厚生労働省は、「ブラックバイト」の根絶に向けて対策を強化しています。
ブラックバイトとは、「法律に違反する形態で働かされるアルバイト」のことです。違法な残業を課されたり、有給休暇の取得が認められなかったりするなど、さまざまな形でのブラックバイトが社会問題となっています。
例えば2017年2月にはあるコンビニエンスストアで、正規の雇用契約とは別に「急に欠勤した場合は1万円の罰金を徴収する」という契約をアルバイトと結び、労働基準法違反の形態で働かせていたとして、オーナーと店長が書類送検される事件が起きました。
アルバイトは人手不足の際に突発的に採用することも多いため、経営者も気が付かないうちに法律に違反していた、ということも珍しくありません。それでは、正社員とアルバイトの待遇はどのように異なるのでしょうか。例えば、アルバイトにも雇用保険や健康診断は必要かどうかご存じですか。
今回は、中小企業の経営者が知っておくべきアルバイトの法律について解説します。
アルバイトに退職金やボーナスは必要?
まず、アルバイトを採用する際には、労働条件を明示しなくてはいけません。
時給や勤務時間だけでなく、退職金やボーナスについても明示することが法律で義務付けられています。そうした制度を設けていない場合は、「退職金やボーナスは支給しない」と明示します。わざわざ退職金やボーナスの制度を設ける必要はありません。
高校生を採用する際には、年齢によって制限がある規定に気を付けなければいけません。例えば18歳以下をアルバイトとして雇う場合には、労働条件について特別な規定があります。深夜(午後10時から午前5時の間)に働かせたり、重量物を取り扱う作業を担当させたりすることはできないのです。この規定により、もし本人が希望したとしても、深夜に残業させることはできません。
アルバイトに有給休暇や労災・雇用保険は必要?…
アルバイトであっても、健康診断や雇用保険、労災保険や有給休暇が必要な場合があります。全てのアルバイトが対象なわけではなく、条件があります。
まず「労災保険」は、全てのアルバイトが対象となります。日雇いの短期バイトであっても、必ず加入しなければいけません。うっかり労災保険の手続きを忘れてしまうと、アルバイトが仕事中にけがを負った場合に、経営者が責任を負うことになります。
もしも労災保険を支払っていないアルバイトが仕事中にけがを負った場合、経営者側は遡って過去の保険料を支払わなくてはならなくなり、しかもその事故について経営者側に支給される保険給付金の40%から100%が労働基準監督署に徴収されます。
雇用期間によっても必要な対応が異なります。アルバイトを1カ月以上雇用する場合には、「雇用保険」に注意しなくてはいけません。アルバイトを31日以上雇用する予定があり、週20時間以上のシフトで働かせる場合には、雇用保険に加入しなければいけません。
アルバイトが続けて6カ月以上勤務する場合には、有給休暇の付与が必要となります。勤務日数による規定ではありませんから、週1日しか働いていないアルバイトも6カ月以上雇用していれば対象となります。勤務日数の少ないアルバイトについては見落としてしまうことも多い項目なので、注意が必要です。
雇用期間が1年以上になる場合には、健康診断を受けさせなければいけません。さらにたとえ契約期間が1年未満であっても、労働時間が正社員の4分の3以上であれば、健康診断が必要となります。なお健康診断の費用は、「事業者が負担することが望ましい」とされています。
アルバイトといっても簡単には解雇できない
「アルバイトは人員整理に利用しやすい」と考えている経営者は多いかもしれませんが、アルバイトを解雇する際には、かなり厳格な手続きが必要ですから気を付けてください。
特に問題となるのは、1年以上勤務しているアルバイトを解雇する場合です。契約期間が満了すれば自動的に終了となるわけではありません。必ず、期間が満了する30日前までに、「もうすぐ契約期間が終わるが、契約を更新する予定は無い。期間の満了とともに仕事は辞めてもらう」ということをハッキリと伝えなければいけません。明確に伝えてない場合は、アルバイトに対して、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う義務を負ってしまいます。
もっとも勤務期間が1年未満のアルバイトを解雇する場合は、この手続きは不要です。例えば1日限りの日雇いバイトの場合は、その日限りで契約を終了できます。2週間程度の短期間に限定して採用しているアルバイトについても、契約期間の満了とともに終了することができます。
厚生労働省は、ブラックバイトの労働環境改善に向けて本格的に取り組んでいます。労働法違反の罰則の対象となると、企業イメージが大きく低下し、ビジネス上も大きな損害となる恐れがあります。アルバイトを採用する際、また雇用中、そして解雇する際にも、法律の規定に配慮し、順守を心がけましょう。