いま話題のトレンドワードをご紹介する本企画。第22回のテーマはスッキリわかる「イクボス」です。言葉の意味、そしてその背景や関連する出来事を解説していきます。みなさまのご理解の一助となれば幸いです。
この「イクメンプロジェクト」の「イクメン」とは、子育てを楽しみ自分自身も成長する男性、または、将来そんな人生を送ろうと考えている男性のこと。「イクメンがもっと多くなれば、妻である女性の生き方が、子どもたちの可能性が、家族のあり方が大きく変わっていくはず。そして社会全体も、もっと豊かに成長していくはず」と「イクメンプロジェクト」には書かれています。
そんな「イクボス」のいる職場は、「イクメン」のみならず、誰しも働きたいと思うでしょう。イクボスは男性の育児だけでなく、女性の出産や子育て、親の介護などにも深く理解してサポートし、皆が働きやすい職場づくりを先だって進め、皆を幸せな方向に導いてくれるはず。そんな「イクボス」は、理想の上司の姿の1つでもあります。上司のみなさん、今からでも遅くはない。すぐに「イクボス」をめざしましょう。
以前、本連載の「ポイント解説!スッキリわかる 育児・介護休業制度」において、厚生労働省が「人材不足解消のカギは仕事と家庭の両立支援」というコンセプトに基づき、出産・育児・介護などによる離職を防ぎ、男女ともに仕事と家庭を両立するべく、数々の取り組みを行っていることを中心に解説しました。
この「人材不足解消のカギは仕事と家庭の両立支援」という考えのもと、行われている厚生労働省の試みの1つが「イクメンプロジェクト」。プロジェクトは「育てる男が、家族を変える、社会が動く。」というキャッチフレーズを掲げ、イクメン・イクボスを後押ししています。なお、サイトでは男性の育児に関する情報が「(男性の育休に取り組む)企業・管理職の方」「(育休を取りたい)従業員の方」という2つの立場に分けて情報が提供されています。「育児・介護休業法」の2025年4月からの改正など、育児・介護関連法律の最新情報も提供されています。
「(男性の育休に取り組む)企業・管理職の方」カテゴリーは、さらに「企業のご担当者の方」「企業の管理職の方」に分けて情報提供され「イクボス」は「企業の管理職の方」向けの内容として提供されています。冒頭の囲み部分でも紹介しましたが、「イクボスとは?/イクボス宣言とは」で掲げられている「イクボス」の定義は下記のとおりです。
イクボスとは?
イクボスとは、部下の育休取得や短時間勤務などがあっても、業務を滞りなく進めるために業務効率を上げ、仕事と私生活を両立できるように配慮し、自らも仕事とプライベートを充実させている管理職のこと。
職場のメンバー全員に私生活の時間を持てるようにし、限られた時間で成果を出す職場へ生まれ変わらせる、そんなイクボスが求められています!
イクボスになると・・・
・イクボスによるマネジメントにより、 部下一人ひとりが抱える事情を理解し、それぞれの部下の成長をサポートできる!
・自分自身を含め、メンバーの誰もがワーク・ライフ・バランスを充実させられる働き方を実現!
その結果・・・
・育児・介護など、さまざまな事情を抱えるチームメンバーが、それぞれ持てる能力を最大限発揮できる組織へ!
・部署のメンバー同士、互いにサポートし合うことで、チームの団結力がUP!
・突然の介護や個人の事情等があっても、支え合う組織風土により離職を防止!
・相手を理解し、互いを思いやる気持ちが醸成されることで、パワハラ、セクハラ、妊娠・出産等に関するハラスメントも発生しにくい組織へ!
などと良い事ずくめ。
取組事例や研修資料・研修動画で学んで、実践し、あなたもイクボスになりましょう!
このことからも、厚生労働省の「イクメンプロジェクト」は、「イクメン」「イクボス」を推奨、働く男性、特に管理職の男性を啓発することにより、仕事と家庭の両立を支援し、人材不足解消を企図するもの、といえるでしょう。引用の最後「取組事例や研修資料・研修動画で学んで」とあるとおり、「イクボス取組事例紹介」や、研修用資料、そして研修動画(YouTubeの「イクメンプロジェクト事務局」)などで学ぶとよいでしょう。また、「男性の育児休業取得促進研修動画“今すぐ実践!男性の育児休業”概要&使用方法」も参考になるでしょう。
企業に与えるインパクトは?
