コロナ禍収束の兆しが社会全体に認識されつつある中、オフィス回帰への動きも活発化しつつある。それに伴い、対面での商談や、職場でのリアルなコミュニケーションの増加を感じる読者も多いのではないだろうか。では、働き方改革の実現やテレワーク・リモートワークなど多様化する社内コミュニケーションの円滑化に向けて利用される「ビジネスチャット」の活用度合いやツール選定はどうなっているのだろうか。その利用状況について、日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社保有の調査モニター3197人を対象に調査を実施した。
利用サービスの約7割は「Microsoft Teams」
まず、ビジネスチャットの勤務先導入状況について尋ねた。「導入している」と答えたのは43.1%、「導入しておらず、今後の導入予定もない」が31.0%となった。従業員規模別に見ると、導入比率は99人以下の企業では18.8%、1万人以上の企業では79.9%という結果となり、「導入している」との回答は前回調査から微減となった(図1)。
【図1 ビジネスチャットの導入について】
次に導入済みと回答した層に、メインで使用するビジネスチャットが何かを聞いた。1位は「Microsoft Teams」(66.6%)、2位に「Google Chat」(8.7%)、3位は「Slack」(7.5%)が続いた。これら以外には、「LINE WORKS」(4.3%)、「Chatwork」(3.1%)が続き、「無料のものを使っている」層も2.5%存在した。Google Chatについては、前回の3位から2位に上がり、前回2位のSlackと順位を入れ替える形となった(図2)。
【図2メインで使用しているビジネスチャット】
ビジネスチャット利用層の6割超が「ほぼ毎日頻繁に活用」…
では、活用頻度についてはどの程度だろうか。「ほぼ毎日頻繁に活用」が62.1%と最多で、「時々活用」が24.8%となった。活用動向としては、利用層の6割超が日常の業務にとってビジネスチャットが必須のツールとなりつつあることが分かる。一方で、「あまり活用していない」が8.3%、「活用していない」が4.8%という結果も得られ、前回調査と同様に導入はされているものの活用に後ろ向きな層も一定数存在している(図3)。
【図3 どれくらいビジネスチャットを活用しているか】
ビジネスチャットの業務への貢献度については、「とても役に立っている」と回答したのが53.3%、「やや役に立っている」が35.7%。「あまり役に立っていない」が8.4%、「まったく役に立っていない」が2.5%となった(図4)。この点、とても役に立つと感じている比率が前回調査(49.1%)から4.2ポイント増となり、頻繁に利用する層の活用度合いが深化している傾向が見受けられる。
【図4 ビジネスチャットの業務への役立ち度合い】
ビジネス利用においては「検索機能」に根強い需要
ビジネスチャットにおいて必要、または強化してほしい機能についても聞いた。1位は「検索機能」の35.4%。2位は「スケジュールなどとの連携機能」(27.5%)、3位は「既読・未読機能」(23.0%)となり、順位は前回と同じ結果となった。
ビジネスチャットの業務利用においては、過去のやり取りを確認する必要性や目的箇所へのたどり着きやすさなどが重視され、この機能への根強いニーズがあると思われる。また、4位には「セキュリティ機能」(12.8%)5位には、「デバイス連携機能」(12.7%)が続いた。さらに、メッセージ送信者への反応を示す「スタンプ機能」(9.7%)や、「メンション機能」(8.7%)などを重視する層も1割程度存在している(図5)。
【図5 ビジネスチャットで必要、強化してほしい機能】(複数回答)
ビジネス上の意思決定速度の向上や、多様化する勤務環境の中で円滑なコミュニケーションなどの実現に向けて、メールや電話以外の手軽なコミュニケーション手段のニーズは引き続き高いと考えられる。
これまでは対面での打ち合わせの代替として、やむを得ず採用されてきた側面もあったが、ビジネスチャットはいまや必要な人同士においては不可欠なツールとして確立した感がある。他方で、こうしたコミュニケーションツールがビジネスシーンで浸透していくにつれ、社内だけでなく社外との接点も増加することが予想される。一人ひとりの生産性向上・業務効率化と同時に、各種のセキュリティリスクに配慮しつつ運用する必要がある点を認識しておきたい。
<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社モニター3197人を対象に2023年10月に調査