独立行政法人情報処理推進機構(以下:IPA)から2024年9月17日に新たな注意喚起を促すメッセージが発信された。パソコンの画面全体に偽のメッセージが表示され、操作不能になる新たなサイバー攻撃が増加しているという警告だ。今のところ手口の詳細や原因、目的などは不明な部分が多いとされる。新たな脅威に対してどう立ち向かえば良いのか、具体的な対応を考えてみたい。
パソコンが突然操作不能になる新たな攻撃
IPAが注意喚起を促した新たなサイバー攻撃は、パソコンを使用中に突然画面全体に偽のメッセージが表示され、キーボードやマウスの操作を一切受け付けなくなるというものだ。電源を入れ直し、再起動しても状況が変わらないという相談も寄せられている。IPAではこの攻撃を「操作不能の偽メッセージ」と呼んでいる。
これまでも偽のメッセージにより詐欺行為をするサイバー攻撃は発生していた。インターネットを利用中に「このパソコンはウイルスに感染しています」という偽のセキュリティ警告が表示され、電話番号とともに「すぐにサポートに電話してください」と表示されるというものだ。
不安に駆られたユーザーがその番号に電話をすると、サポート料やウイルスの除去費用を電子マネーで支払うように要求される。個人だけでなく法人のパソコンでもこの攻撃を受ける場合があり、IPAでは注意喚起を促すとともに、偽のメッセージが表示された際の対応を体験できるサイトまで用意して、サポート詐欺の防止に努めてきた。
IPAは、不審な広告やサイトを調査した結果、アダルトサイトの動画再生ボタン、偽のセキュリティ警告通知などをクリックすると、この攻撃を受ける要因になると指摘している。つまり、いずれも「クリック」という行為が次のアクションを引き起こす原因とされていた。
しかし、今回の「操作不能の偽メッセージ」は「クリック」という行為をしなくても攻撃を受ける。何らかのソフトやサービスをインストールしたことが原因と推定されているが、まだ特定できていないのが現状だ。セキュリティ対策ソフトでは検知できない場合が多く、偽の画面を表示するプロセスや影響などについては従来のサポート詐欺とは全く異なるという。
原因不明の攻撃にどう対処していけば良いのか…
「操作不能の偽メッセージ」の攻撃を受けたパソコンは、「今すぐマイクロソフトサポートに電話してください」といった偽の警告画面が表示され、何も操作できなくなってしまう。しかも、パソコンが意図しないさまざまな影響を受けていることが確認されている。
攻撃を受けるとパソコンが遠隔操作されたり、Windowsのシステム設定が改ざんされたり、不審なプログラムやバッチ処理がスタートアップに登録されていたり、偽のサポート電話番号が書かれた偽のセキュリティ警告画面が壁紙に設定されたりする。放置するとさらなる被害が発生する恐れがある。
こうしたやっかいな攻撃に対して、IPAでは次のような対処方法を紹介している。万一のために覚えてきたい。
まず、偽の警告が表示されたらすぐにネットワークを切断する。パソコンの操作はできない状態なので、LANケーブルを引き抜く、Wi-Fiの場合はルーターの電源を切るなど、物理的な対応が必要になる。
次に、切断したまま数分間様子を見る。これは、ネットワークを切断したことで偽の警告画面が消えて、通常の操作ができるようになったケースが確認されているからだ。通常の操作ができる場合はパソコンを安全な状態に復旧するため、パソコンの初期化を推奨している。
数分間様子を見ても偽の警告画面が消えなければ、強制的に終了させるためCtrl+Alt+Deleteキーを同時に押す。「ロック」「ユーザーの切り替え」「サインアウト」といった白文字が並ぶ画面に切り替わったら、その画面の右下にある電源アイコンをクリック、さらにシャットダウンを選択して電源を切る。この場合もパソコンを安全な状態に復旧するため、パソコンの初期化を推奨している。
Ctrl+Alt+Deleteキーによる操作が効かず、この方法でもシャットダウンできない場合は、パソコンの電源ボタンを長押しして電源を切る。もちろん、この場合も再び利用する前にはパソコンの初期化を推奨している。
このように、IPAではいずれのプロセスでもパソコンの初期化を推奨している。一時的に操作できるようになっても、悪意を持ったプログラムが身を潜めて、危険をやり過ごしたら再び活動を開始するかもしれない。つまり、原因不明のサイバー攻撃への対処は、なんとか電源を落としてパソコンを初期化するというのが、IPAが示す現状の対処法だ。
対処法はいずれの場合もパソコンを初期化するよう勧めているが、これを実行するとデータを消失する可能性がある。パソコンを初期化して利用可能にしても、データが消失すれば業務に大きなダメージを受ける。つまり、今回の新たな攻撃への対策として、これまで以上にデータのバックアップが大切になったといえるだろう。重要データは小まめに外付けHDDやクラウドストレージに保存し、パソコンに問題が生じても業務に影響が出ないようにしておきたい。