ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2015.09.03
中央タクシー会長 宇都宮恒久氏
成田、羽田など空港まで送迎する「空港便」を主力とし、長野県内トップの売り上げを誇る。乗務員1人ひとりが現場で判断し、提供するきめ細やかなサービスが顧客の強い支持を得る。濃密な人間関係と良い社風の中で磨かれた、社員の人柄が良いサービスを生んでいる。
──中央タクシーは「お客様が先、利益は後」との理念を掲げ、顧客の強い支持を得ています。「体が不自由な高齢者に代わって雪かきした」「電動車いすを載せるために1時間かけて解体し移動先で組み立てた」など伝説となったサービスもあります。宇都宮会長はどのように理念を社員に浸透させていったのでしょうか。
宇都宮:創業以来約40年、とにかくしつこく「お客様主義」「お客様本位」と言い続けました。最初はなかなか理解してもらえませんでしたよ。お客様の乗降時に車から降りてドアを開閉する、お客様が車に乗ったら自己紹介をする、制服とネクタイを着用するといった基本的な指示すら従わない乗務員もたくさんいました。
当時の朝礼風景の写真を見ると、サングラスをかけ、堅気とは思えない真っ白なズボンをはいた乗務員がいます。それでもあきらめずに言い続けました。
中央タクシーの車のリアウインドーには「私はお客様を大切にします」と書いたパネルを置いています。当初はみんな「こんなの恥ずかしくて載せられない」とトランクにしまっていました。それで「パネルを接着剤で固定しよう」という声も出たのですが、いや、そこまではやらなくていい、外さなくなるまで待とうと。「外すな」「隠すな」と言い続けるうちに、だんだんと誰も外さなくなりました。
──宇都宮会長があきらめずに言い続けた原動力は何でしたか。
宇都宮:かつてタクシー乗務員は「雲助」と揶揄(やゆ)されることがあるなど、社会的地位があまり高くありませんでした。私はタクシー会社を見る世間の目、社会の目を変え、乗務員に働きがい、やりがい、誇りを感じながら仕事をしてほしいと思っていました。
「一般乗用旅客自動車運送事業」という許認可業のタクシー会社を、サービス業に変えていこうと考えたのです。
──顧客のニーズは時と場合に応じてさまざまです。どんなサービスを提供するか、マニュアルをつくって対応することはできませんね。
宇都宮:その通りです。タクシー乗務員の仕事はほとんどが事業場外労働。1人ひとりの乗務員が判断し行動するので、社長の目は届きません。良いサービスは現場に出ている乗務員のモラル、モチベーション、人柄から生まれます。その人柄は仲間との濃密な人間関係や良い社風の中で磨かれ、光っていきます。
タクシー業界は一匹オオカミの集まりで人間関係が希薄とされ、「自分の売り上げさえ良ければ周りは関係ない」となりがちでした。私はそれを変えようと思いました。
まず「あいさつ運動」と「ありがとう運動」に取り組みました。当たり前のことですが、会社で仲間と会ったら「おはようございます」「おやすみなさい」と言おう、小さなことでも仲間に「ありがとうございます」と伝えようと呼びかけました。こういう日常的な習慣から人間関係が良好になっていくと考えたからです。
ありがとう運動は6年前に長男の司が社長になってから「ありがとうカード」に進化しました。多い人は3カ月間で5600枚以上書いて配っています。良好な人間関係が出来上がり、感謝の気持ちが満ちた会社になっているのだと思います。
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宇都宮 恒久(うつのみや・つねひさ)
1947年長野市生まれ。大学中退後、父親が経営する宇都宮乗用自動車商会に入社。75年に独立し中央タクシーを設立、社長に就任。県内初の運賃値下げや長野県内と成田空港などを結ぶ乗り合いタクシー事業「空港便」などを手掛け、県内ナンバーワンのタクシー会社に育て上げた。2008年、長男の司氏に社長を譲り、会長に就任。
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