現在、業務でパソコンを使わない企業はほとんどないといっていいだろう。ただ、パソコンの導入方法は近年変わりつつある。業務効率化の観点から、さらにキャシュフローの観点から、社内の担当者が購入し利用社員に提供するスタイルに加え、パソコンをレンタルしてその利用料を支払うスタイルが採用されている。企業のパソコンはどのような形態で導入・運用されているか。その実態について、日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社保有の調査モニター2319人を対象に調査を実施した。
パソコンの導入比率は9割超え
企業のパソコン導入比率はどのくらいか。アンケートによると「導入している」との回答は94.4%と、ほとんどの企業が業務にパソコンを利用している結果となった。従業員数別に見てみたところ99人以下の企業でも90.4%と9割を超えたが、5000人以上の企業で98.6%、1万人以上の企業で97.5%と、高い導入比率の中でも大企業のほうがより高い数字となった。(図1)。
【図1 パソコン導入状況】
では、会社に導入されているパソコンの種類は何か。パソコン導入済み回答者に「デスクトップ型」「ノート型」「タブレット型」から選んでもらった(図2)。
【図2 パソコンのタイプ】
結果はノート型が78.9%と最も多く、デスクトップ型53.7%、タブレット型17.2%となり、複数種類導入も多く見られた。従業員数別に見ると、内訳は大きく違いが出る。デスクトップ型では99人以下の企業で63.2%なのに対し、1万人以上の企業では37.7%と25.5ポイントもの差がつき、事業規模が大きくなるほど導入比率が低くなる傾向となった。
一方、ノート型では99人以下の企業で66.5%なのに対し、1万人以上の企業では90.8%とこちらも24.3ポイントの差がつき、事業規模が大きくなるほど導入比率が高まる結果となった。タブレット型については事業規模による大きな差は見られなかった。
レンタル・リースの比率はノートパソコンで27.3%…
次に会社利用のパソコンの導入方法について聞いた。いずれのタイプも「会社が購入」が最も多くなった。デスクトップ型が72.9%、ノート型が65.8%、タブレット型が71.8%。「会社がレンタル・リースしたもの」においてはデスクトップ型が19.7%、ノート型が27.3%、タブレット型が22.5%となった(図3-1)。レンタル・リースでの導入はノートパソコンが最も多い。
さらに導入パソコン(3つのタイプの合計)において「会社がレンタル・リースしたもの」という回答を従業員数別にクロス集計してみると、全体で22.7%のところ99人以下の企業ではわずか7.5%しか選択していない結果となった(図3-2)。事業規模の小さい会社ほど、レンタル・リースという選択をしていないといえる。
【図3-1 会社パソコンの導入方法】
【図3-2 会社がレンタル・リースしたもの(従業員数別)】
続いて、パソコンの使用期間(次のパソコンに移行するまでの期間)について聞いた。トップは「特にルールは定めていない」で、選択比率がその中で最も低いノートパソコンで38.9%となった。ルールを決めている中では「4~5年未満」(22.2%)が最も選択された(図4)。
【図4 パソコンの使用期間】
パソコンの不具合は社内の部署が担当。中小には厳しい結果
会社でパソコンを使っていて、必ずといっていいほど直面するのが不具合の発生ではないだろうか。使用するパソコンに不具合が出た場合、どのように対応しているかを聞いたところ、1位は「社内の専門部署・担当者が対応」の64.2%となった。2位の「契約しているサポートサービスを利用」(18.8%)とは45.4ポイントもの差が出た。しかし従業員数別に見ると、「社内の専門部署・担当者が対応」は99人以下の企業では33.6%と、他の層と比べてかなり低い数字となった。100人以上の企業で軒並み70%を、3000人以上の企業では80%を超えている(図5)。
そのぶん「契約しているサポートサービスを利用」「パソコンメーカーに連絡」において一番選択したのはいずれも99人以下の企業となった(22.5%、22.8%)。また「特に決まっていない・分からない」の選択率では32.7%と突出し、この層の不具合発生時の対応状況の遅れが数字の上からも推察できる。
【図5 パソコン不具合時の対応】
<企業PC実態調査まとめ>
・会社でのパソコン導入比率は94.4%
・従業員規模が大きくなるに従い、導入比率が高まる傾向
・導入されているパソコンの種類はノートパソコンが最も多く78.9%
・デスクトップ型は従業員規模が大きくなるに従い導入比率が低くなる
・レンタル・リースの比率はノートパソコンで27.3%
・ノートパソコンの使用期間で最も多いルールは4~5年未満(22.2%)
・パソコンの不具合は「社内の専門部署・担当者が対応」(64.2%)
・ただし99人以下の企業では33.6%と激減
従業員が99人以下の中小企業では、社内に専門部署・担当者を置くのはリソースの面から困難だ。一方で、会社パソコンの導入が所有から利用へとシフトしつつある流れの中で、不具合時のサポートを含んだサービスとして、レンタル・リースを行う選択肢があるのを見逃してはならない。
パソコンの購買においては機種の選定、初期設定など多くの時間を要する。運用時には不具合対応も当然しなくてはならない。しかし現状、レンタル・リースは従業員規模が小さいほど選ばれていない。むしろ人的リソースが限られた中小企業こそ、サポートが手厚いレンタル・リース方式を選択すべきではないだろうか。
<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社モニター2319人を対象に2021年10月に調査