マイナンバーへの対応を急げ!(第3回)社労士が解説!マイナンバー、企業はここに注意せよ

リスクマネジメント

公開日:2015.08.28

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 2016年1月から税・社会保障・災害対策におけるマイナンバー制度の運用が開始されます。日本に住民票を有するすべての者(外国人も含む)を対象に、各自12ケタの番号が振られ個人を特定できるようになります。この制度の導入により、税と社会保障の公平性が実現され、行政手続きの簡素化やコストの削減など、行政の効率化の効果も期待されています。

 個人情報の漏洩などが問題になっていますが、マイナンバーは番号法という法律で定められている大切な個人情報です。したがって、マイナンバー制度の運用開始に当たっては、従業員のマイナンバーを預かる企業側にも厳格な管理が求められます。

 企業は、税務・社会保障に関する手続きを行う上で各種書類にマイナンバーの記載が義務付けられてくるため、雇用している従業員のマイナンバーを取得しなくてはなりません。ですがその際、保管・取り扱いなどにおいて厳重な安全管理措置が求められます。この管理措置は従業員の入社から退職、さらに退職後も法で定められている一定の保管期間を経過後、復元不可能な状態での廃棄というところまで継続します。

マイナンバー漏洩で企業が負うリスク

 マイナンバーに関する情報漏洩による損害は計り知れず、取り返しがつかないことになる可能性があります。マイナンバーを漏洩・流出した場合に企業が負うリスクとしては、以下のことが考えられます。

(1)民事損害賠償責任
(2)不正行為による情報漏洩等を行ったマイナンバー取り扱い業務に従事していた従業員への刑事罰
(3)上記(2)の従業員を雇用している企業に対する罰金刑
(4)特定個人情報保護委員会による勧告・指導
(5)企業名の公表
(6)企業としての社会的評価・信用の失墜による損害

 この中で、(1)の賠償額(慰謝料等)についていえば、これまでの個人情報漏洩事件では、おおむね1件当たり1万5000円程度が相場といわれています。ですがマイナンバーに関しては、特に個人所得や社会保障、健康に関する情報が紐付けされているだけに、これまでの相場をはるかに超える賠償額が課せられる可能性もあると推測します。

 また(2)の刑事罰については、不正を行った従業員に対して、最高刑が懲役4年以下となっていますが、懲役刑が3年を超える場合は執行猶予がつきません。そのため悪質な事件となれば、執行猶予なしで実刑もあり得ます。一方で企業側には懲役刑はないものの、両罰規定で罰金刑が科されます。それだけマイナンバーは、企業に対して厳重かつ高度な安全管理を求められる情報だということが分かります。

 そして何より企業がダメージを受けるのは、(6)の社会的評価・信用の失墜による企業のイメージダウンでしょう。情報漏洩事故が発生してしまうと、企業は経済的損失だけではなく、信頼やブランドイメージにまで影響が及びます。さらに、企業として情報資産の管理方法も問われることになります。

 こうしたさまざまな重いリスクを企業は負うことになるので、企業規模の大小・業種業態にかかわらず、企業側はマイナンバー制度が求める安全管理措置の対策を講じておかなくてはなりません。

企業が取り組むべき安全管理措置…

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執筆=一般財団法人埼玉県総合労働福祉協会

大久 由子(常務理事・社会保険労務士)
出版社勤務の後、石油小売販売業の取締役として企業経営に参画。社会保険労務士資格取得後は、大手資格受験予備校株式会社LEC東京リーガルマインドにおいて、社会保険労務士資格取得コースの専任講師や公共職業安定所からの委託による職業訓練講師として約7年間講師業に従事、現在は同協会の常務理事として中小企業から大企業にいたるまで100社を超えるクライアントへの人事労務全般のコンサルティングや企業研修及びセミナー講師など幅広く活動中。


井上 和彦(行政書士)
行政書士として7年在職した介護保険指定事業所にて行政官庁への許認可手続きを数多く手掛ける。現在は同協会において、建設業事業所を中心に50社を超えるクライアントに対し、人事労務の相談対応から各種許認可手続、特に近年問題となっている建設事業者の社会保険未加入問題への対策コンサルティング推進など、積極的に活動中。

【T】

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