ロングセラー商品に学ぶ、ビジネスの勘所(第21回)「551蓬莱の豚まん」の大阪らしさと全国的知名度

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公開日:2020.08.25

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 食い倒れの街・大阪には名物がいくつもありますが、出張・旅行のお土産の定番となっているのが「551」のトレードマークでおなじみ、株式会社蓬莱の「豚まん」です。新大阪駅の新幹線乗り場構内にある蓬莱の店舗では、スーツ姿のビジネスパーソンが行列していることも珍しくありません。蓬莱の「豚まん」が発売を開始したのは、1946年のこと。70年以上にわたって愛され続けている、大阪発のロングセラー商品です。

 1945年、台湾出身の羅邦強(ロー・パンチャン/故人)が2人の仲間と共に大阪・難波で「蓬莱食堂」を開業したのが蓬莱の始まりです。当初、蓬莱食堂ではカレーライスなどを提供していました。難波周辺は空襲で焼け野原同然となり、食堂のような店もほとんどありません。食べ物に困っている人が多く、店には次々に人が訪れました。蓬莱は豚まんの専門店のように思われていることもありますが、現在も難波の本店などはコース料理もある中華レストランとして営業しています。

 店は順調にスタートしましたが、難波周辺も少しずつ復興を始め、食べ物を提供する店も増えていきました。何か、店の看板となるようなメニューはできないものか……。

 そこで頭に浮かんだのが、神戸の元町で人気を集めていた豚饅頭でした。元町の豚饅頭は、中国の包子(パオズ)を日本人向けにアレンジしたものです。手軽に食べることができ、その上腹が膨れる、いかにも大阪人の好みに合いそうではないか……。こう考えた羅邦強と仲間は、自分たちならではの豚饅頭づくりに着手します。

 まず大きさ。神戸の豚饅頭は、大きさが小ぶりで小籠包(ショウロンポウ)に近いものでした。それを大阪人の好みに合うように大きくしました。1個だけでも腹が満たされるサイズです。具は、豚肉とタマネギのみ。豚肉は細かくミンチせず、サイコロ状に大ぶりにカットして食べ応えを出しました。それを日本人の好みに合うように味付けし、ボリューミーかつジューシーな豚饅頭を完成させました。

 そして名前を豚饅頭ではなく、親しみやすい「豚まん」としました。関西では、一般的に肉といえば牛肉のこと。「肉まん」にすると、牛肉の入った饅頭(まんじゅう)というイメージを持たれることがあるということで「豚まん」にしたという理由もあります。

豚まん人気を後押しした店頭での実演販売

 1946年、「豚まん」が完成し、食堂メニューとして販売するとたちまち人気を博しました。その後、豚まん人気にさらに火をつけたのが、1952年から始めた実演販売です。セイロから湯気が立ち上り、ホカホカの豚まんができる様子を店頭で見た人たちが、豚まんをこぞって買い求めました。それ以降、百貨店などにテイクアウトの専門店を出店し、そこでも実演販売を実施。土産物としての豚まんが大阪で定着し、ロングセラーへの道を歩み始めます。

 ちなみに、蓬莱に「551」という名前が付くようになったのは1960年代に入ってから。その頃、羅邦強は外国産の「555(スリーファイブ)」というタバコを愛飲していました。その数字を目にした羅邦強は、当時の本店の電話番号が64-551番だったこともあり、「味もサービスもここ(55)が一番(1)をめざそう」との意味を込めて「551」と付けたということです。

 難波の小さな食堂から始まった551蓬莱の豚まんは、今や全国的な知名度を誇るようになりました。しかし、蓬莱の直営店は関西エリアに約60店舗しかありません。理由は、工場から150分圏内でないと生地に使っているイースト菌が最適の発酵状態にできないから。出店の依頼は多く持ち込まれますが、条件に合わない出店はしていません。

その土地らしさも人気の秘密…

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執筆=山本 貴也

出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。

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