「企業の担当者の方」へのコンテンツは、「育児休業制度とは」「育児休業等についてよくある質問」「イクメン企業アワード」「企業取組事例紹介」「ご当地イクメン&イクボス取り組み」「イクメン企業宣言する/見る」など。育児休業制度やイクメンプロジェクトへの取り組みを推進できるコンテンツで構成されています。
この一方、「企業の管理職の方」向けコンテンツは「イクボスとは?/イクボス宣言とは」「イクボスアワード」「イクボス取組事例紹介」「イクボス宣言する/見る」「ご当地イクメン&イクボス取り組み」という、「イクボス」取り組み用のコンテンツとなっています。「イクボスとは?/イクボス宣言とは」に続き、「イクボス宣言とは」を見ていきましょう。
イクボス宣言とは
イクボス宣言とは、自らがイクボスであること、イクボスになろうとしていることを宣言するものです。
イクメンプロジェクトでは、この「イクボス宣言」を募集しています。
以下のような「イクボス宣言」を投稿し、イクボスの輪を広げていきましょう!
・今、イクボスの方が心掛けていること
・これからイクボスになろうと考えている方が、実施しようと考えていること
また、「イクボス宣言」をする方のために、「イクボス宣言書」のフォーマットを公開しています。
あなたの「イクボス宣言」を記載して、ぜひ投稿してください!
企業の管理職が「イクボス宣言」を行うことは、先ほど引用した「イクボスとは」を実現する宣言であり、皆にとって「良い事ずくめ」の結果を得ることを誓うことになります。「イクボス宣言書式例(パワーポイント)」には、「私は、イクボスになることを、ここに宣言します。部下の育児・介護・WLB向上を応援するため、以下の事項を実施することを約束します」という宣言のもと、「自らイクボスとして実施しようとしていることを記入」するシステムになっています。ちなみに、サンプルでは下記のような宣言をしています。このサンプルや、今までの「イクボス宣言」を参考に、自分の言葉で「宣言」していきましょう。
・社員が家族との時間・自分の時間を作れるよう、働き方改革に取り組みます。
・誰もが休みやすい環境をつくり、社員の育児休業取得率100%を目指します。
・無駄に残業せず、率先して早く帰ります。
管理職がこうした「イクボス宣言」を行い、率先してイクメンプロジェクトを進めていけば、皆が過ごしやすく、手を取り合って協力していける最高の職場になっていくでしょう。なお、イクボス宣言は「イクボス宣言する/見る」から公的に登録できるので、宣言の内容が書けたら、ぜひ登録を行いましょう。もちろん、今までの宣言も見ることができます。「イクボスアワード」は2020年で止まっていますが、イクボス宣言は、現在(2024年12月、執筆時点)でも登録者がみられます。皆の宣言も参考に、熟考し推敲(すいこう)して宣言を登録しましょう。登録後は企業の担当者、育休を取りたい従業員、その他のメンバーにも活動を広めていきましょう。この「イクボス宣言」を行うことで、素晴らしい未来が作れるに違いありません。
これから予測される課題は?
先ほどの「イクボスとは」にある「その結果・・・」はグッとくる内容ばかり。そんなステキな職場なら筆者も一生働き続けたいと思います。こうした環境を先だって作っていける「イクボス」は、「上司の理想形」の1つといえるでしょう。
誰もが働きやすい、育児や介護の休暇が思い通りにとれる、さまざまな事情を抱えるメンバーが能力を発揮できる、そうした目的のために、イクボスは、ITの力を借りるのが早道と、理解しているケースも多いはず。自動化、仕事のマニュアルやWikiの作成、生成AIの活用など、大いに賢く取り入れていきましょう。それには、自力で考えをまとめ、Webなどでソリューションを検索するのも手ですが、最寄りのベンダーや公的機関などの力を借りると効率的です。
「人材不足解消のカギは仕事と家庭の両立支援」という厚生労働省の考え方は、誰しもわかりやすい方向です。育児を行う男性にスポットを当て、さらにはそのボスを大きく後押しする、というのはいいアイデアです。尊敬できる、誰しもがそうなりたいと思うような「イクボス」を目指すことで、周囲の人々も幸せになるという「良い事ずくめ」な未来を作っていきましょう。
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