税理士が語る!経営者が知っておきたいお金の話(第1回)知らなかったじゃ済まない!節税・脱税の違いとは

業務課題 資金・経費

公開日:2015.07.01

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 景気もよくなったか、よくなっていないかわからない今日このごろ、企業のお金にまつわるいろんなニュースを目にし、耳にします。「過去最高益」とか「増収増益」といった明るい話題もありますが、だいたいが「脱税」や「所得隠し」といった、負の要素をもった話題であることが多いです。

 しかし、この「脱税」や「所得隠し」といったワードは、いったい何がどう違うのでしょうか。どちらも“ズルをする”ということというは何となく分かりますが、たとえば「脱税」と「節税」とは、何が違うのでしょうか。

 この記事では、「所得隠し」や「節税」「脱税」といった税金に関するワードを詳しく解説します。ついつい脱税とみなされるようなことをしてしまっても、知らなかったではすみません。どこに気をつければいいのか、ポイントをお伝えしましょう。

「脱税」と「節税」。その違いはどこに?

 まずは、「脱税」と「節税」について解説することにいたしましょう。

 法律による定義から見ていくと、「脱税」は「課税要件の充足の事実を全部または一部秘匿する行為」、「節税」は「租税法規が予定しているところに従って税負担の減少を図る行為」とあります(金子宏『租税法』[弘文堂刊]117、118頁より引用)。ただ、これだとあまりにも法律用語すぎて、大学や大学院で法学部だった、または法学を専攻されていた方以外の方では、なかなか分かりづらいかもしれません。

 簡単にいえば、「脱税」は「違法な手段で納税額を減らそうとする行為」を指します。たとえば売上において本来の金額よりも少なく計上したり、架空の経費を計上したりすることで所得を減らすことで、本来支払うべき税金を減らすことを言います。

 この、意図的に本来の売り上げよりも少ない額を所得として計上して申告する行為が、俗にいう「所得隠し」であり、脱税にあたります。また意図的ではないにしろ、処理のミスによって結果的に脱税をしてしまうといったケースもありますが、これは「申告漏れ」にあたります。

 脱税は法に反する行為ですので、当然それに対する罰則が設けられています。事例によって適用される法律が異なるため、罰則の程度も事例ごとに異なることが多いです。罰則の一例としては、本来支払うべき税金に加え、納税が遅れたことに対する延滞税や、収入を申告していなかったこと対する過少申告加算税などが追加で課されたりします。このように追加で支払わなければならない税金が積み重なると、結果的に、隠した売上、経費とそのまま同じ金額程度を納税することとなるのです。さらに悪質なケースなどでは国税犯則取締法が適応され、刑事事件にまで発展することもあります。

 一方で「節税」というのは「法で許されている通常の行為の範囲で納税額を軽減する」行為を指します。具体的には、住宅ローン控除や医療費控除など、政策として認められた方法に則り、減税する効果をいいます。

 たとえば、みなさんの通勤費は、所得税の計算対象から外れています。給与として支払われるものには税金がかかりますが、通勤費として支払われるものには課税されないのです。

 なかには通勤にかかる費用を通勤費として支払わず、給与の中に含めて従業員に支払っている会社もあるかと思います。しかし会社が支払う金額は同じでも、全額を給与として支払うか、給与と通勤費とに分けて支払うかによって課税額が変わり、従業員が受け取る金額が変わってくるのです。従業員にとっては、所得税額が少ない方が嬉しいのは言わずもがなでしょう。

 通勤費を通勤費として支払うことには、会社側にもメリットがあります。…

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神谷 拓摩かみや会計事務所

税理士

大阪府吹田市出身。2002年3月履正社高校卒業、2006年3月慶應義塾大学商学部卒業。その後6年間、税務会計事務所、税理士事務所にて税務、会計事務に従事する。2014年6月に独立、かみや会計事務所開業。

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