論理的な「仕事のやり方」がわかる本
西村克己著
KADOKAWA
論理的に考えながら仕事を進める方法が学べる仕事術の本です。感覚やセンスではなく、論理的思考をベースに、モレのない仕事の進め方が分かります。若いうちは「センス」や「勘」で、何とかなるかもしれません。しかし、感覚に頼る仕事の進め方は、いずれ行き詰まります。意識して論理的に仕事をする習慣を付けるべきです。
とは言え、職場で学ぶだけでは非効率です。職場自体が、非論理的な思考や慣習で溢れていることも少なくないからです。だから、本書で学びます。
構成は、まず冒頭でタイプ診断をします。多くの人が「非論理的」に仕事をしていることに気付くかもしれません。少なくとも、かつての私なら「重症な非論理くん」と診断されたと思います。これを踏まえ、次に「論理くん」タイプになることをめざし、論理思考を身に付けます。ここは、本書全体の方法論の基礎に当たる箇所です。
「努力しているのに評価されない」ワケ…
論理的な思考を踏まえ、時間の進め方、発想術、文章術、会話術、説得術などのコミュニケーション論へと進んでいきます。いずれも、論理的に考え、行動することがベースになっています。
論理的に考え、話し、行動すれば、仕事の効率が上がり、ミスも減ります。結果、最低限の努力で成果が上がり、周囲の評価も高まるはずです。反対に「努力しているのに評価されない」という人は、論理的でないことが原因かもしれません。本書では、論理的な仕事とはどういうものかを順を追って解説しています。
論理的に考える人は、頭が良さそうに見えます。反対に、感性やセンスに頼って仕事をしている人は、頭が良くないように見えます。しかし「論理的かどうか」は、頭の良しあしの問題ではありません。ただ「知っているかどうか」の知識の問題、そして「論理的であろうとしているか」という意識の問題にすぎません。つまり努力で身に付きます。
雇用の流動性が進み、グローバル化も進んだことで、働く人たちの価値観はこれまで以上に複雑になっています。もはや「以心伝心」が通用する時代ではありません。そんな複雑な職場環境で、よりどころになるのが論理です。論理は、客観的事実に基づきますから、人によって解釈が変わったりしません。だから、論理に基づけば、スムーズに意思の疎通が図れるのです。
かつて、ひどい「感性」人間だった私が、論理の重要性を痛感したのは、アメリカ駐在の時でした。そこは、今の日本以上に多様な社会でした。言語も、ファッションも、生活スタイルもまちまちでした。当然、価値観も考え方もバラバラです。日本で、互いに気心の知れた上司や先輩、同僚や部下たちと働くのとは、まるで違いました。そこでは、自分の感性など無力でした。
コミュニケーションを成り立たせる上でよりどころになったのが、論理でした。必然的に、日ごろから論理に頼らざるを得ず、結果的に論理的な思考が鍛えられました。
数年間働いた後、日本に帰ってからは、格段に仕事がやりやすくなりました。そのとき身に付けた論理的な仕事のやり方は、後にコンサルタント、経営者になってからも、大いに役立っています。もちろん、私のケースは特殊で、再現性は低いと思います。ただ、私のような荒治療を経験しなくても、論理的に考え、行動することを習慣にすることは、十分可能だと思います。
まず、本書のような書籍で学ぶことです。その上で、日ごろから論理的に考え、話すことや行動することを意識することです。それだけで、成果も評価も、格段に変わってくると思います。