業種を問わず、人手不足が著しい。だが、内閣府がまとめた白書「日本経済2018-2019」によると、就業を希望している非労働力人口は、男性67万、女性208万の計275万人存在するという。特に女性の非求職理由を見ると、「勤務時間・休日が希望にあわない」「育児・子育て」との回答が多い。モバイルワークや在宅勤務を活用すれば、こういった人材が戦力化するかもしれない。現在、モバイルワークや在宅勤務の企業の実態はどうか。日経BPコンサルティングのアンケートシステムAIDAにて、同社保有の調査モニター2389人を対象に調査を実施した。
モバイルワークの障壁は「セキュリティ対策」
まずはモバイルワークについて、どの程度「オフィス外」で働いているか、から見てみよう。「時々、オフィス外で働いている」との回答は17.2%あった。「自社オフィス以外で働くことはほとんどない」の59.9%をのぞく40.1%が、何らかの形でオフィスの外で働いている(図1)。
【図1 モバイルワークの現状について】
それでは、モバイルワークをする際の考えられる障壁は何だろうか。最も回答率が高かったのが、「情報漏えいなどのセキュリティ対策」(23.8%)だった。それに続くのが「モバイルワークを想定した就業規則や人事・評価制度になっていない」の17.9%となった。2017年の調査結果から、トップ2の順位に変動はなかった(図2)。
【図2 何がモバイルワークの障壁になっているのか】
在宅勤務の導入は大企業が先行…
次は、在宅勤務の状況を見てみよう。導入状況については全体で3割が導入済み、7割が未導入との結果となった。これを従業員数別に見てみると、100人以上300人未満の企業が14.2%と導入比率は最も低く、1万人以上の企業が54.8%で最も高い結果となった。大きな企業のほうが、在宅勤務の制度は整っている。導入比率は企業規模に比例するといってよいが、99人以下の企業は24.2%と少し比率が高くなっている(図3)。
【図3 在宅勤務の導入状況(従業員数別)】
在宅勤務制度の利用意向はどうだろうか。「利用したい、利用している」と答えたのは35.0%、「利用したくない」と答えたのは49.6%だった。2017年と比較すると、「利用したい・したくない」ともに5ポイント程度数字を伸ばした。その分「分からない」との回答が減少した。つまり、2年の間に利用意向の明確化が進んだといえる(図4)。
【図4 在宅勤務制度の利用意向】
勤務先で在宅勤務制度が実施されているケースと、実施されていないケースで利用意向は変わるだろうか。在宅勤務導入済み企業に聞いたところ、62.0%が利用済み、または利用したいと思っている結果となった(図5)。一方、未導入企業では「利用したいと思っている」比率は29.8%という結果となった(図6)。
こちらも2017年の結果と比べると、制度導入済みの企業では「利用者・利用意向者」が、50.9%から10ポイント以上も上昇した。一方、制度未導入企業においては「利用しないと思う」という回答が65.0%から70.2%に上昇した。
【図5 在宅勤務導入済み企業の利用意向】
【図6 在宅勤務未導入企業の利用意向】
在宅勤務の障壁については、モバイルワークの障壁とほぼ同じ結果となった。最も高かったのが「情報漏えいなどのセキュリティ対策」(20.3%)。続いて「就業規則や人事・評価制度」(18.8%)だった。2年前の結果と、大きな違いは見られなかった(図7)。
【図7 何が在宅勤務の障壁になっているのか】
中堅企業で進んだ在宅勤務制度
最後に、モバイルワークや在宅勤務に必要なITシステム・機器が何かを聞いた。第1位は「パソコンなどの情報端末」(58.4%)で、6割弱が選択した。2位の「セキュアなネットワーク(専用VPN・暗号化規格Wi-Fiなど)」(36.3%)は、2017年の結果より4ポイント上昇。順位も3位から2位へ1つ上げた(図8)。
【図8 モバイルワークや在宅勤務に必要なITシステム・機器】
モバイルワークや在宅勤務は、人手不足を補う重要な手立てであると同時に、現状戦力の効率化を促進させる効果も期待できる。在宅勤務の導入状況(図3)も、2年前と比較すると、全体で7.7ポイント上昇している。その中でも、1000人以上3000人未満の企業が18.5ポイント、3000人以上5000人未満の企業が11.3ポイントと上昇傾向が顕著だった。一方、99人以下企業は4.1ポイント、100人以上300人未満の企業は3.2ポイントの上昇にとどまる。1000~5000人ゾーンの企業が、在宅勤務の制度導入で大企業レベルに迫り始めたといえるだろう。
<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムAIDAにて、同社モニター2389人を対象に2019年2月に調査