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公開日:2016.10.31
江戸時代、各藩が将軍や朝廷に差し出した献上品。地元の特産からえりすぐったその品々は、藩にとって自慢の逸品でした。それらの多くは時代とともに姿を消していきましたが、中には現代にも姿が残るものがあります。
この連載では、そんな今に伝わる逸品を「将軍様のお気に入り」として、当時のエピソードとともに紹介していきます。ぜひ出張した際に購入して、取引先や部署のお土産にしてください。
第1回は、熊本県に伝わる銘菓「加勢以多(かせいた)」です。
熊本市に、「水前寺成趣園」(すいぜんじじょうじゅえん)という、東海道五十三次の道のりを模して造られた風雅な庭園があります。ここには、細川家の初代・細川幽斎が、皇族の歌人である八条宮智仁親王に、古今和歌集の解釈の奥義を伝授したと伝わる、由緒正しき建物「古今伝授之間」が建っています。
成趣園の庭園は、この古今伝授之間から眺めるのが最も美しいといわれていますが、その絶景を眺めながら抹茶と共にいただけるのが、今回紹介する銘菓「加勢以多」です。
加勢以多という一風変わった名前は、実はポルトガル語が由来。「マルメロ砂糖漬けの箱」という意味の「カイシャ・デ・マルメラーダ」がなまり、「かせいた」になったといわれています。
マルメロとは、洋梨やかりんに似た西洋の果物のこと。加勢以多は、このマルメロのジャムを寒天で固めたものを、もち米で作った薄皮で挟んで板状に切ったお菓子です。
食べてみると、ざらりとした舌触りの薄皮と軟らかいジャムが口の中で溶け合い、甘酸っぱい爽やかな味わいが広がります。和菓子といえばようかんやまんじゅうなど、餡(あん)を使ったものが多い中、加勢以多は果物の甘さが特徴的です。当時としては珍しかったことでしょう。
この銘菓は、幕末まで毎年将軍家に献上されていたようです。細川家の出来事を年代順に記した編年史「続跡覧」に、江戸への毎年の献上品を列記した項目があります。正月には桑酒と浜塩鯛、二月には砂糖漬梅と銀杏など豪勢な献上品が並ぶ中で、四月の献上品として干鯛と一緒に「加世以多 一箱」の文字を確認することができます。春の訪れとともにやってくる異国の味を、将軍も楽しみにしていたのではないでしょうか。
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執筆=かみゆ歴史編集部(www.camiyu.jp)
歴史コンテンツメーカー。歴史関連の書籍や雑誌、デジタル媒体の編集制作を行う。ジャンルは日本史・世界史全般、アート、日本文化、宗教・神話、観光ガイドなど。おもな編集制作物に『日本の山城100名城』(洋泉社)、『一度は行きたい日本の美城』(学研)、『戦国合戦パノラマ図鑑』(ポプラ社)、『系図でたどる日本の名家・名門』(宝島社)、『大江戸今昔マップ』(KADOKAWA)、『国分寺を歩く』(イカロス出版)など多数。お城イベントプロジェクト「城フェス」の企画・運営、アプリ「戦国武将占い」の企画・開発なども行う。
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