業務で使用するデバイスの増加やIoT機器の普及に伴い、Wi-Fiを使用した通信が一般化した。DXによる生産性向上や働き方改革推進の観点からも、オフィス内のWi-Fi環境整備は重要性を増している。オフィスWi-Fi導入の実態について、日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社保有の調査モニター950人を対象に調査を実施した。
企業の8割以上がWi-Fiを導入済み
社内のWi-Fi導入について尋ねた結果、「導入済み」と答えたのは84.4%。従業員数別に見ると、従業員数1000人以上の企業では9割以上が導入済みと答えており、前回調査と同様に従業員数が多い企業ほどWi-Fi導入が進んでいる傾向にある。一方、従業員数99人以下の企業では73.5%がWi-Fiを導入していると回答しているものの、「導入の必要性を感じない」と答えた層は2割に上った。
【図1 オフィスWi-Fi導入状況(従業員数別)】
導入理由は「業務プロセスの効率化」と「ワークスタイル変革」が上位
オフィスWi-Fiの導入理由については、「業務プロセスの効率化」(38.0%)の回答が最多。以下、「ワークスタイル変革」(31.7%)、「オフィスのレイアウト変更・移転の容易化」(27.3%)が続く。「業務プロセスの効率化」に関しては、従業員数1000人未満の中小・中堅企業で同項目の選択率が高く、その中でも従業員数300~999人の企業では56.6%が導入理由に挙げている。
一方、従業員数1000人以上の企業では、どの理由にも満遍なく回答が集まったが、特に「ワークスタイル変革」の選択率が最も高い結果となった。コロナ禍を経て出社とテレワークを使い分けるハイブリッドワークが広がりを見せている。こうした点からも社内外問わず働ける環境を構築するために、オフィスWi-Fiの導入が前提になると言えそうだ。
【図2 オフィスWi-Fi導入理由・導入意向理由(従業員数別)】※上位5項目
Wi-Fi導入後、課題になるのは「通信状況・品質の悪さ」…
オフィスWi-Fi導入後に困っている点については、全体として67.6%が「特にない・分からない」と回答。この一方で「通信状況・品質の悪さ」に関しては企業規模にかかわらず一定の回答が集まり(18.9%)、セキュリティへの不安(12.1%)や運用の手間(8.3%)に加えて管理者不在(5.9%)などに懸念を抱いている姿も明らかになった。
【図3 オフィスWi-Fi導入後に困っていること(従業員数別)】※上位5項目
Wi-Fiの必要性を感じない理由は「有線で十分」が最多となるも……
オフィスWi-Fi導入を未検討、または必要性を感じないと答えた層に対し、その理由を聞いた。結果は「有線の回線で十分事足りている」が46.3%で最も多く、2位は「セキュリティが不安」で31.3%、「導入・運用コストがかかる」と「社内でモバイル活用をしない」が21.3%で同率3位だった。
前段の回答結果でも分かる通り、セキュリティ対策や運用の手間については導入済みの企業でも課題と感じている層が多い。オフィスWi-Fiを導入する上では、こうした課題に対してどのような対策を講じるかが焦点になるだろう。
【図4 オフィスWi-Fi導入を未検討または必要性を感じない理由】※上位5項目
人気のサポートサービスは「代替機器の送付」
オフィスWi-Fiにあったらよいサポートは「機器故障発生時の代替機器送付」が26.2%で最も多く、従業員数が多い企業を中心に選択率が高い結果となった。2位は「トラブル発生時のサポートセンター対応」(20.1%)で、特に従業員数1000人未満の企業から2割を超える支持を集めた。
また、4位の「セキュリティ設定」に関しては従業員数300人未満の企業での選択率が高かった。セキュリティ性に不安を抱えていても、どこに相談すればいいのか、どんな対策が必要なのかが分からなかったり、社内で解決できなかったりする企業は少なくない。そうした企業にとっては、セキュリティ設定のサポートサービスはニーズが高い。
【図5 あればよいサポートサービス(従業員数別)】※上位5項目
業務で使用するデバイスの多様化やIoT機器の普及などで、従業員数99人以下の企業でも7割以上がWi-Fiを導入するようになった今、セキュリティ対策やサポート体制の構築といった喫緊の課題も浮上している。「今はWi-Fiの必要性を感じない」と考える企業においても、この先、事業環境の変化によってWi-Fiの導入を迫られることも十分考えられる。一方、業種や業態によっては一瞬の寸断も許されないシビアな通信環境が求められる場合には、有線での接続が必要になる。Wi-Fi接続のメリットを見据えつつ、最適な通信環境を自社の状況に照らして慎重に検討していくとよいだろう。
<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社モニター950人を対象に2023年11月に調査