完全週休2日制を超え、1週間に3日の休日を社員に与える企業が増えてきた。10時間で4日勤務、成績優秀者に自由出勤日を与えるなど、やり方はさまざま。人手不足の中、社員の採用および定着面での効果を狙った取り組みとして注目される。
上の表に週休3日制を導入している主な企業を掲げた。大企業では、ファーストリテイリングが地域限定の正社員に、日本KFCホールディングスが短時間勤務の正社員に、それぞれ導入している。
全国約80カ所で有料老人ホームなどを経営するウチヤマホールディングス(北九州市)も、導入企業の1つ。同グループは介護部門で約1700人の正社員を抱えている。内山文治社長は、「介護事業の人手はいくらあっても足りない。スタッフにはシングルマザー・ファーザーもおり、こうした人が子どもと接する時間が増えるようにと、2015年12月から始めた」と話す。
具体的には、1日8時間/週5日勤務に加え、1日10時間/週4日の勤務形態を設けた(休憩時間は除く)。給与は同じ。導入は各老人ホームのフロアごとに週4日勤務の希望を尋ね、希望者が多かったフロアで導入。週5日勤務の希望者は異動させる配慮もした。
現在、5施設で部分的に導入済みだ。「子どもの学校行事に参加しやすくなった」「介護の資格取得の勉強時間を取りやすくなった」など、若手社員にはおおむね好評だ。一方、年配の社員には「1日当たりの勤務時間が2時間増えるのはきつい」という声もあった。
なお、労働基準法で1日当たりの労働時間は8時間までと決められているが、1週間の平均労働時間が40時間を超えないなど一定の条件を満たせば、変形労働時間制という仕組みで、8時間を超えて働くことは差し支えない。内山社長は「今後、導入施設を増やしていきたい。多様な勤務形態を用意して採用難を乗り切りたい」と話す。
一方、人材派遣・紹介を手掛けるシーエーセールススタッフ(東京・港)は、成績上位の社員に、週2日の休日のほかに週1日、「気分で出勤する日」を与え、事実上の週休3日を実現。社員からの提案で始め、曲折もあって、現在の形に落ち着いた。
田代章社長は「出産するたびに産休・育休を取りながら、成績が上位3人に入る女性社員もいる。効率良く仕事をすれば、週休2日か3日かは問題ではない」と話す。
リーマン・ショックの頃、同社の年間離職率は3割あった。「派遣会社の営業職はストレスが多い仕事。経験がカギなので退職者が出ると生産性は大きく低下する。ワーク・ライフ・バランスを進め、働きやすい職場にすることが大切」(田代社長)。今では離職率は、数%に下がっている。
成績優秀なら休日増
週休3日制については、マネジャーや成績優秀者など15人を対象に、14年、毎週休みの日を3日設ける完全週休3日制の試行をした。ところがその際、「他の社員が働いている中で自分だけ休みにくい」「全く仕事ができないのもストレス」という声が出た。
そこで週1日はフリー出勤日とし、会社に来る、来ないは本人任せにした。完全に休む人、朝だけ顔を出す人など使い方はさまざまだという。その後、より多くの社員を対象に「半日フリー出勤」の日を設けたこともあり、現在、週に2日を超える〝休み〞を取れる社員は、70人中40人ほどいる。
厚生労働省の調べでは、完全週休2日制より実質的に休日日数が多い会社は、11年の5.7%から15年には8.2%へと増えている。
中堅・中小企業の場合、いきなり休日を1日増やして週休3日制を導入するのは業務と人件費の両面から難しいが、人手不足が深刻な場合、創意工夫で休日増加を図ることを模索したい。例えば、シーエーセールススタッフのように一部の社員限定でテスト的に始める方法もある。
主婦専門の人材派遣を手掛けるビースタイル(東京・新宿)では、従来の短時間正社員制度に加え、週4日や3日勤務の「短日数正社員制度」をつくるため、就業規則の整備が最終段階に来ている。「育児・介護中の社員に加え、ダブルワークをしたいというニーズにも応えられると思う」と人事ユニットの岩本恵子マネジャーは話す。
同社は、管理職や専門職などの社員を対象に短日数正社員制度を導入する計画。若手社員の生産性は、労働時間に左右される面が強いが、これらの社員は違う。一足早く、労働時間で成績を評価しない「役割給」を導入していたので、新制度は導入しやすい。
無理だと決め込まず、まずは試験的に導入してみて、自社に合った週休3日制を見つけてはいかがだろう。
日経トップリーダー/文/井上俊明