中小企業にはもともと女性の戦力化に長けた経営者が多くいた。しかし、この分野に転機が来た。アラフィフ(Around Fifty/40代後半から50代前半)の採用が急増している。キャリアが二極化しているのがこの世代の特徴。採用と活用のコツも異なる。
2020年、女性の2人に1人が50歳以上――。国立社会保障・人口問題研究所の推計からは、こんな日本の将来像が見えてくる。この変化が中小企業の人材戦略に及ぼす影響は大きい。
中小企業では昔から女性活用で人材難を克服するケースが多くあった。男性社員の採用が難しい企業で、パート・アルバイトとして入社した女性を正社員に登用し、管理職や役員に引き上げる。そんな成功の方程式を支える核となるのが、子育て支援だった。
しかし、今後、子育て支援中心の女性活用は限界を迎える。何しろ、女性の大半が50歳以上になるのだ。一方、育児との両立が就業のハードルになりやすい20代後半から40代前半の女性は、急速に減る(下記グラフ参照)。
このような状況で、新規採用の余地が大きい層として注目されるのが、アラフィフの女性だ。働き手としては現役世代だが、専業主婦で未就業だったり、ワーク・ワイフ・バランスのために転職を考えていたりする人が多い。
45歳以上の採用が急増中…
既にアラフィフ女性の採用は増加傾向にある。主婦に特化した求人サイト「しゅふJOBパート」を介して17年10月に就職した人のうち、45歳以上が占める割合は40.2%。16年10月の34.6%から1年で大きく伸びている。
現在のアラフィフ女性は、バブル期に社会人を経験した人たちが多い。「この世代の女性求職者は二層に分かれる」と指摘するのは、しゅふJOBパートを運営するビースタイル(東京・新宿)の三原邦彦会長だ。
第一に、長年、家事や育児に専念し、社会人としての空白期間が長い「ブランク主婦」。第二に、社会人としてバリバリ働いてきたが、出産などを機にワーク・ライフ・バランス重視に転じた「元キャリア女性」。それぞれに向く職種が異なり、仕事選びで重視する要素にも多少の違いがある。
ブランク主婦の場合、専業主婦としての経験が生きる職種が向く。調理や介護はもちろん、コミュニケーション力が生きる仕事を得意とする。例えば、テレフォンマーケティングやコールセンターの業務。消費者心理を熟知することから、販売店への売り場提案を担う「ラウンダー」に起用する消費財メーカーも目立つ。
ブランク主婦の採用のコツは、社会復帰に際して抱く不安を解消すること。求人広告では「未経験者歓迎」「主婦が活躍中」といった文言が効く。初心者向けの研修が充実していることも大きなアピールポイントになる。
一方、元キャリア女性の場合、前職での経験が生きる職種ならば即戦力になる。ただし、時給換算の給与水準は高めに設定しないと応募が集まりにくい。
給与よりも人間関係
ブランク主婦と元キャリア女性に共通するニーズもある。
まず、職場の雰囲気。アラフィフ女性が「仕事選びでこだわるポイント」の1位だ(下記グラフ参照)。「中小企業ならば、女性社員の間でいじめが起きているとき、経営者が『やめようよ』と上手に諭せるかどうか。人間関係を中心に、小さな気配りの積み重ねが重要になる」(ビースタイルの三原会長)
もう1つが、勤務時間に融通が利くこと。アラフィフになると子育ては一段落しても、介護があったり、趣味やボランティアに生きがいを見いだしたりする女性が多い。最近では元キャリア女性を中心に、晩婚晩産で子育てを抱えるアラフィフも増えた。
逆に、人間関係が良く、時間の融通が利く職場ならば、元キャリア女性でも給与水準では妥協する方向に気持ちが傾く。子育てにとどまらない多様なニーズに応えられれば、中小企業が女性活用から得る果実は依然として大きい。
日経トップリーダー/文/小野田鶴