11月1日に第4次安倍内閣が発足。同日の記者会見で安倍首相は、補正予算編成の方針を明らかにしました。補正予算には、子育て支援に加えて、企業の生産性向上に向けた施策も盛り込まれると報じられています。
これまでも、中小企業の設備投資経費を補助する「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」などが補正予算で行われてきました。その経験を踏まえ、今回の補正予算でも生産性向上に向けた施策が盛り込まれることを想定し、中小企業側でも補正予算・補助金を有効活用できるように準備を進めておくべきでしょう。本記事では、これまでの補正予算で行われてきた補助金の仕組みを解説し、申請の際に協力を仰ぐべき機関を紹介します。
補助金申請には「認定支援機関」の確認書が必須
中小企業向け補助金の代表格である革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金(以下、ものづくり・商業・サービス補助金)は、中小企業が生産性向上を目的とした設備投資を行った際、経費の一部を補助するものです。年度や業種によって多少のばらつきはありますが、補助金額の上限は1000万円から3000万円に設定されています。
企業の設備投資には多額の資金が必要となります。その点で自己資金に乏しい中小企業にとって、ものづくり・商業・サービス補助金の存在はありがたい限りです。しかし、この補助金は、補助金を得たい企業だけでは申請手続きはできません。申請に当たっては、「認定支援機関」の確認書が必要となります。
認定支援機関とは、国が認定した中小企業支援能力を一定以上有している機関のことを指します。2017年10月31日時点では、金融機関、商工団体、税理士、民間コンサル会社などの2万7203機関や企業などが認定されています。
補助金を申請するに当たって、認定支援機関から確認書をもらうこと自体は難しいことではありません。しかし、認定支援機関の支援能力は均一ではなく、ばらつきがあるのが実情です。さらに認定支援機関によっては確認書を発行するだけで、事後フォローまでは行わなかったり、高額な着手金を要求したりするようなところまであるといわれています。
支援能力が高い認定支援機関と組むにはどのようにすればよいか、という疑問の答えは、前回のものづくり・商業・サービス補助金の採択データが参考になります。
補助金採択案件の半数以上は金融機関が支援している…
前回は、2017年3月17日に6157件の採択データが公表されています。採択データには、補助金を申請した企業名の他にタッグを組んだ認定支援機関名も含まれています。このデータによって認定支援機関の能力を判断することができます。
認定支援機関の中には、金融機関から民間コンサルティング会社までさまざまな業態が含まれていますが、ものづくり商業・サービス補助金の採択6157件のデータから見ると、その比率は銀行が33.0%、信用金庫・信用組合が24.7%、商工会・商工会議所が12.7%となっています。この3種が全体の7割を占めます。
銀行、信用金庫、信用組合といった金融機関が支援した案件で、全体の半数以上を占めています。近年、金融機関では融資業務だけではなく顧客企業のコンサルティング業務にも力を入れていますが、その取り組みが数字になって現れたものと推測できます。次に、西日本の地域別に採択件数の数の多い金融機関を紹介していきます。
補助金申請に強い金融機関はどこか
金融機関は都道府県の枠を越えて越境支店を設置しています。都道府県単位ではなく都市圏や経済圏単位で活動していますから、代表的な都市圏である京阪神、東瀬戸、北九州・福岡の3地域から金融機関の取り組み状況を分析していきます。
政令指定都市を抱える大阪府、京都府、兵庫県の京阪神地域の補助金採択は973件。このうち金融機関の支援案件は528件です。金融機関の中で最も件数が多いのは池田泉州銀行の63件、次いで京都銀行の46件、大阪シティ信用金庫の45件、京都信用金庫37件、尼崎信用金庫33件と続きます。
瀬戸内海を挟んだ岡山県、広島県、香川県の東瀬戸地域では、補助金採択は317件。このうち金融機関の支援案件は179件です。金融機関の中で最も件数が多いのは、中国銀行の40件、次いで広島銀行の22件、もみじ銀行の17件、観音寺信用金庫11件、トマト銀行8件と続きます。
福岡県、大分県、佐賀県、山口県で構成される北九州・福岡地域では、補助金採択は430件。このうち金融機関の支援案件は208件です。金融機関の中で最も件数が多いのは、山口銀行の43件、次いで福岡銀行の20件、大分銀行の18件、西日本シティ銀行17件、西京銀行14件と続きます。
補助金を活用するのにも資金は必要
補助金申請に当たってこうした実績の金融機関とタッグを組むのは、採択可能性を上げるだけではなく、採択後の資金繰りを安定させていく上でも効果的です。
前回の補助金で、補助上限は3000万円、補助率は2/3でしたが、これは採択と同時に補助金が振り込まれるわけではなく、事後精算で振り込まれます。例えば、3000万円の設備を導入したとすると、補助金額は導入費用の2/3の2000万円となります。そして、補助金が振り込まれるのは、設備の導入・支払いが終わった後のタイミングです。補助金の取得に成功しても、それを受け取る前に3000万円の支払いを済ませるだけの資金が必要になるのです。
金融機関とタッグを組むことで、補助金が振り込まれるまでの間の資金を「つなぎ融資」というかたちで工面してもらうといった支援も期待できます。このような点から、認定支援機関に占める金融機関の割合が多くなっているようです。せっかく補助金の採択を受けたのにもかかわらず、つなぎ資金不足で設備投資に着手できないという事態に陥るのを避けるためにも、補助金申請に当たっては金融機関の協力を仰ぐべきでしょう。