ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2022.07.05
従業員の健康を守る知識や規則を紹介する連載の第4回は、特殊健康診断についてです。高圧室内業務や潜水業務のように業務内容が健康を損なう恐れがあったり、鉛や有機溶剤のような有害物を取り扱ったりする業務に就く労働者に対しては、通常の労働者以上にその健康管理に配慮しなければなりません。
労働安全衛生法は、働く人の健康を損なう恐れのある業務のことを「有害な業務」という言葉で表現しているのですが、このような業務を行っている労働者については、特殊健康診断を行わなければならない旨を規定しています(図表1参照)。
■図表1 特殊健康診断(労働安全衛生法第66条第2項、第3項)
1.事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行わなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。
2.事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、歯科医師による健康診断を行わなければならない。
●事例1 特殊健康診断をする時間の賃金
先日A社に労働基準監督署の監督官が調査に来て、「特殊健康診断を時間外に行っているようだが、時間外に行うのであれば割増賃金を支払うように」という指導を受けました。A事業所は、定期健康診断も時間外に行っていて賃金を支払っていません。A事業所は、一般健康診断と特殊健康診断で賃金の扱いが違うことに納得できないでいます。
一般健康診断は、一般的な労働者の健康の確保を目的として事業者にその実施義務を課したものです。業務遂行との直接の関連において行われるものではありませんから、受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべきものとされています。つまり、この時間について賃金を支払うも支払わないも会社の裁量となります(ただし、厚生労働省は、受診に要した時間の賃金を支払うほうが望ましいとしています)。
一方、特殊健康診断は、業務の遂行に関して、労働者の健康確保のため当然実施しなければならない健康診断ですから、特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間であり、賃金の支払いが必要となります。つまり、特殊健康診断が時間外に行われた場合には、割増賃金の支払いが必要となります。
・有害業務従事中の特殊健康診断
事業者は、健康を損なう恐れのある業務(労働安全衛生法のいう「有害な業務」)に従事する労働者に対し、雇い入れの際や、そのような業務への配置替えの際、その後定期に、医師による特別な項目についての健康診断を行わなければなりません。特殊健康診断を行わなければならない「有害業務」と実施時期については、図表2の通りです。
■図表2 特殊健康診断を行わなければならない「有害業務」と実施時期
・有害業務従事後の特殊健康診断
事業者は、ベンジジンとその塩、塩化ビニルなどの製造や取り扱う業務、石綿などの製造、その取り扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務などの有害な業務に従事させたことのある労働者で、現に使用しているものに対し、6カ月以内ごとに1回(一定のものについては1年以内ごとに1回)定期に、医師による特別の項目についての健康診断を実施しなければなりません。
・歯科医師による健康診断
事業者は、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、フッ化水素、黄りんその他の歯やその支持組織に有害な物のガス、蒸気、粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者に対し、その雇い入れの際、その業務への配置替えの際、その業務に就いた後6カ月以内ごとに1回定期に、歯科医師による健康診断を実施しなければなりません。
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執筆=嘉瀬 陽介
1963年、秋田県生まれ。横浜国立大学経営学部卒業。2003年、横浜で社会保険労務士事務所を開業。2006年、特定社会保険労務士の附記を受ける。社会保険労務士の業務と並行して児童文学の執筆をしている。趣味はスポーツをすることとドラマを見ること。
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