ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2015.07.01
傳來工房社長 橋本和良氏
傳來工房の創業は平安初期、弘法大師が唐から持ち帰った鋳造技術を今に受け継ぐ。住宅・公共用エクステリア製品やアルミ・ブロンズ鋳物の製造で手堅く成長を続けている。橋本社長は、礼儀、規律、清潔、整頓、安全、衛生を徹底する「環境整備」が強さの源となっていると話す。
――1200年の歴史を誇る傳來工房が「環境整備」に取り組むようになったのは何がきっかけですか。
橋本 傳來工房は創業以来、神社仏閣の装飾金物を手掛け、昭和以降は住宅・公共用のエクステリア用品やアルミ・ブロンズ鋳物などに事業の幅を広げてきました。しかしバブル崩壊後、業績が低迷します。何とか経営改革をしようとコストダウン運動、TQC(全社的品質管理)などに手を着けましたが、成果は出ない。そんなとき、経営コンサルタントの一倉定さんの本で環境整備という言葉に出合い、直感的に「これだ」と。
鋳造工場は典型的な3K職場。当時、我々の会社も非常に汚く、整理整頓ができていませんでした。挨拶もろくに交わしていなかった。やろうと思えばすぐにできることすらしていない会社が、ライバルとの競争、取引先からの要請などもっと難しいことに立ち向かえるはずがありません。根本的な体質を変えなければ何もうまくいかないと思い至り、藁をもつかむ思いで始めたのが環境整備でした。
――社員は理解してくれましたか。
橋本 経営計画書に「環境整備を導入する」と書き込みましたが、誰一人、掃除も整理整頓もしてくれませんでした。すでに導入している社長に教えを乞いに行ったら、「アホ! 社長がやらずに誰がやるんだ」と叱られた。それで毎朝、1人でトイレの掃除を始めたのです。
3カ月ほどたつと、気のきく管理職が手伝うようになって、1年ほどで社員の半分ぐらいがやってくれるようになりました。トイレを掃除していると、「自分の心を磨いている」感覚が生まれます。全社的に定着させれば会社は変わると確信し、就業時間内に15分、全員でやることにしました。
――どんな成果がありましたか。
橋本 環境整備が軌道に乗った頃、取引先の要請でTQCに取り組んだんです。協力会社数十社の中で5社が優秀賞に選ばれるのですが、当社は1年目に優秀賞を、2年目に最優秀賞を取りました。以前は何をやってもうまくいかなかったのに、ほぼ同じ顔ぶれの社員が、ベーシックなことを磨き上げることによって仕事に取り組む姿勢や考え方を変え、結果を出せる集団に変わったのです。
環境整備を始める前まで、工場に来客があっても、職人たちは挨拶もしませんでした。それが明るく元気に笑顔で挨拶できるようになってくると、お客様は「こういう人が作るものなら間違いない」と思ってくださいます。その瞬間、現場の一介の職人が最強の営業マンに変わる。業績面でも良い結果が出るようになりました。
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橋本 和良(はしもと・かずよし)
1953年、京都府生まれ。玉川大学工学部経営工学科卒業。82年、特殊装飾金物メーカーの傳來工房に入社。2004年、代表取締役社長に就任した。傳來工房の創業は平安時代初期と伝えられ、弘法大師(空海)が唐より持ち帰った鋳造技術を受け継いだとされる。以来、最も優れた技能の一番弟子が代々「傳來」の銘を継承。19年に橋本社長の祖父がその銘を継承した。48年に法人設立。その後、建築美術工芸部門や注文住宅事業に進出、現在はガーデンエクステリアなども手掛ける。
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