先日、医療関連の情報サイトで信頼性に関するトラブルが発生、話題になりました。その際、問題視されたのが、他のサイトなどで使われていた画像や文章といったコンテンツの流用です。費用をかけて作成したサイト上の記事の全部または一部について、何の断りもなく転載されることは感情として許し難いというだけではなく、例えば広告収入の減少、顧客の流出など財産的な損害を生じさせるものでもあります。
Webコンテンツ、つまり、インターネット上に公開された文章や写真は著作物に該当し、著作権保護の対象となります。従ってこれらの流用は、著作権侵害となる可能性があり、法的措置の対象となりうるものです。
「引用」とは、自身の著作物の一部に他者の著作物の一部を複製して掲載することであり、「転載」とは、自身の著作の大部分に、他者の著作物の全部または一部を複製して掲載することです。
著作権法上「引用」は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他引用の目的上正当な範囲で行われる限り、著作権侵害にはならないとされています。
例えば、他社がとある事件について分析する記事を載せる際に、自社のWebサイトに掲載した同じ事件の記事のうちライターのコメント部分を、「『~』という評価もあるが、一方で・・・」などという形で紹介することは、「引用」に該当して許容されます。
「引用」にとどまる場合には、掲載元から許諾を得る必要まではありません。ただ、引用元を付記して、引用部分が他者の著作物であることを明示しなければなりません。
一方、掲載元から許諾を得ずに転載が許容されるケースは、非常に限られています。例えば、官公庁が一般的に周知することを目的として、かつその著作名義を有する広報資料や統計資料などは、転載禁止の表記がなければ、特に断りなく転載することができます。また、警察庁などのホームページに掲載されている交通事故や犯罪の件数、分析などを転載することに法的な問題は生じません。
このようなケース以外で、「引用」を超える「転載」を行う場合には、必ず掲載元の許諾を得なければならず、無断で行った場合には著作権侵害となります。
なお、Webサイト上の写真の取り扱いについては、それが「転載」に当たるのか「引用」に当たるのかは、ケース・バイ・ケースで判断せざるを得ないでしょう。
Webサイト上の記事の主要部分が文章によるもので、画像が、記事のイメージを伝える補完的なものにすぎない場合であれば、他社コンテンツがこれを掲載することは「引用」に該当することになるでしょう。掲載元に許諾を取る必要はありませんが、掲載元を付記する必要があります。これは画像の掲載元のリンクを貼る場合も同じと考えられます。
一方、Webサイト上の記事の中心が画像であり、文章がその画像について解説する補完的なものである場合には、その画像を他社が自サイトに掲載することが「転載」に該当する可能性があります。例えば、掲載元の社員が撮影した事件のスクープ映像や写真などが考えられます。この場合には、掲載元に許諾を得なければ、無断転載に該当する危険性があります。
自社コンテンツが流用された場合の解決方法
まず、他社が自社コンテンツの記事の一部を引用しているにもかかわらず、引用元を付記していない場合には、その会社に対して引用元を付記するよう請求することが可能です。
無断転載の場合には、転載先の会社に対して、転載の差し止めを請求することになるでしょう。引用のケースではあまり想定できませんが、無断転載のケースでは、最初に述べたように財産的な損害が生じており、併せて損害賠償を請求することもありえます。裁判外の請求で解決できない場合には、差止請求訴訟や損害賠償請求訴訟などを起こすことになります。
請求に当たっては、サイト運営者を突き止める必要があります。通常は、そのサイトのページの下にある「運営者情報」や「サイトマップ」を見れば分かることが多いですが、このような方法で調べがつかないこともあります。
その場合には、Web上のWHOIS検索(ドメイン検索)を利用してサーバー所有者やドメイン所有者の情報を取得する、または相互リンクサイトから調べるという方法があります。
さらに、無断転載に該当する場合には、プロバイダー責任制限法に基づき、プロバイダーに対して無断転載先のサイト運営者情報の開示を求めたり、サイトの削除依頼を行ったりすることもできます。申請方法は各プロバイダーによって異なりますが、オンラインの申請フォームを使うことが多いようです。
無断転載をされてしまうと、その後、面倒な対応をしなければなりません。従って、流用されないための予防策を取っておくことも必要です。決定的な方法とまではいえませんが、コンテンツ上、サイト運営者がすぐに分かるようにしておく、無断転載が明らかとなった場合には法的措置の対象となりうる旨の警告を明示しておくことで、予防効果が高くなると考えられます。
Webコンテンツは、コピーやペーストが非常に簡単にできるため、近年、無断引用・無断転載が横行しているのが実情です。今回は、「流用された側」の視点に立って、解決法などについて解説してきましたが、無断引用・無断転載はついついしてしまいがちです。こうした流用によって、高額な損害賠償を請求されるだけでなく、企業としての信頼性を落とすことにもなりかねません。決して「する側」に回らないよう、注意しておく必要があるでしょう。