電子帳簿保存法対応への認知度を聞いたところ、「具体的内容を理解している」「概要については理解している」の合計で5割超(50.1%)の企業が制度を理解していると回答。この一方で、1万人以上の企業で約4割(39.6%)が「ほとんど理解できていない」、99人以下の企業で約2割(17.2%)が「アンケートで初めて知った」と答える結果となり、企業規模を問わず認知度が5割程度にとどまる姿が浮き彫りになった(図1-1)。
役職別に見ると、一般社員・職員の5人に1人(22.1%)が「本アンケートで初めて知った」と回答(図1-2)。役員層や部長・課長クラスの理解が比較的高い傾向にあるものの、係長・主任以下、一般職員層は20ポイント程度低いスコアとなり、職位や職責に応じて認知度に違いがあることが分かった。
次に制度への対応状況について聞いた。全体回答として「すでに対応済み」(28.1%)、「対応に向けて具体的な準備を進めている」(35.1%)となり、「具体的な対応はしていないが予定はある」(11.4%)を含めると74.6%の企業が対応に向けたフェーズにある結果となった。企業規模別に見ると、対応済みが99人以下の企業では11.4%、1万人以上の企業では53.8%で40ポイント以上の差がつくなど、企業規模に比例しているのが分かった。中堅・中小企業が制度対応に苦慮していることがうかがえ、例えば99人以下の企業においては、27.2%が「対応の必要性を感じているものの未対応」、23.9%が「対応していないし予定もない」と回答している(図2)。
【図2 電子帳簿保存法への対応状況(従業員規模別)】
最大の焦点は「業務負荷の増加」「コストの増加」
では、どのような点を企業は最重要課題として捉えているのだろうか。従業員規模別に見ると全体では「業務負荷(適格請求書の管理など)の増加」(33.0%)、「コスト(システム改修など)の増加」(24.1%)に回答が集中し、合計で57.1%となった。従業員別で捉えると、99人以下の企業では21.2%が「制度対応に関する情報の不足」と回答した(図3-1)。
【図3-1 電子帳簿保存法対応に際しての課題(従業員規模別)】
役職別に捉えると会長・社長において、「制度に精通している社員の不足」(6.4%)、「制度対応に関する情報の不足」(26.3%)という点に特徴が現れた。それぞれ全体と比較した場合、社員不足の項目が9.4ポイント低く、情報不足の項目が12.3ポイント高い結果となった。この点から、経営層においては、人材不足ではなく情報の不足に課題を感じている傾向にあることが分かる(図3-2)。
【図3-2 電子帳簿保存法対応に際しての課題(役職別)】
制度に対応した「業務システムの見直し・改修」が最多
制度対応に向けては、具体的な対策をどのように講じたか(講じる予定か)も尋ねた。全体として最多となったのは、「制度に対応した業務システムの見直し・改修」(23.2%)。次いで「制度対応に向けた社内ワークフローなどの見直し」(18.4%)、「社内の電子取引状況の洗い出し・把握」(16.6%)、「各研修など社員理解向上施策の実施」(9.1%)、「税理士・会計士・中小企業診断士などの専門家に相談」(8.8%)という結果となった(図4)。
対応に向けた取り組みには、企業規模で濃淡が生まれている。例えば、「業務システムの見直し」において、1万人以上の企業は24.3%、99人以下企業では12.0%となり、12.3ポイントも差が生じている。「社内ワークフローなどの見直し」でも同様に9.4ポイントも差が生じている。図2や図3でも触れたように制度対応に関する情報不足や制度に精通している社員の不足などを背景として、中小企業が制度対応に後れをとっている可能性が浮かび上がる。
【図4 電子帳簿保存法対応に向けた取り組み(予定含む)】
電子帳簿保存法の対応に向けては社内システムの見直しや改修のみならず、インボイス制度との兼ね合いなども考慮しながら、先々を見据えて慎重に検討する必要があるだろう。また近年は、バックオフィス業務の効率化も働き方改革や生産性向上の実現に向けた重要な視点として注目を集めている。各種の対応に向け、具体的にどのようなツールを活用していくのかは、社内での対話とともに外部の専門家知見を有効に活用しながら着実に取り組みを進めていこう。
<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社モニター3522人を対象に2023年1月に調査