木南:当社は再生可能エネルギー事業の開発から運営までを行っている会社です。これまでの太陽光発電に加え、バイオマスや風力、地熱などの新規計画に取り組んでいます。今回、新規に調達したのは5億円ほどですが、事業に着手するための開発資金、現地に設立する事業会社に投資する資金の調達が目的の9割です。また、地域の地権者や自治体の方たちに理解していただけないと再エネ事業はできません。目的の残りの1割は知名度向上を図ることだと考えています。
木南:そうですね。再エネの開発に着手する際に地域で説明会を開くと、過去の実績とともに上場しているのかを必ず聞かれます。信頼を得るという意味では、株式を上場した意義は大きいと思います。
木南:現在、全国6カ所で大規模太陽光発電所(メガソーラー)が運転を開始しています。発電容量は合計約140MWです。提携企業と共同出資で運営会社を設立する形をとっており、千葉県富津市の富津ソーラーなど5カ所は出資比率が50%を超える連結対象の子会社で、当社の資産の合計は約500億円になります。岩手県の軽米町には2019年稼働予定の2つのメガソーラーを建設中で合計約130MWです。東北地方でも最大級の規模で、これに450億円を投資しています。今後、連結子会社になれば当社の資産は約1000億円まで拡大します。太陽光の事業はほぼ完成形になると考えています。
太陽光発電に続く電源として、バイオマス、陸上風力、洋上風力、地熱などの開発に取り組んでいます。特にバイオマスですね。産業廃棄物処理会社のユナイテッド計画、木質バイオマス発電に知見があるフォレストエナジーと共同でユナイテッドリニューアブルエナジーを秋田市に設立して、昨年7月から20MWの発電所が本格稼働しています。
木南:そうですね。秋田のバイオマス発電所では、燃料の7割は秋田県内の未利用材を使っています。残りが輸入ヤシ殻(PKS)です。また、静岡県の御前崎港にある未利用土地にバイオマス発電所の建設を計画しており、環境アセスメントを開始したところです。ここでは港湾に面した立地を生かして輸入木質ペレットを中心とした事業を計画しています。
木南:住友林業は当社の第2位の株主です。国内有数のバイオマス発電事業者で、多くの社有林を持ち、輸入燃料の調達力もあります。バイオマス発電の共同開発の他、風力や地熱でも協力していくつもりです。
木南:2016年8月にプラスチックのリサイクル事業をヴェオリア・ジャパン(東京都港区)に譲渡したため社員は70人になりましたが、そのうち40~50人が開発専門チームです。大手商社に負けない規模だと思います。
──通信や金融、ゼネコンなど社員のバックグラウンドは多彩ですね。事業開発には資金調達が欠かせないので金融出身の人が多いのですか。
木南:資金調達にかける労力は、全体の5分の1ぐらいではないでしょうか。事業化までのプロセスは、「開拓」「開発」「資金調達」「工事・運転」の4つに分けられます。まず太陽光なら日照が良い、風力なら風況が良い、バイオマスなら燃料を集めやすいなどの条件に合った適地を開拓しなければなりません。そこで強みを発揮するのが人脈です。
当社は、過去16年間にわたりさまざまな地域でエコタウンづくりなどの環境事業のコンサルティングを1000件以上行ってきました。そのときにできた自治体や地方銀行、地元企業とのつながりが資産になっています。こうした人脈から入ってくる情報があるからこそ、適地を開拓できるわけです。
開発の段階では、地権者の意向をまとめて賃貸契約を結ばなければなりません。例えば軽米町のメガソーラーでは地権者が約250人もいます。地権者集会を2年間に数十回開きました。中には誰が相続しているのかすぐに分からない土地もありますが、すべて探し出します。それを社内のスタッフがすべてやります。
──適地を見つけ、開発につなげる営業力ですね。
木南:メガソーラーに向く平らな土地は固定価格買い取り制度(FIT)が始まってすぐになくなりました。開発には、斜面をうまく利用して太陽光パネルを設置する設計力が重要になります。さらに当社は開発のスピードを上げるために変電設備を自前で設置して自営線で電力会社の系統に接続しています。基幹線に使われるような15万4000Vの特別高圧の電線です。そこに大手ゼネコン出身の人材が生きます。
16年前に創業、まずはリサイクルに
──レノバの前身のリサイクルワンを木南社長が立ち上げたのは2000年5月30日、ごみゼロの日ですね。
木南:環境を良くするための事業をしたいと考えて立ち上げたのがリサイクルワンです。環境事業の大きな分野としては、エネルギーと資源があります。ただ、エネルギーは今のFITのような制度が整備されておらず参入できないと判断し、リサイクル事業に着手しました。
──リサイクル事業にこだわりがあったと思います。昨年8月に売却されたのはなぜですか。
木南:事業は安定しており、黒字基調できていました。ただ、事業の発展には追加投資が必要な時期でした。同時に、環境事業の中でも市場の急速な成長が見込まれ、当社の強みである開発ノウハウを生かせる再エネに注力したいと考えていました。そこにタイミング良くヴェオリアから声がかかったので売却を決めました。オペレーションの技術力が高く、世界で600カ所ものリサイクル工場を運営している会社です。欧州にあるヴェオリアの工場もよく見学に行っていました。
──2014年にレノバに社名変更したきっかけは何ですか。
木南:レノバはラテン語で「新しくする」という意味です。実はアジアでは日本より前に再エネ事業に参入していました。インドネシアのスラベシ島で水力発電の開発をしたのです。2012年にFITが始まってからは日本で急速に再エネの開発計画が立ち上がり、事業の主体になってきました。リサイクルワンでは「リサイクルの会社ですか」と言われることが多くなり、再エネ事業にもリサイクル事業にも矛盾しない社名に変更しました。
コスト競争力で差が付く市場に
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岩手県・軽米町に2019年稼働予定のメガソーラーの発電容量は合計約130MWで東北最大規模(左上)。秋田市ではバイオマス発電が稼働中だ(右上)。今後は、地熱発電(左下)や洋上風力発電(右下)の事業開発も視野に入れ、調査に着手した[/caption]
──FITがスタートした当初はメガソーラーの認定だけ受けて土地を売り抜けるブローカー行為などの問題が指摘されていましたが、制度改革が進められました。再エネ市場のこれからをどう見ていますか。
木南:市場はかなりクリーンアップされてきたと思います。買い取り価格が下がっていきますので、これからはプロがやる市場になり、コスト競争が厳しくなるのではないでしょうか。発電コストを下げられる会社、地域の理解を得られる会社が生き残っていくと思います。
──適地も少なくなっています。
木南:大型の太陽光、風力に適した土地はほぼなくなってきています。今は収益性を確保できるギリギリの土地の取り合いになっています。ただ、太陽光パネルなどの設備価格はFITのスタート当初に比べて4割ぐらい安くなっています。風車も大型化が進み発電量当たりの設備単価は下がっています。技術的なブレークスルーの余地はまだあります。
当社は大型の案件を開発する会社なので、バイオマス発電に加えて洋上風力や地熱に目線が行っています。秋田沖で、着床式の洋上風力発電の調査にも着手しました。これは、日本で計画されている洋上風力でも最も大きい560MWの発電容量があります。北海道函館市恵山地域では独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の補助を受けて地熱資源調査を実施しています。
──大型の案件を開発し続けるとなると資金の確保が重要です。東証1部への市場への変更はいつごろになりそうですか。
木南:業績次第なのではっきりとは言えませんが、数年以内をめざしたいですね。
日経エコロジー /編集長 田中太郎
※掲載している情報は、記事執筆時点(2017年5月)のものです。