に替えたのに、使う機能は以前と同じ。そんなIT初心者の社長にも、分かりやすく理解できるようにITキーワードを解説する本連載。今回はスマホどころか、社会活動が大きく変わるかもしれない「6G(シックスジー)」だ。
「社長、大阪・関西万博では6Gによって実現される社会・生活イメージを実感できる展示があるそうですよ。楽しみですね」(総務兼IT担当者)。
「6Gだって?ついこの前5G対応のスマホに変えたばかりなのに、もう次の世代になるのか」(社長)
「6Gになると地上だけでなく、空や海、宇宙にまで移動通信の範囲が広がる可能性もあるんですよ」
「スケールの大きな話だな。6Gで何がどう変わるのか、解説を頼むよ」
社会活動が大きく変わる6G
6Gとは、現在普及している5Gに続く移動通信システムのことです。5Gの次の世代を意味する「Beyond 5G」とも呼ばれ、2030年代の実用化に向けて世界各国で研究開発が行われています。6Gでは通信の範囲が空や宇宙などに拡張され、衛星通信や高高度基地局を活用してこれまで地上の基地局設置が困難だった山間地との無線通信を可能にするなど、社会活動が大きく変わると期待されています。
6Gによって多様な社会変革が起こることが期待される
Q 5Gと6Gの違いは何ですか。…
6Gは2030年代に導入が見込まれ、あらゆる産業や社会活動の基盤となることが期待されています。無線(移動通信)だけでなく、有線、無線、地上(陸)、非地上系(空、海、宇宙)などを含む統合的なネットワークの研究開発が進んでいます。
現行の5Gの特徴である高速・大容量通信、低遅延、同時多数接続の各機能を進化させるとともに、消費電力のコスト低減、通信エリアの拡張、超高信頼通信といった機能の実現が期待されています。そのためには、超低消費電力を実現するデバイスの開発や超高速・大容量を実現するオール光ネットワーク技術の進化なども必要です。
5Gの導入後に高精細映像や遠隔医療、自動運転技術などが進んだように、6Gの特徴を生かす技術やアプリケーションなどの開発が進められています。
Q 6Gが期待される理由は何でしょうか。
政府は、サイバー空間とフィジカル(現実)空間を融合させたシステムにより、経済発展と社会課題の解決を両立する人間中心の社会として「Society 5.0」を提唱しています。6GはこのSociety 5.0の中核的な機能を担い、国民生活や経済活動の社会基盤となることが見込まれているため、実現が期待されています。
5GでもIoTの活用が進んでいますが、6Gではドローン、ロボット、センサーなどが主要なデバイスとなり、産業のワイヤレス化によって製造業や物流業などの経済活動が大きく変わる可能性があります。
Q 6Gの実現に向けた課題はありますか。
6Gの実現に向けては、技術的な研究開発はもちろん、国際標準化への対応や社会的なニーズの把握など多くの課題があります。これらの課題を解決しながら前へ進めていくことになります。
新技術の恩恵を受けるには、利用者側の設備投資も必要です。6Gでは5Gの長所がさらに進化すると見られ、この変化に対応するにはオフィスや工場・倉庫内などの通信環境を整備しておくことが重要です。例えばオフィスのWi-Fiを高速・低遅延・同時多接続といった特徴のあるWi-Fi6/6Eに切り替えることにより、快適なビジネス環境が可能です。
また、建設業や農業、製造業の現場では、企業や自治体が独自に5Gシステムを構築するローカル5Gの導入も進んでいます。IoT機器やAIなどと組み合わせることで、作業の自動化や遠隔操作、設備の監視などさまざまな用途で活用できます。こうした最新技術の利活用を検討する際は、IT事業者に相談するといいでしょう。
「社長、6Gのことを何となく分かっていただけましたか。これからの社会が楽しみですね」(総務兼IT担当者)
「スマホの電波が届きにくい山あいの渓谷で釣りをするのが楽しみだったのに、6Gになれば、どこでもつながるのか。便利になるとはいえ、少し面倒でもあるな」(社長)
「どこにいても連絡が取れるのは素晴らしいことだと思いますよ。それより、5G対応のスマホには慣れましたか?」
「まだ買い替えたばかりだからなぁ。5Gも使いこなせないうちに6Gの時代になったら大変だし、早く慣れないと」